戻る

硬質炭素系ナトリウム・イオン電池のケース

The Case for Hard Carbon-Based Sodium-Ion Batteries

By Marija Maisch

https://www.pv-magazine.com/  より   2023.09.06

 

中国の研究者達は高性能商用ナトリウム・イオン電池の負極として最も有望視されている硬質炭素の開発を妨げる技術的問題をまとめた。

 

 ナトリウム・イオン電池は、低コストの原材料、安全性の向上、急速充電機能、低温性能など、遍在するリチウム・イオン技術に比べて優れているため、広く注目を集めている。この技術の商業化が目前に迫っており、高い電気化学的性能を備えた電極材料の探索が進行中であり、硬質炭素が最も有望な陰極材料として浮上しつつある。

 この度、中国の福州大学とマカオ大学の科学者達によって執筆された新しい研究論文は、硬質炭素の将来についての課題と展望をまとめている。研究者達は硬質炭素の本質的に不規則な微細構造により、硬質炭素の商品化には依然として低い初期クーロン効率、低いレート性能、不十分なサイクル安定性という技術的課題に直面していると指摘している。「これらの課題に対処するには、構造と性能の相関関係を深く理解することで、硬質炭素の微細構造を合理的に設計することが、高性能ナトリウム・イオン電池を実現するために重要である。」と研究者達は書いている。

 さらに、彼等のレビューは硬質炭素電極の出現によってもたらされた一連の研究論文が検討されており、その過程で硬質炭素電極のナトリウム貯蔵メカニズム、硬質炭素前駆体の選択、電解質マッチング・エンジニアリング、および実用的な商業エンジニアリングの要件がカバーされている。

 研究者達はほとんどの硬質炭素電極前駆体がセルロース、イチョウの葉、グルコース、綿、樹脂、スクロース、ブドウ糖などのバイオマス材料や工業製品派製品に由来する前駆体選択の重要性を強調している。「低コストで拡張性のある前駆体の選択が、硬質炭素の商品化に影響を与える重要な要素となっている。」と彼等は書いている。

 彼等のレビューでは、挿入-ナノ細孔充填モデル、吸収-挿入モデル、吸収-ナノ細孔充填モデル、または吸収-挿入ナノ細孔充填モデルなど、さまざまな特性を持つ固体電解質材料を生成できるさまざまなナトリウム貯蔵メカニズムも考慮されている。

 さらに、研究者達は電池の電気化学的性能の重要な要素として、硬質炭素電極と適切な電解質を適合させることの重要性を強調している。彼等は、エステル電解質は硬質炭素との適合性が低いため、高電圧エステル電解質の探索が優先されるべきであると指摘している。「将来的には、ナトリウム・イオン電池の実用的な商業用途を達成するために高性能硬質炭素を構築する方法を決定することが重要であり、これには実際のナトリウム貯蔵メカニズム、硬質炭素の調製、および前駆体の選択を完全に理解する必要がある。そして電解質の調節である。」と研究者達は書いている。

 最後に、この論文は高性能ナトリウム・イオン電池の商品化を達成するための硬質炭素の将来の開発の方向性を強調している。これには、硬質炭素電極の電気化学的性能の向上に役立つ硬質炭素のナトリウム貯蔵メカニズムのさらなる研究、電気化学的性能のさらなる向上、低コスト、低エネルギー消費、高炭素収率を備えた前駆体材料の開発、および派生した材料が含まれる。産業廃棄物材料からの回収だけでなく、高いクーロン効率を確保し、電池のエネルギー密度を最適化できる前酸化処理も可能である。

 「硬質炭素電極の出現は確かにナトリウム・イオン電池の商品化を促進したが、商品化を実現するためにはさらに多くの作業が必要である、と研究者達はeScience誌に掲載された「制御可能な微細構造と高度な電解質によるナトリウム・イオン電池の活性化」というタイトルの論文に書いている。