ナトリウム・イオン電池とリン酸鉄リチウム電池
Sodium-Ion vs. Lithium-Iron-Phosphate Batteries
By Emiliano Bellini
https://www.pv-magazine.com/ より 2025.02.17
ドイツの研究者達はさまざまな温度と充電状態におけるナトリウム・イオン電池とリン酸鉄リチウム電池の電気的挙動を比較した。彼等の研究は、サイクル中の充電状態がナトリウム・イオン装置の効率に大きく影響することを示している。
ドイツのミュンヘン工科大学とアーヘン工科大学の研究者達は、高エネルギ-ナトリウム・イオン電池の電気的性能を、リン酸鉄リチウム電池カソードを備えた最先端の高エネルギーリチウム・イオン電池の性能と比較し、充電状態と温度がナトリウム・イオン電池のパルス抵抗とインピーダンスにリチウム・イオン電池よりも大きな影響を与えることを発見した。
「ナトリウム・イオン電池は一般的にリチウム・イオン電池の代替品と見なされている。」と科学者達は述べている。「しかし、ナトリウムとリチウムの電気化学的挙動の違いにより、アノードとカソードの両方に適応が必要になる。リチウム・イオン電池では通常、アノード材料としてグラファイトが使用されているが、ナトリウム・イオン電池では現在、硬質炭素がナトリウム・イオン電池の最も有望な材料と考えられている。」
また、温度や充電状態の変化に関するナトリウム・イオン電池の電気的挙動に関する知識がまだ不足しているため、研究のギャップを埋めることが研究の目的であると説明した。
研究チームは、特に10℃から45℃の温度範囲での電気性能測定、さまざまな温度でのフルセルの開回路電圧測定、および25℃での対応するセルのハーフセル測定を実施した。
「さらに、直流抵抗と定電流電池化学インピーダンス分光法の両方に対する温度と充電状態の影響を調査した。」と研究チームは述べている。「動的条件下での使用可能容量、使用可能エネルギー、およびエネルギー効率を調べるために、さまざまな温度でさまざまな負荷率を適用してレート能力テストを実施した。」
測定はリチウム・イオン電池、ニッケル・マンガン・鉄カソードに基づくナトリウム・イオン電池、およびリン酸鉄リチウム電池カソードを備えたリチウム・イオン電池で行なわれ、すべての装置で充電と放電の間の開回路電圧にヒステリシスが見られることが分った。
「興味深いことに、ナトリウム・イオン電池の場合、ヒステリシスは主に低充電状態で発生するが、これはハーフセル測定によると、硬質炭素アノードによるものと思われる。」と研究者達は強調した。「リチウム・イオン電池の直流抵抗とインピーダンスは充電状態にほとんど依存しない。対照的に、ナトリウム・イオン電池の場合、直流抵抗とインピーダンスが30%未満で大幅に増加するが、充電状態が高くなると逆の効果があり、直流抵抗とインピーダンスの値が低下する。」
さらに、ナトリウム・イオン電池の直流抵抗とインピーダンスの温度依存性はリチウム・イオン電池よりも高いことも確認した。「リチウム・イオン電池テストでは、充電状態が往復効率に大きな影響を与えることは示されていない。対照的に、ナトリウム・イオン電池を50%から100%充電状態までサイクルすると、0%から50%までサイクルする場合と比較して、効率損失を半分以下に抑えることができる。
と彼等はさらに説明し、低い充電状態範囲と比較して、高い充電状態範囲でセルをサイクルすると、ナトリウム・イオン電池の効率が大幅に向上することを指摘した。
彼等の調査結果は、Journal of Power Sourcesに掲載された「市販のナトリウム・イオン電池とリン酸鉄リチウム電池の電気的性能の比較」という研究論文で公開されている。「我々の研究結果は、サイクル中の充電状態がナトリウム・イオン電池の効率に大きく影響するため、考慮する必要があることを示している。」と彼等は結論付けている。