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安全性、コスト、性能のバランスをとった耐火性ナトリウム電池

Fire-Resistant Sodium Battery Balances safety, Cost and Performance

 By Nat Levy, University of Texas at Austin

https://techxplore.com/  より   2024.02.29

 

 テキサス大学オースチン校の研究者達が開発したナトリウム電池は、その構成要素として安価で豊富な材料を利用しながら、この技術による火災の危険性を大幅に軽減する。電気火災が発生することは希であるが、電池使用量の増加により、このような事故が増加していることを意味する。

 Nature Energyに最近、掲載されたこのナトリウム電池の画期的な秘密の材料は固体希釈剤である。研究者達は電解液に塩ベースの固体希釈剤を使用し、充放電サイクルを促進した。特定の種類の塩である硝酸ナトリウムを使用することで、研究者達は電解液に単一の不燃性溶媒を導入するだけで電池全体を安定させることができた。

 時間の経過と共に、電解質(電池の2つの電極間で電荷を運ぶイオンを移動させる成分)内の複数の液体溶媒が他の成分と反応して電池を劣化させ、安全上のリスクにつながる。この電池の主要成分の1つであるリチウムの代替品であるナトリウムは反応性が高く、この種の電池の採用には大きな課題となっている。これらの反応により、デンドライトと呼ばれる針状のフィラメントが成長し、電池が電気的にショートし、発火や誘爆引き起こす可能性がある。

 「電池が発火するのは、電解質中の可能性液体溶媒が電池の他の部分となじまないためである。」とコックレル工学院ウォーカー機械工学科の教授であり、このプロジェクトの主任研究者であるArumugam Manthiramは述べた。「我々はそのリスクを方程式から軽減して、より安全で安定した電池を作成した。」

 安全性の向上に加えて、この新しいナトリウム・ベースの電池は、スマートフォン、ラップトップ、電気自動車などに電力を供給するリチウム・イオン電池のより安価な代替品となる。

 電池も強力な性能を誇る。1回の充電での電池の持続時間は、時間の経過と共に低下する傾向がある。新しいナトリウム電池は500サイクルにわたって容量の80%を維持し、スマートフォンのリチウム・イオン電池の標準と一致した。

 「ここでは、性能が損なうことなく、安全で安価に製造できるナトリウム電池を示す。」とManthiramは語った。「リチウム・イオン電池と同等であるだけでなく、より優れた代替品を開発することが重要である。」

 研究者達はこの技術をナトリウム電池に適用したが、材料は異なる物の、リチウム・イオン・ベースの電池にも応用できると述べた。リチウム採掘は高価であり、大量の地下水の使用、土壌と水の汚染、炭素排出などの環境への影響は批判されている。それに比べて、ナトリウムは海で入手でき、安価で環境に優しい。

 リチウム・イオン電池には通常、コバルトも使用される。コバルトは高価で、主にアフリカのコンゴ民主共和国で採掘されており、人間の健康と環境に大きな影響を与えている。2020年、Manthiramはコバルトを含まない新しいリチウム・イオン電池を実証した。この電池にはリチウムだけでなくコバルトも含まれていない。他の成分は鉄40%、マンガン30%、ニッケル30%で構成されている。

 この論文の他の著者は、コックレス校の材料科学工学プログラムとテキサス材料研究所のJiarui HeAmruth BhargavLaisuo SuJulia LambWoochul Shin、およびアルゴンヌ国立研究所のJohn Okusinskiである。