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亜鉛とマンガンの合金に基づく海水電池

Seawater Aqueous Battery Based on Alloy of Zinc and Manganese

By Mark Hutchins

https://www.pv-magazine.com/  より   2021.01.13

 

アメリカの科学者達は水系電池用の新しい陽極を開発した。電解質としての海水を使用した動作中の電池は印象的なエネルギー密度を示し、1,000時間の大電流サイクル後も安定した状態を維持した。グループは既に大規模製造における彼等のアプローチの可能性について話し合っている。

     コーバリスのオレゴン州立大学キャンパスの航空写真。大学の科学者達は水系

電池化学の飛躍的進歩を達成するためにアメリカの他の人々と協力している。

画像:Zhenxing Feng/オレゴン州立大学

 

 複雑な有機溶媒よりも単純な塩水にエネルギーを蓄える水系電池はエネルギー貯蔵の専門家達にとって魅力的な展望である。これらの溶媒ベースの電解質は揮発性で可燃性であることが多く、高電圧で劣化する傾向がある。したがって、それらを海水のような安価で豊富で耐火性のあるものに置き換えるのは簡単なことのように思えるかもしれない。

 しかし、これには独自の問題が伴う。これまで水系電池技術は他の電池技術に比べてエネルギー密度が低く、安定性の問題があるため抑制されてきた。塩水電解質を使用した電池はデンドライトが成長する傾向があり、これには標準のリチウム・イオン技術のように火災の危険性はないが、性能低下や短絡が発生する。

 現在、アメリカの科学者達は新しい陽極設計を使用してこれらの問題の多くを克服したと主張している。このグループは亜鉛・マンガン合金を使用してこれを実証したが、個のアプローチは他の金属合金にも拡張できると述べている。「特殊なナノ構造を持つ合金の使用は表面反応の熱力学と反応速度を制御することによって樹枝状突起の形成を抑制するだけではない。また、過酷な電気化学的条件下で数千サイクルにわたって超高安定性を示す。」と研究に取り組んだオレゴン州立大学の化学技術者であるZhenxing Fengは述べている。

 陽極の表面に3Dナノ構造を備えたこれらの材料を使用することで、グループは反応をより適切に制御し、樹枝状突起(デンドライト)の形成を回避することができた。彼等のアプローチを検証するために、グループは電池を製造し、80 mA/cm2の電流密度で1,000時間の陽極の安定したデンドライト・フリー・サイクリングを実証した。この研究はNature Communicationsに掲載され、「安定した高性能の樹枝状突起を含まない海水ベースの水系電池」と題する論文記載されている。に

 

化学的観察

 また、陽極で発生する反応をリアルタイムで観察するためにグループが開発した新しい方法についても説明する。これにより樹枝状突起の形成やその他の反応についての理解がさらに深まるはずである。この技術は他の電池の概念にも適用できる。「個のプラットホームは電極反応のダイナミックスをその場で直接画像化する機能を提供する。この重要な情報は反応速度論の直接的な証拠と視覚化を提供し、以前は簡単にアクセスできなかった現象を理解するのに役立つ。」とヒューストン大学の電気およびコンピューター工学の助教授であるXiaonan Shanは説明した。

 そして、それは完全に理解するためにもっと多くのテストを必要とする新しい発見であるが、具影響を受けている。グループは既に彼等のアプローチの商業的可能性について議論し始めている。「我々の理論的および実験的研究は3D合金陽極が前例のない界面安定性を持っていることを証明した。これは合金表面での亜鉛の好ましい拡散チャネルによって達成された。この共同作業で実証されたコンセプトは、水系および非水系電池用の高性能合金陽極の設計にパラダイム・シフトをもたらし、電池業界に革命をもたらす可能性がある。」とFengは述べている。