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オーストラリアの研究者達は塩水を水素に分解する

新しい方法を明らかに

Australian Researchers Reveal New Way to Split Saltwater into Hydrogen

By David Carroll

https://www.pv-magazine.com/  より   2023.02.16

 

オーストラリアの科学者達は、海水から直接水素を製造する新しい方法を開発した。彼等はこの技術が真に持続可能なグリーン水素産業への重要なステップであると述べている。

 

 オーストラリアのメルボルンにあるロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)の研究者達は、脱塩やそれに伴うコスト、エネルギー消費、有毒な副産物を必要とせずに、海水を水素と酸素に分解する新しい方法を開発した。彼等は、特に海水で機能するように開発された窒素ドープ多孔質シートで構成される触媒を組み込んだ。

 RMITの多分野クリーン・エネルギーと環境材料研究グループのチームが考案したこの新しいアプローチは、窒素をドープした多孔質ニッケル。モリブデン・リン化物シートで構成される触媒を使用する。この方法は、最近、Smill誌に掲載された実験室規模の研究で詳述されており、シート内の大きな細孔の存在に依存して導電性が向上する一方、金属と窒素の結合と表面ポリアニオンの存在により安定性が向上し、塩素化学に対する耐腐食性が向上する。

 研究者達は、この触媒シートは「顕著な性能」を示し、1.52 V1.55 Vで完全な水の分解を触媒し、それぞれ1 m KOHと海水中で10 mA/cm2を達成したと述べた。「したがって、構造的および組成的制御により、海水から直接低コストの水素を実現する触媒を効果的にすることができる。」と研究チームは結論付けた。

 主任研究者のNasir Mahmoodは、この新しい方法は海水の塩分が豊富な性質に伴うハードルの一部を克服すると述べた。「海水を使用する際の最大の障害は、副産物として発生する塩素である。この問題を最初に解決せずに世界の水素需要を満たすとしたら、毎年24,000万トンの塩素が生産されることになるが、これは世界が必要とする塩素量の34倍に相当する。」とMahmoodは述べた。「化石燃料で作られた水素を、別の形で環境に悪影響を与える可能性のある水素生産に置き換えても意味がない。我々のプロセスでは二酸化炭素が排出されないだけでなく、塩素も生成されない。」

 他の実験用触媒は海水分解用に開発されているが、RMIT研究チームは費用対効果の高い方法で製造できる高効率で安定した触媒の製造に焦点を当ててきたと博士候補者のSuraj Loombaは述べた。「我々のアプローチは、簡単な方法で触媒の内部化学を変化させることに焦点を当てていた。これにより、触媒の大規模生産が比較的容易になり、工業規模で簡単に合成できるようになる。」と同氏は述べた。

 Mahmoodは、この技術は電気分解装置のコストを大幅に引き下げる見込みがあり、化石燃料由来の水素と競争力を持たせるために、グリーン水素の生産量をkg当たり2ドルとするというオーストラリア政府の目標を十分に達成できるであろうと語った。

 「海水から直接水素を製造する我々の方法は、簡単で拡張性があり、現在、市場にあるどのグリーン水素アプローチよりもはるかに費用対効果が高い。」と彼は言った。「さらなる発展により、オーストラリアでのグリーン水素産業の繁栄の確立が促進されることを願っている。」

 この新しい方法については仮特許出願が提出されており、研究者達は業界パートナーと協力して技術の開発に取り組んでいると述べた。次の段階は、一連の触媒を組み合わせて大量の水素を生成するプロトタイプの電解槽の開発である。