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ナトリウム電池の一歩前進グラフェン・ドーピング

Graphene Doping a Step forward for Sodium Batteries

By Mark Hutchins

https://www.pv-magazine.com/  より   2020.06.19

 

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の科学者達はナトリウムをドープしたグラフェンから陰極を開発した。これにより、ナトリウム・イオン電池の貯蔵容量と寿命を延す際の基本的な問題のいくつかを克服できる可能性がある。

 

 典型的なリチウム・イオン電池に見られる多くの材料を取り巻く懸念は最近十分に文書化されており、電池供給者、自動車メーカー、その他の供給者は世界中の研究機関と協力して、より豊富な材料に依存する蓄電解決策を開発している。

 固定蓄電分野で既に限られた商業的取り込みが見られている1つのオプションはナトリウム・イオン技術である。ナトリウムはリチウムよりもはるかに豊富にあり、この電池の化学的性質により火災の危険性がはるかに低いため、幾つかの利点がある。しかし、ナトリウムはリチウムよりもはるかに低いエネルギー密度を持っている。リチウムは特に電池の物理的なサイズが決定的な要因である電気自動車や家電製品の分野でこれまでのところ取り込みが制限されている。

 EPFLの科学者達は彼等の最新の研究がナトリウム・イオン電池の容量を増やすための新しい道を開く可能性のあると述べている。「リチウムは携帯電話や自動車の電池に広く使用されているため、重要な材料になりつつあるが、原則としてナトリウムははるかに安価で豊富な代替品になる可能性がある。」とEPFLLászló Forróグループの客員研究員であるFerenc Simonは述べている。「これはナトリウムをドープしたグラフェンという新しい電池技術の探求の動機となった。」

ナトリウムをド-プしたグラフェン

 ナトリウム・イオン電池の容量を増やすための課題の1つは、ナトリウム粒子がリチウム・イオン電池で一般的に使用されているグラファイト電極にうまく挿入されないという事実である。グラファイトをグラフェンに置き換えることで(どちらも炭素の形態であり、グラファイトは結晶構造を持ち、グラフェンは原子の単層である)、材料にナトリウムをうまくドープすることができた。

 このグループは反応を促進する触媒として液体アンモニアに依存する化学プロセスを使用し、ナトリウム含有量の高いグラフェンの数層からなる材料を製造することができた。彼等はACS Nanoで公開された軽アルカリ原子ドープグラフェンの超長スピン寿命での方法について説明している。

 この材料はまた、トランジスターやデータ蓄積用途で重要なスピントロニクスの分野での潜在的な新しい経路を切り開く。そして非常に初期の発見であるが、EPFLを使用している科学者達はその商業的可能性に自信を持っている。「我々の材料は工業規模で合成でき、それでもその優れた特性を非常にしている。」と論文の筆頭著者であるサイモンは述べている。

 ただし、このグループはこの技術を使用して実際の装置を開発するために行うべき作業がまだ沢山なることを認めている。「しかし、電池の需要がほぼ指数函数的に増加しているため、この研究は革新の非常に有望な可能性を切り開いている。」と彼等は結論付けている。