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スタンフォード大学の研究者達はより効率的で手頃な

淡水化プロセスを設計する

Stanford Researchers Design a More Efficient and Affordable Desalination Process

By Michelle Horton

https://news.stanford.edu/  より    2020.06.01

 

海水淡水化(塩水から淡水への変換)は高い運用コストによって制限されてきた。脱塩廃棄物を商業的に価値のある化学物質に変えることができる新しい装置は工程をより安く、より環境に優しいものにすることができる。

 

 スタンフォード大学の研究者達は古い問題に新しいアプローチを取り、海水を淡水に変換することで収益性が高く環境に優しい装置を作成した。ACS Sustainable Chemistry & Engineeringに掲載された彼等の研究は脱塩工程の一環として塩水やかん水と呼ばれる化学物質が非常に高濃度の水を商業的に価値のある化学物質に変換する効率的な方法の概要を示している。このアプローチにより、潜在的に危険な化学物質を地域の生態系に廃棄する必要がなくなる。

 海水淡水化は世界中の水不足を緩和するための強力な装置になる可能性があるが、処理と塩水管理のためのエネルギーと金銭コストによって制限される。」とスタンフォード大学の化学工学の助教授である研究主任著者のウィル・ターペは述べた。「かん水を資源として再考することにより我々は排出前にその上、収集と処理を奨励することを目指している。」

 世界中の海水淡水化装置は毎日約270億ガロンの飲料水を生産している。これはアメリカの全ての家庭で使用されている1日当たりの合計量を上回っている。しかし、汽水または塩水を飲料水に変換するこの干ばつに強いアプローチは多くのエネルギーを必要とするためコストがかかりすぎる。また、飲料水よりも約1.5倍の塩水を生成する。

 

塩水の分割

 彼等の新しい研究のために研究者達は電気化学的水-塩分解と呼ばれる方法でかん水の成分を分解する装置を設計しテストした。水-塩分解は電気化学セル(電気エネルギーを使用して化学反応を開始する装置)を使用してかん水を正に帯電したナトリウム・イオンと負に帯電した塩化物イオンに分離する。結合が切断されると、ナトリウムと塩素が他の元素と結合して水酸化ナトリウム、水素、塩酸などの新しい化学物質を形成する。

 水酸化ナトリウムは灰汁としても知られ、石鹸、紙、アルミニウム、洗剤、爆発物などの多くの製品の製造に使用されている。水素は主に肥料の生産、エネルギーの貯蔵と供給などの産業目的に使用されてきた。塩酸は電池製造の成分として、食品添加物として、さらには皮革加工においてさえ商業・産業全体で広く使用されている。また、淡水化装置での洗浄に現場で使用できるという追加の利点もある。

 「我々の研究では、コストが安いだけでなく、従来の水分解法よりも優れた設計を特定することができた。」とスタンフォード大学の化学工学のポスドク研究員である筆頭著者のLinchao Muは述べた。「これらの洞察により、淡水化設計を改善して収益を生み出しながら運用コストを節約できる。」

 

廃棄物の削減

 新しいアプローチはまた、総脱塩費用の最大3分の1を占める可能性のある塩水処理コストを削減し、環境への悪影響を回避するのに役立つ可能性がある。現在のかん水処理方法は動物や植物の種を殺したり追い払ったりする水路の酸素不足状態とともに、塩分と酸性度のスパイクを引き起こす可能性がある。

 現在の研究では、商用利用に適した化学溶液は生成されずより希釈されていたが、研究者達はこれが電気化学的水-塩分解の将来の設計と操作に情報を提供するための基盤を提供する最初のステップであると述べている。研究者達はエネルギーとコスト効率を向上させるために淡水化装置と提携しながら作業を継続することを計画している。「最終的にこれは選択的な分離を使用して「廃棄物」の流れから貴重な製品を回収する水処理を設計するという我々のビジョンを例示している。」とターペは述べた。