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汗のナトリウム濃度:汗にはどのくらいの

塩分が含くまれているか?

Sweat Sodium Concentration: How Much Salt Is in Your Sweat?

By Robb Wolf

https://science.drinklmnt.com/   2020.06.22

 

 ほとんどの人は、汗をかくと活動中に1時間当り約1 gのナトリウムを失う。私のお気に入りの汗だくなスポーツであるブラジリアン柔術を練習していると、ナトリウムが2 g以上失われると思う。水に電解質(特にナトリウム)を加えると、頭痛、脱力感、痙攣、その他の低ナトリウム症状を防ぐことができる。何よりも、電解質は私のエネルギーを助けてくれる。トレーニング中に積極的に電解質を補給しないと、泥の中を進んでいるような気分になる。

 汗によって失われるナトリウムの量は、主に次の2つの要因によって決まる:

1.発汗量(1時間に失われる汗のリットル数)

2.汗のナトリウム濃度(1リットルの汗に含まれるナトリウムの量)

 この記事では、典型的な汗のナトリウム濃度について説明し、自分の汗に含まれるナトリウム量を推定するのに役立つツールを紹介する。しかし、その前にどの要因が汗のナトリウム濃度に影響を与え、どの要因が影響しないのかを説明したいと思う。

 

発汗量と汗のナトリウム

 汗をかくほどナトリウムが失しなわれる。それは明らかである。しかし、ほとんどの人が知らないのは、発汗量が増えると汗のナトリウム濃度も高くなると言うことである。言い換えれば、発汗速度を高めるものは、汗の塩分を増やすことになる。これには、

より激しい運動、より高い気温、より高い湿度、より少ない空気の流れ、より大きな体重、さらにはより優れた有酸素運動が含まれる。

 なぜ?ナトリウムの再吸収。汗が腺内で(皮膚の表面に到達する前に)形成され始めると、特別な管によってナトリウムの一部が体に戻される。しかし、発汗の速度が速ければ速いほど、「最後の汗」として分泌される前に再吸収されるナトリウム量は少なくなる。したがって、汗をかく速度が速いほど、最終的な汗のナトリウム濃度は高くなる。

 10人の健康な人を対象としたこの研究は、その効果を明確に示している。発汗率が低いグループは発汗前のナトリウムの86%を再吸収したが、発汗率が高いグループは、発汗前のナトリウムの65%しか再吸収しなかった。また、運動強度を最大心拍数の50%から90%に増加させるとこにより、被験者は発汗量が328%増加し、汗のナトリウム濃度が311%増加した。発汗量と発汗ナトリウムの増加率がほぼ等しいことが分る。これは、これが同期して増減するためである。

 注意すべき点が1つある。この結果は1時間当り約0.3リットルの発汗量でのみ発生する。これは、運動時の発汗量の一般的な範囲である1時間当り0.52.0リットルを下回る。0.3リットルの閾値を十分に超えて発汗したら、汗の量が増えるにつれて汗の塩分が増していると考えて下さい。

 

汗のナトリウム濃度に影響を与えるその他の要因

 次に、汗の塩分に影響を与える他の変数をいくつか見ていく。私はこれらの要因を発汗量とは関係なく議論していることに留意する。一般に発汗量を増加させるものはすべて、汗のナトリウム濃度も増加させる。例外は暑さ順応であるが、これについては最後に説明する。

1:遺伝学

 運動中のSueの汗のナトリウム濃度が600 mg/Lで、同じ対照実験でのLarryの濃度が1400 mg/Lであった場合、この差の多くはおそらく遺伝学によって説明できるであろう。研究者達は詳細をすべて解き明かしたわけではないが、嚢胞性繊維症膜コンダクタンス調節因子と呼ばれる遺伝子が、汗のナトリウム濃度の調節に役立つタンパク質を作るための指示を与えていることは分っている。嚢胞性繊維症膜コンダクタンス調節因子活性が低い人は、より塩辛い汗をかくようである。

2:アルドステロン

 アルドステロンというホルモンの主な役割は、体内の水分と電解質を調節することである。ベースラインのアルドステロン濃度が上昇すると、それに伴って腎臓と汗腺でナトリウムを再吸収する体の能力も増加する。つまり、汗に含まれる塩分が少なくなる。安静時アルドステロン濃度は、過度の塩分の多い食事と低ナトリウム食の両方によって増加し、有酸素運動能力の向上や暑さへの順応によって減少し、遺伝の影響も受ける。

 アルドステロン濃度は運動によっても急激に上昇するが、これが激しい運動によって塩分が多くなる汗をかく理由ではない。アルドステロンはすぐには効果を発揮しない。むしろ、これは以前に説明した影響である。つまり、発汗率が高いほど、塩分の多い汗は生成される。

3:暑さへの順応

 暑熱順化には、体温調節などの適応能力を高めるために、暑い環境で運動することが含まれる。他の適応の1つは、暑い中での数日間のトレーニング後の汗のナトリウム濃度の低下である。どの研究を参照するかに応じて、10日間暑に順応すると、汗のナトリウム濃度が3060%低下する。詳細については、これに関する私の記事を参照して下さい。

 

汗のナトリウムに直接影響しない要因

 以下の要因の多くは、発汗量を介して間接的に汗のナトリウム濃度に影響を与えるが、入手可能な研究に基づくと、それらが重大な直接的な影響を与える可能性は低い。

 年齢

 有酸素フィットネス

 体重

 生物学的性別

 人種

 衣類

 水分補給状態

 周囲温度

 高度

 湿度

 運動強度

 運動期間

食事性ナトリウムについてはどうか?

 食事性ナトリウムについてはもう少し議論がある。塩摂取量が増加し続けると、汗のナトリウム濃度が上昇することを示す研究もあるが、そうでない研究もある。この矛盾の説明は、ナトリウム摂取量の増加が長期間続くと、より一時的な変動とはためである可能性がある。

 説明しましょう。食事のナトリウム量を増やすと、汗腺が再調整されるまでに14日かかる。私が再調整すると言うのは、腺によるナトリウムの再吸収が減り、「最後の汗」が、 

塩分が多くなるという意味である。塩分の多い食事は塩分の多い発汗につながることを示す研究は、数日から数週間にわたって行なわれた。効果がないことを示す調査は通常、最大3日間続いた。

 ここで重要なのは、汗のナトリウム濃度は習慣的な(急性ではない)塩摂取量によって変化すると言うことである。非常に汗をかいた日に塩分を1 g余分に摂取しても、汗腺はおそらく気付かないであろうが、エネルギー・レベルは感謝するであろう。

 

典型的な汗のナトリウム濃度

 汗のナトリウム濃度と発汗量の両方が分かっていれば、特定のトレーニングによるナトリウムの損失を判断できる(ナトリウム摂取量計算ツールも役立つ。)

 残念ながら、汗のナトリウム濃度の推定は、モニターなしで血圧を推定するようなものである。公表されている範囲に基づいて大まかに予測することはできるが、指標は個人間および個人内で大きく異なる。おそらく遺伝子は、個人間の差異を生み出す最大の要因である。個人内(現在のあなたと今日の後のあなた)の違いは、発汗量の急激な違いによって生じる。

 それを念頭に置いて、運動中の平均的な汗のナトリウム濃度はどれくらいであろうか?826 mg/Lは、さまざまな状況で発汗した506人のアスリートのレビューに基づいた適切な推定値である。しかし、そのばらつきは人によって大きく異なる。ある包括的なレビューでは、その範囲は4601840 mg/Lとされている。言い換えれば、最も塩分濃度の高い汗かきの汗には、最も塩分濃度の低い汗かきに比べて45倍多くのナトリウムが含まれている。

 

汗のナトリウム濃度を測定する

 仕事前後の単純な体重計算を必要とする発汗量の計算とは異なり、汗のナトリウム濃度の測定には実験室での作業や施設が必要である。

 最も一時的な手法は、体重のさまざまな部位に汗吸収パッチを使用することである。問題は、体重の部位によって発汗量が大きく異なる可能性があることである。平均全身発汗ナトリウム濃度が826 mg/Lであった506人のアスリートを覚えていますか?彼等の前腕の平均ナトリウム濃度は1000 mg/Lを超えていた。体の一部の領域(前腕、背中、胸)では全身の発汗量を過大評価する傾向があるが、他の領域(足、ふくらはぎ、太もも)では過小評価する傾向がある。

 幸いなことに、科学者達はこれらの欠点を調整するための非常に気の利いた回帰式をいくつか作成した。彼等は、人にパッチを適用して30分間運動させ、その後パッチを分析のために研究室に送るだけである。また、リアルタイムで汗の組成を計算するNixのようなウェアラブル汗バイオセンサーで実験することもできる。この技術はまだ試していないが、試してみたいと思っている。

 全身洗浄は、腕、背中、胸の汗だけではなく、すべての汗を捕捉するため、汗採取テストの究極の目的である。残念ながら、この手法で管理された実験室の設備が必要で、被験者に腐った卵の臭いがする化学物質である硫酸アンモニウムをホースでかける必要がある。その夜のデートの予定がある場合はあまり魅力的ではないので、ほとんどの人は地域の汗検査を受けに行く。

 

ナトリウム摂取量を調整する

 最終的には、ナトリウム摂取の目標は、汗によって失われたナトリウムを補充することである。失われたナトリウムを完全に補うことはできないが、大丈夫である。腎臓と汗腺は平衡状態を維持するために懸命に働いているので、水分補給に狂った科学者になる必要はない。適切な基準を満たしていれば、ナトリウム欠乏症の症状が回避され、最高のパフォーマンスを発揮できるようになる。

 次は何か?ナトリウム摂取量計算ツールを使用して、ナトリウムの必要量を推定して下さい。次に、食事を試して、体がどのように反応するかを見て下さい。自分に合った摂取量が見つかるまで、試行錯誤を続けて下さい。正しくできたとき、違いを感じるでしょう。