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週末の記事:ナトリウム・イオン電池が主流になる

The Weekend Read: Sodium-Ion Batteries Go Mainstream

By Marija Maisch

https://www.pv-magazine.com/  より   2022.03.26

 

ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン技術の実行可能な代替手段として浮上している。イギリスを拠点とするナトリウム・イオンのスペシャリストであるファラディオン社を買収した後、産業用大手のCALTReliance Industriesは技術を実験規模から大量生産に持ち込むことに熱心に取り組んでいる。価格の高騰とリチウム・イオン電池材料の不足が予測されることを背景に、ナトリウム・イオン化学はかつてないほど魅力的である。

 

 ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池よりも優れた環境認証、強化された安全性、および優れた原材料費を提供する。さらに、ナトリウム・イオン電池は強力な性能を約束し、密度とサイクル速度の継続的な改善により、化学が特にエキサイティングになっている。

 「ナトリウム・イオン技術はまだ揺籃期にあるが、企業がどれだけ投資する意志があるかに応じて、リチウム・イオン技術の実行可能な代替手段となる。」とWood Mackenzieの調査アナリストのMax Reidは述べている。また、重要な原材料の使用量を減らすかゼロにする代替電池技術により、リチウム・イオンのサプライチェーンへの負担増大を緩和できる。

 ナトリウムはリチウムの1000倍も豊富で、実質的に無限の供給があり、抽出と精製の全体的なコストははるかに低くなっている。一般的に、ナトリウム・イオン・セルは20%から最大40%安いと言われているが、課題は技術を拡張することである。

 「短期的には生産者が2020年代半ばに大規模生産二到達することを目指しているため、ナトリウム・イオン電池の製造コストは高くなる。」とReidは言う。「今回、電気自動車の電池需要は2022年の0.6 TWhから2030年までに2.8 TWhに急増し、ナトリウム・イオン電池市場にとっては早すぎるブームになる。」

 WoodMacによると、ナトリウム・イオン電池は電気自転車とエネルギー貯蔵のリン酸鉄リチウム電池シェアーの一部に取って代わり、ベース・ケース・シナリオでは2030年までに20 GWhに達すると予想されている。「ナトリウム・イオン技術がリチウム・イオンの空に向かって進む軌道をたどる前に、対処する必要のある未知数がまだ沢山ある。」とReidは言う。電池の材料価格は明らかに結果に影響を与える。リチウムの価格が上昇し続けると、ナトリウム・イオン・セルはより早く比較的魅力的になり、より迅速に大きな市場シェアーを確保することができる。

 生産も初期段階を超えて進む必要があるが、産業の大物が資源と製造経験を注ぎ込んでいるため、ナトリウム・イオンはそうしているようである。

 

ギガ・ファブス

 2021年の最終日、インドのコングロマリットであるReliance Industriesはそのソーラー・ユニット部門がイギリスを拠点とするナトリウム・イオン電池技術のパイオニアであるファラディオン社を、債務を含めて1億ポンド(13600万ドル)で買収すると発表した。この動きはRelianceによる再生可能エネルギー部門での6回目の買収となった。これは太陽光発電供給チェーン、電池、電解槽、燃料電池のすべての段階にまたがるすべての「新エネルギー・エコシステムの重要な構成要素」を製造し、完全に統合すると言う野心的な100億ドルの計画の一部であった。

 この計画では、線維やポリエステル線維から石油化学製品や石油精製まですべてをカバーするコングロマリットが、2024年までにインド国内にいくつかのギガ・ファクトリーを建設する予定である。2桁ギガワットのファブを構築する。

Relianceが実際にナトリウム・イオン技術に全面的に取り組んでおり、ギガ工場レベルで構築していることは非常に明白だと思う。そしえt、これが技術を拡張できるようにするために必要なものである。」と彼は言った。「1 GWのセル生産を行うには約2,500トンの陽極が必要なので、10 GWから20 GWに拡大する規模はぼうだいである。」

 リチウム・イオンは生産量に関しては数十年の先行スタートを切っており、規模が拡大するにつれてコストを削減している。しかし、QuinnRelianceとファラディオン社が同じ屋根の下にあることで、技術革新と進歩を続けると同様に、それを大規模なレベルで拡大するユニークな機会があると硬く信じている。

 彼等自身の拘束条件は非常に大きいので、それだけでコストを大幅に下げることができる。」とQuinnは言う。Reliance自体は、数十ギガワットの拘束要件を持つ可能性がある。Reliance45000万人の加入者を抱える世界最大の通信会社を所有し、22,000台のトラックを所有している。さらに、企業は2030年までに少なくとも100 GWの太陽光発電プロジェクトを建設することを計画しており、これを電池と組み合わせことが決定される可能性がある。「ナトリウム・イオンが本当に主流になるには最高のチャンスだと思う。」とQuinnは言う。

 ファラディオン社は10年以上前にナトリウム・イオン電池技術を擁護した最初の企業であり、当時は基本的に競走がなかった。「我々は本当に早い段階であったので、ナトリウム・イオンの周りにIPのウェッブを配置した。」とQuinnは言う。しかし、関心が高まり、その後の幾つかの企業が出現した。それらには、HiNa電池技術(中国科学アカデミーからのスピンオフ)Tiamat(フランス国立科学研究センターからのスピンオフ)Natron Energy(アメリカのスタンフォード大学からのスピンオフ)Altris AB(スエーデンに本拠を置くウプサラ大学のチーム)、そしてもちろん中国のCALT(電池業界の800ポンドのゴリラ)がある。

 

次の世代

 CALT2021年半ばに第一世代のナトリウム・イオン電池をリリースし、2013年までに基本的な産業チェーンを確立する計画を立てている。中国の電池メーカーは発売時に長年ナトリウム・イオン電池電極材料の研究開発に専念してきたと述べた。同社の第一世代ナトリウム・イオン電池セルは最大160 Wh/kgのエネルギー密度を達成でき、現在は200 Wh/kgを超える高血圧と糖尿病を目指している。

 しかし、第二世代のナトリウム・イオン電池で発表されたエネルギー密度の飛躍を可能にする改善についてpv magazineが尋ねられたとき、CALTは直接応答しなかった。代わりに、さらに読むための提案として、幾つかの地方メディア・レポートを転送した。これらの記事は、CALTが陰極のない金属電池技術に取り組んでいると推測した。これはその空間だけでなく、次世代のナトリウム・イオン電池に最初に適用される。

 CALTは、最初の充電が完了した後に負の集電体上に形成された金属層が陰極の代わりに使用される「ナトリウム金属電池、電池化学デバイス」という名前の特許を出願したと報告されている。製造工程に陰極がないこと、および電池が始めて組み立てられて充電された後に陰極が生成されることは、ユニークな利点である。CALTは関連する材料設計特許を出願しただけでなく、製造工程特許の申請を主導したようである。これは、これらの技術の研究が進んでいる可能性があることを示している。

 一方、ファラディオン社は、陽極、陰極、電解質の累積的な反復改善により、すでにエネルギー密度の大幅な向上を達成し、190 Wh/kgの容量を実証し、現在、生産に移行していると述べている。さらに、同社はステップ・チェンジの革新に取り組んでおり、Quinnが確認したように、エネルギー密度を250 Wh/kgに押し上げることを期待している。それは今日のほとんどのリチウム・イオン電池と同等になる。

 

強力な相乗効果

 最終的にナトリウム・イオンは競争力のある技術ではなく、リチウム・イオンを補完する技術になる。2つの電池技術は構造と動作原理の点で多くの共通点があり、同じ生産ラインと機器を使用することもできる。したがって、CALTはナトリウム・イオン製品を既存のリチウム・イオン・インフラストラクチャーおよび製品エコシステムうぃ統合しているだけである。

 「1つの電気自転車パックでナトリウムはリチウム・ベースのセルの両方を使用するAB電池システム解決策を展開した。これにより、両方の化学物質の利点を活用し、ナトリウム-リチウム電池システムの用途シナリオの余地を広げることができる。」とCALTのスポークスマンは言った。

 このシステムはナトリウム・イオン・セルの現在のエネルギー密度不足を補い、低温での性能の恩恵を受ける。ファラディオン社のQuinnは次のように付け加えた。「LFPNMCと同じ電池パックに入れることは決してない。実際には何も得られないが、ナトリウム・イオンを使用すれば、スーパー・キャパシタのように機能する。」