研究室が世界初のアノード・フリーナトリウム固体電池を開発
Lab Creates World’s First Anode-Free Sodium Solid-State Battery
By Paul Dailing, University of Chicago
https://techxplore.com/ より 2024.07.03
シカゴ大学プリッカー分子工学部のy. Shirley Meng教授のエネルギー貯蔵・変換研究所は、世界初のアノード・フリーのナトリウム固体電池を開発した。
この研究により、シカゴ大学プリッカー分子工学部とカリフォルニア大学サンディエゴ校のAiiso Yufeng Li Family化学・ナノ工学部の共同研究であるLESCは、電気自動車や送電網蓄電用の安価で急速充電可能な大容量電池の実現をかつてないほど近付けた。
「ナトリウム、固体、アノード・フリーの電池はこれまで存在していたが、これまでこの3つのアイデアをうまく組み合わせることができた人はいなかった。」と、チームの研究を概説した新しい論文の筆頭著者であるカリフォルニア大学サンディエゴ校の博士課程の学生、Grayson Deysherは述べた。
本日Nature Energy に掲載された論文では、数百サイクルにわたって安定したサイクルを実現する新しいナトリウム電池構造が実証されている。アノードを取り除き、リチウムの代わりに安価で豊富なナトリウムを使用することで、この新しい形態の電池はより手頃な価格で環境に優しい製造が可能になる。革新的なソリッド・ステート設計により、この電池は安全で強力なる。
この研究は科学の進歩であると同時に、世界経済を化石燃料から脱却させるために必要な電池スケーリングのギャップを埋めるために必要なステップでもある。
「アメリカを1時間稼動させるには、1テラワット時のエネルギーを生産しなければならない。」とMengは語った。「経済の脱炭素化という使命を達成するには、数百テラワット時の電池が必要である。より多くの電池が必要であり、早急に必要である。」
持続可能性とナトリウム
電池によく使われるリチウムは、それほど一般的ではない。リチウムは地殻の約20 ppmを占めるが、ナトリウムは20,000 ppmを占める。この不足と、ノートパソコン、電話、EV用のリチウム・イオン電池の需要急増が相まって、価格が急騰し、必要な電池がますます手に入らなくなっている。
リチウム鉱床も集中している。チリ、アルゼンチン、ボリビアの「リチウム・トライアングル」には、世界のリチウム供給量の75%以上が集中しており、オーストラリア、ノースカロライナ、ネバダにも鉱床がある。」これは、気候変動と戦うために必要な脱炭素化において、一部の国に他の国よりも有利に働く。
「世界規模の取り組には、極めて重要な材料にアクセスするための協力が必要である。」とMengは述べた。
リチウム抽出も、鉱石を分解するために使用される工業用酸からであれ、乾燥のために大量の水を地表に汲み上げるより一般的な塩水抽出からであれ、環境に悪影響を及ぼす。海水やソーダ灰採掘でよく使用されるナトリウムは、本質的に環境に優しい電池材料である。LESCの研究により、ナトリウムは強力な材料にもなった。
革新的なアーキテクチャ
リチウム電池と同等のエネルギー密度を持つナトリウム・イオン電池を作るために、チームは新しいナトリウム・イオン電池構造を発明する必要があった。
従来の電池には、電池の充電中にイオンを蓄えるためのアノードがある。電池の使用中イオンはアノードから電解質を通って集電装置(カソード)に流れ、途中でデバイスや自動車に電力を供給する。
アノード・フリー電池は、アノードを取り除き、集電体に直接アルカリ金属を電気化学的に沈着させてイオンを蓄える。このアプローチにより、セル電圧の上昇、セルコストの削減、エネルギー密度の向上が可能になるが、独自の課題も生じる。
「アノード・フリー電池では、電解質と集電体の間に良好な接触が必要である。」とDeysherは言う。「液体電解質を使用すると、液体がどこにでも流れてあらゆる表面を濡らすことができるため、これは通常非常に簡単である。固体電解質ではこれができない。」
しかし、これらの液体電解質は、活性物質を着実に消費しながら固体電解質界面と呼ばれる蓄積物を形成し、時間の経過と共に電池の有用性が低下する。
流動する固体
チームはこの問題に対して斬新で革新的なアプローチを取った。集電装置を取り囲む電解質を使用する代わりに、彼等は電解質を取り囲む集電装置を作成した。彼等は、液体のように流れる固体であるアルミニウム粉末から集電装置を作成した。
電池組み立てサイクル中に、粉末は高圧下で高密度化され、電解質との液体のような接触を維持ながら固体の集電体を形成し、この画期的な技術を前進させる低コストで高効率のサイクルを可能にした。
「ナトリウム固体電池は、通常、遠い将来の技術と見なされているが、この論文によって、ナトリウム電池が実際にうまく機能し、場合によってはリチウム電池よりも優れていることを実証することで、ナトリウム分野へのさらなる推進力となることを期待している。」とDeysherは述べた。
究極の目標は?Mengは再生可能エネルギーを蓄え、社会のニーズに合わせて規模を調整できる、クリーンで安価なさまざまな電池オプションを備えたエネルギーの未来を思い描いている。
MengとDeysherはカリフォルニア大学サンディエゴ校のイノベーションおよび商業化オフィスを通じて、この研究の特許を申請した。