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スタンフォード大学の研究者達は海水から水素燃料を作る

Stanford Researchers Create Hydrogen Fuel from Seawater

By Erin I. Garcia de Jesus

https://news.stanford.edu/  より    2019.03.18

 

水を水素と酸素に分解することは化石燃料に代わる物であるが、精製された水は貴重な資源である。スタンフォード大学主導のチームは地球で最も豊富な水源である海水を化学エネルギーに利用する方法を開発した。

 

 スタンフォード大学の研究者達はサンフランシスコ湾の太陽光発電、電極、塩水を使用して水素燃料を生成する方法を考案した。318日に全米科学アカデミーの議事録に発表された調査結果は、電気を介して海水から水素と酸素ガスに分離する新しい方法を示している。既存の水分解方法は、貴重な資源であり生産に費用がかかる高度に精製された水に依存している。

 理論的には都市や自動車に電力を供給するために、「精製水を使用することは考えられないほど多くの水素が必要である。」とスタンフォード大学人文科学部の化学教授Hongjie Dai, J.G. JacksonC.J. Woodおよび論文の共同執筆者は述べている。「カリフォルニア州で我々が現在の必要量に十分な水はほとんどない。」

 水素は二酸化炭素を排出しないため、燃料にとって魅力的な選択肢であるとDaiは述べている。水素を燃やすと水だけが生成され、気候変動の問題の悪化を緩和するはずである。Daiによると、彼の研究室はデモで概念実証を示したが、研究者達は設計のスケーリングと大量生産をメーカに任せる予定であると言う。

 

腐食への取り組み

 概念として、電気分解と呼ばれる電気で水を水素と酸素に分割することは単純で古い考えである。電源を水中に配置された2つの電極に接続する。電源がオンになると、水素ガスが陰極と呼ばれる負の電極から泡立ち、通気性のある酸素が陽極の正の電極に現われる。しかし、海水塩に含まれる負に帯電した塩化物は正の電極を腐食させ、システムの寿命を制限する可能性がある。Daiと彼のチームはこれらの海水成分が水中の陽極を分解するのを防ぐ方法を見つけたいと考えていた。

 研究者達は負電荷が豊富な層で陽極をコーティングすると、その層が塩化物をはじき、下にある金属の崩壊を遅らせることを発見した。彼等は、ニッケル・フォーム・コアを覆う硫化ニッケルの上にニッケル-鉄水酸化物を層状にした。ニッケル・フォームは導体として機能し(電源から電気を輸送する)、ニッケル-鉄水酸化物が電気分解を引き起こし、水を酸素と水素に分離する。電気分解中に硫化ニッケルは陽極を保護する負に帯電した層に進化する。2つの磁石の負の電極が互いに押し合うように、負に帯電した層は塩化物をはじき、それがコア金属に到達するのを防ぐ。Dai実験室の大学院生で論文の共同筆頭者であるマイケル・ケニーによると負に帯電したコーティングがないと、陽極は海水中で約12時間しか機能しないという。「電極全体が崩れて落ちる。しかし、この層を使用すると1000時間以上かかる可能性がある。」とケニーは言った。

 水素燃料のために海水を分割しようとした以前の研究では、腐食が高い電流で発生するため、少量の電流しか流れていなかった。しかし、Dai、ケニーと彼等の同僚達は多層デバイスを介して最大10倍の電力を伝導することができた。これにより海水から水素をより高速に生成できる。「我々は海水を分割する流れに記録を打ち立てたと思う。」とDaiは言った。

 チーム・メンバーはシステムに入る電気の量を調整できる制御された実験室条件でほとんどのテストを実施した。しかし、彼等はまたサンフランシスコ湾から集められた海水から水素と酸素ガスを生成する太陽光発電のデモンストレーション・マシンを設計した。

 また、塩による腐食の危険性がなく、このデバイスは精製水を使用する原材料の技術と一致していた。「この研究の印象的な点は今日の業界で使用されている物と同じ電流で作動できたことである。」とケニーは述べた。

 

驚くほど簡単

 振り返ってみると、Daiとケニーは彼等の設計の簡単さを見ることができる。「3年前に水晶玉を持っていたら、1ヶ月で完成したであろう。」とDaiは言った。しかし、海水を使った電気分解の基本的なレシピが分った今、新しい方法は太陽エネルギーまたは風力エネルギーを動力源とする水素燃料の利用可能性を高めるための扉を開くであろう。

 将来的には、この技術はエネルギーの生成以外の目的にも使用できる可能性がある。このプロセスでは通気性のある酸素も生成されるため、ダイバーや潜水艦はデバイスを海に持ち込み、空気のために浮上することない下で酸素を生成できる。

 技術の移転に関しては、「既存の電解槽システムでこれらの要素を使用することができ、それはかなり迅速である可能性がある。それはゼロから始めるようなものではない-それは80または90%から始めるようなものである。」とDaiは述べている。