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ナトリウム・イオン電池研究の最新動向

Latest Advances in Sodium-Ion Battery Resaerch

By Marija Maisch

https://www.pv-magazine.com/  より   2022.10.28

 

青島大学の研究者達は優れたサイクル安定性を備えた高性能二酸化チタン・ベースのアノード材料を合成し、ドイツの科学者

達は、溶媒和ナトリウム・イオンが電極にどのように埋め込まれるかを観察するためにオペランド技術を使用した。

 

 アナターゼ型二酸化チタン(TiO2)は、低コスト、非毒性、豊富さからナトリウム・イオン電池の有望な負極材料である。しかし、電子伝導率が低く、高速でのイオン拡散速度が遅いことで実用化を妨げている。中国の青島大学材料科学工学部の研究チームは、ナトリウム・イオン電池のアノード材料として炭素殻を有する安定なアナターゼ・ナノ粒子の合成へのゾル・ゲル・アプローチを実証した。合成されたアナターゼをハーフ電池でテストしたところ、研究者達は電池が1 A/g2,000サイクル後に100%の容量保持で0.05 A/gの電流密度で228 mAh/gの可逆比容量を示すことを発見した。

 その場X線回折とラマン分光の結果は充放電工程中のアナターゼのほぼゼロひずみ特性を明らかにした。その場透過型電子顕微鏡、ex-situX線光電子分光法、走査型電子顕微鏡の結果は、初期放電工程中にナトリウム化TiO2相を形成するための不可逆的なナトリウム化活性化工程を示唆した。

 フルコインセルは陰極としてアナターゼと220 Wh kgのエネルギー密度を提供する陽極としてNa3V2(PO4)3で組み立てた。その結果は最近のEnergy Material Advances誌に掲載された「熱的に安定なアナターゼのナトリウム・イオン貯蔵特性」で報告された。

 

オペランド分析

 一方、Helmholtz-Zentrum Berlin(HZB)とフンボルト大学ベルリンの共同研究グループは、オペランド技術を使用して溶媒和ナトリウム・イオンが電極にどのように組み込まれるかを観察した。結晶格子内の溶媒和殻を伴うイオンの貯蔵は、「共インターカレーション」と呼ばれる。これまで、この概念はナトリウム・イオン電池の負極に限定されていた。現在、ベルリンを拠点とする研究者達は,この概念を電池の正極に拡張することに成功している。

 「二硫化チタン(TiS2)とグラファイトは、電池の充電と放電中に同じ溶媒を吸収および放出する2つの材料を初めて組み合わせた。」と最近のAdvanced Energy Materials誌に掲載された「共インターカレーション電池(ColBs):溶媒和Naイオンを貯蔵するための電極としてのTiS2の役割」の背後にいる研究者の1人であるGuillermo A. Ferreroは述べている。

 科学者達はLIMAX160HZBにあるX線コアラボで行われたオペランド測定を介して、充電および放電中の材料の変化を観察することができた。これは、電池内の共挿入メカニズムを割り当てるのに役立った。

 「共インターカレーションの工程は、より良い低温性能を可能にすることによって効率を改善する可能性がある。」とHZBKatherine A. Mazzioは述べている。「また、溶媒和殻に特に敏感なLi+またはNa+貯蔵の代わりに多価イオンを使用するなど、代替の電池概念を改善するために利用することもできる。」