太陽光発電システム用の塩化ニッケル・ナトリウム電池
Sodium Nickel Chloride Batteries for Solar PV Systems
htts://solartechadvisor.com/ 2021.12.12
太陽エネルギーなどの非汚染エネルギー源に対する世界的な推進力は現在ピークに達している。この目標を達成するには、太陽光発電およびソーラー・オフグリッド用途向けの環境に優しいエネルギー貯蔵システムを開発する必要がある。
塩化ニッケル・ナトリウム電池は太陽光発電システムに活用できる最も環境に優しい電力貯蔵解決法の1つである。
これらの電池は環境へのメリットに加えて低コスト、高エネルギー容量、信頼性など、他の優れた特性を備えた太陽光発電システムへの関心を呼び起こした。しかし、塩化ニッケル・ナトリウム電池とは正確に何であり、それらは太陽光発電システムに何を提供できるのか?太陽光発電システム用の塩化ニッケル・ナトリウム電池に関するこの包括的なガイドで調べてみよう。
塩化ニッケル・ナトリウム電池とは何か?
ナトリウム・ニッケル電池(Na-NiCl2)は陰極としてナトリウムを使用し、陽極としてニッケルと塩化ナトリウムを使用する高温エネルギー貯蔵システムである。電池は陽極と陰極の間のナトリウム・イオンの移動を伴う電気化学反応に基づいて動作する。Na-NiCl2電池は主にZebraというブランド名で会社によって製造されているため、「Zebra電池」とも呼ばれる。塩化ニッケル・ナトリウム電池は1990年代に商業分野に参入した。
当初は電気自動車用に開発されたが、その並外れた特性によって太陽光発電所や風力タービンなどの再生可能エネルギー貯蔵システムでの用途が見出されている。今日、塩化ニッケル・ナトリウム電池は太陽光発電のバックアップとオフグリッド・エネルギー貯蔵に最適である。
塩化ニッケル・ナトリウム電池の成分
電極
陰極
塩化ニッケル・ナトリウム電池用の陰極として溶融ナトリウム(Na)が使われる。
陽極
塩化ニッケル(NiCl2)陽極を形成するために塩化ニッケル・ナトリウム電池ではニッケル(Ni)と塩化ナトリウム(NaCl)が使われる。
他のナトリウム電池とは異なり、塩化ナトリウム・ニッケル電池の陰極は円筒形の電池化学セルの中央にある。
電解質
塩化ニッケル・ナトリウム電池は電解質として2つの成分を使用する:ベータアルミナセラミックと二次電解質としてNaAlCl4などのナトリウムのテトラクロロアルミネートである。
セラミック電解質
セラミック電解質はナトリウム・イオンが陽極と陰極の間を移動する媒体として機能する。また、陽極と陰極の物理的な分離としても機能する。電解質はナトリウム・イオンに伝導性があるが、電極間の電子の絶縁体として機能する。
二次電解質
二次電解質である溶融テトラクロロアルミン酸塩は、充電および放電中の電気化学反応を促進するために陽極を充満させるために使用される。また、陽極とセラミック電解質の間でナトリウム・イオンを迅速に移動させることもできる。
独立したヒーター
二次電解質の融点は157℃である。液体(導電性)状態を維持するには電池温度を270℃~350℃の間に保つ必要がある。したがって、この目的のために、独立したヒーターまたは補助ヒーターが電池システムに接続される。
塩化ニッケル・ナトリウム電池の用途
Na-NiCl2電池は操作上の安全性、環境への配慮、信頼性、柔軟性などの優れた特性により太陽エネルギーの再生可能エネルギー分野で非常に多くの用途がある。用途例を次に示す。
● 太陽光発電システム用の固定エネルギー貯蔵
● オフグリッド電源用途の緊急電源バックアップ
● 再生可能エネルギー配電網のエネルギー貯蔵システムのサポート
● 住宅および商業ビルの太陽エネルギー貯蔵解決手段
● ピーク管理用途
● 電気自動車用に、ハイブリッド電気自動車、潜水艦
ほとんどの塩化ニッケル・ナトリウム電池は現在、アメリカとヨーロッパで製造されている。しかし、これらのエネルギー貯蔵システムを含むプロジェクトは世界中で立ち上げられている。
塩化ニッケル・ナトリウム電池はどのように機能するか?
塩化ニッケル・ナトリウム電池は電気化学反応を利用して充電および放電する。
充電
充電中、陽極のナトリウムはナトリウム・イオンに酸化され、ニッケル金属は塩化ニッケルに変換される。ナトリウム・イオンは二次電解質を通って陰極に向かって移動する。完全に充電されると、すべてのナトリウム・イオンが陰極に移動し、不安定な状態になり、元の状態に戻るのを待つ。
放電
イオンと電流の流れは放電中に逆になる。ナトリウム・イオンは陽極に戻り、陰極にナトリウム金属を残す。ナトリウム・イオンは陽極で塩化物イオンと再結合して塩化ナトリウムを形成する。塩化ニッケルも元のニッケル金属に変換される。利用可能な電子は外部回路を移動し、負荷に電力を供給する。
陰極での反応:
2Na + 2e- 2Na
陽極での反応:
Ni + 2NaCl2 +2Na+ + 2e-
総合した反応:
2NaCl + Ni NiCl2 + 2Na
順方向の反応は充電工程を表し、逆方向の反応は放電工程を表す。
注:塩化ニッケル・ナトリウム電池には二次反応はない。過充電の場合、陽極のニッケルはクロロアルミン酸ナトリウムと反応し、セルを流れる電流を停止する。
これは電池成分の損傷を防ぐための保護メカニズムとして機能する。
塩化ニッケル・ナトリウム電池の特性
価格
塩化ニッケル・ナトリウム電池の電池レベルのコストはkWh当たり110ドルである。これは他の太陽光二次電池のコストと比較して良い範囲である。しかし、これらの電池の資本コストはkWh当たり500ドルから600ドルである。これにより、Na-NiCl2はリチウム・イオンなどの他の従来の太陽電池よりも一般的に高価になる。
過充電機能
塩化ニッケル・ナトリウム電池は、そのようなシナリオで発生する可能性のある高温に耐えることができるため、固有の過充電機能を備えている。電池成分は大電流の通貨にも耐えることができるため、過充電状態に耐える可能性が高くなる。
サイズの範囲
単一の塩化ニッケル・ナトリウム電池のサイズは4~24 kWhの範囲で変化する。しかし、使用する単一の塩化ニッケル・ナトリウム電池の数に応じて、設置はメガワット時の範囲になる可能性がある。
放電深度
Na-NiCl2電池の放電深度は約3000サイクルで80%である。これは電池に蓄えられたエネルギーの20%を使用できないことを意味するが、それでも、太陽光発電用の信頼性の高いエネルギー貯蔵解決策を長期間利用できる。
放電時間
典型的なNa-NiCl2電池は2時間以内に放電する。しかし、電池容量によっては、この時間が数時間になる場合がある。
自己放電率
セラミック電解質のおかげでNa-NiCl2電池は従来の充電式電池で発生する典型的な自己放電を経験しない。反対に塩化ニッケル・ナトリウム電池は電解質の熱要件を満たすために蓄積されたエネルギーのほとんどを失う。これらの電池は電解質の活性化温度に到達して維持するために、1日当たり蓄熱エネルギーの約15%を消費する。
サイクル寿命
塩化ニッケル・ナトリウム電池は80%の放電深度で2000~4500サイクルを実行できる。これはまともなサイクル寿命であり、費用対効果と追加のメリットをほぼカバーしている。しかし、10,000サイクルにもなるリチウム・イオンなどの他の電池と比較すると、まだ低い。
往復効率
塩化ニッケル・ナトリウム電池は太陽光発電出力に対して約85~95%の往復効率を示す。これらの高温電池では、電気的損失はすべて熱に変換される。
充電抵抗
ニッケルと塩化ニッケルは溶融塩に不溶性であるため、接触が可能であり、これらの電池の耐充電性は非常に低くなっている。
期待される寿命
塩化ニッケル・ナトリウム電池の予想寿命または耐用年数は約15年である。これは高いサイクル寿命と相まって、これらの電池が太陽光発電システムに使用するのに信頼できることを意味する。
作動温度
Na-NiCl2電池の作動温度は、-20℃から60℃と広くなっている。これらの電池は、温度が変動しても最適な性能を期待できる。
電力対エネルギー比
塩化ナトリウム電池の非常に興味深い特徴の1つは、電力とエネルギーの比率が柔軟であることである。これは、これらの電池が重要な成分に損傷を与えることなく周囲温度に冷却できることを意味する。
エネルギー密度
塩化ニッケル・ナトリウム電池は約100~170 Wh/kgの高エネルギー密度を持っている。この特性のおかげで、Na-NiCl2電池は大規模な定置型エネルギー貯蔵での用途が見出されている。
原材料の入手可能性
これらの電池に使用されている材料であるニッケル、アルミナ、塩化ナトリウムは、入手が容易で安価に製造できる豊富な材料である。リチウム・イオンなど設計に希少でかなり高価な材料を必要とする他の電池についても同じことは言えない。
リサイクル性
塩化ニッケル・ナトリウム電池は完全にリサイクル可能な無毒の原材料を使用している。現在、ステンレス鋼や道路舗装用材料の製造には、使えなくて古い塩化ニッケル・ナトリウム電池が使用されている。
塩化ニッケル・ナトリウム電池の利点
使用の安全性
塩化ニッケル・ナトリウム電池は排出量がゼロであるため、安全に使用できる。また、化学反応が比較的不活性であるため、火災の危険性もなり。
環境への優しさ
これらの電池の製造に使用される材料はリサイクル性が高いため、環境を汚染しない。さらに良いことに、これらの電池のリサイクル技術は鉄鋼および道路舗装業界に既に存在している。
メンテナンス不要
塩化ニッケル・ナトリウム電池は他の電池に必要な空調など、いかなる種類のメンテナンスも必要ない。したがって、太陽光発電用途はこれらの電池で簡単に使用できる。
優れた拡大性と柔軟性
いくつかの電池ケースまたはコンテナを一緒に配線して、巨大なエネルギー貯蔵システムを形成できる。したがって、塩化ニッケル・ナトリウム電池は小規模および大規模の太陽光発電エネルギー貯蔵の両方に使用できる。
塩化ニッケル・ナトリウム電池の欠点
セラミック電解質の脆弱性
セラミック電解質はナトリウム・イオンの優れた導体であるが、劣化しやすく電池寿命を縮める。寿命が15年の電池は悪くないが、セラミック電解液の特性を改善して長持ちさせることができる。
設計による効率の制限
塩化ニッケル・ナトリウム電池は効率的なエネルギー貯蔵と放電を可能にしない円筒形の設計になっている。したがって、Na-NiCl2電池の設計は主要な太陽電池と競走するために改善する必要がある。
極端な熱的ニーズ
塩化ニッケル・ナトリウム電池に使用される電解質は、ナトリウム・イオンに伝導するために溶融状態に維持する必要がある。電解液の冷却は大きな手間であり、再加熱にはさらに2日かかることは言うまでもなく、最大4日かかる可能性がある。これらの熱的制約とそれに伴うインフラストラクチャーはNa-NiCl2電池の大きな欠点である。
家庭用にはあまり適してない選択
塩化ニッケル・ナトリウム電池は家庭で使用するために縮小できるが、その大きさ、電気的短絡に対する高い感度、および高い動作温度により家庭での使用にはあまり適していない。これらの電池を家庭用の熱インフラストラクチャーと一緒に設置するには、かなりの費用がかかる可能性がある。しかし、設計の改善により、塩化ニッケル・ナトリウム電池を家庭での使用に適した物にすることができる。
塩化ニッケル・ナトリウム電池は太陽光発電に最適な電池か?
信頼性、安全性、環境への配慮の観点から、塩化ニッケル・ナトリウム電池は太陽光発電に適していると考えられる。しかし、性能とサイクル寿命の点で、リチウム・イオンのような他の電池には競走上の優位性がある。
塩化ニッケル・ナトリウム電池の未来
以下の改善は、太陽光発電システム用の太陽電池に関連する問題のほとんどを解決する大きな可能性を秘めている:
● これらの電池のサイクル寿命を向上させるために使用できる新しいガラス材料の開発。
● 全体的なコストを削減し、生産量を増やすための塩化ニッケル・ナトリウム電池の生産の自動化。
● 円筒形の電池設計をフラット・ディスク設計と交換すると、低温での電池性能を30%向上させることができる。
● これらの電池に使用されている陽極を改良し、充放電能力を向上させた。
結論
要約すると、塩化ニッケル・ナトリウム電池は現在の制限にもかかわらず、太陽光発電やオフグリッドの用途に適している。太陽光発電システム用の信頼性が高く柔軟なバックアップおよびエネルギー貯蔵システムを探す場合は、塩化ニッケル・ナトリウム電池が適している。提案された設計改善が行われた場合、塩化ニッケル・ナトリウム電池の性能は、主要な太陽電池の性能と同等であると期待できる。
Na-NiCl2電池は太陽光発電に大きな可能性を秘めている。これらの電池は近い将来、再生可能エネルギー貯蔵システムの市場を支配する可能性が非常に高い。