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塩の抗腫瘍の可能性

The Anti-Tumor Potential of Salt

By Megan Leinenbach

https://pphr.princeton.edu/     2020.06.15

 

 我々は通常、塩を台所の食卓にある単なる美味しいい材料だと考えているが、実際には人類の歴史を通じてさまざまな重要な役割を果たしてきた。実際、塩はかつてローマ帝国の通過の一種であり、イタリアでは儲かる貿易品であり、その防腐剤としての特性により食品の保存が劇的に改善された。塩は「何でも屋」であると言えるが、新しい研究では、塩がガン治療も改善する可能性があることが示されている。

 「高塩分は抗腫瘍免疫を強化することで。」というタイトルの2019年の論文では、高塩分食がどのようにしてマウスやヒトのガン細胞の腫瘍増殖を制限できるかについて説明している。研究者達は、高塩分濃度は骨随由来サプレッサー細胞の活性を遮断することにより、マウスとヒトの細胞の両方で腫瘍の増殖を有意に阻害すると結論付けた。骨随由来サプレッサー細胞は腫瘍微小環境における重要な役割を果たしており、ガン患者にとっては二重の脅威である。骨随由来サプレッサー細胞は新しい血管を形成することで腫瘍の成長を助けるだけでなく、患者の免疫系を抑制する。より具体的には、骨随由来サプレッサー細胞は、体内の外来抗原や自己抗原を攻撃するT細胞やB細胞など、マウスやヒトの重要な免疫細胞の機能を阻害する。

 骨随由来サプレッサー細胞は腫瘍微小環境を支配しているが、マウスの高塩分食が腫瘍近くの骨随由来サプレッサー細胞を不活化したため、高塩分濃度がその弱点である可能性がある。その結果、高塩分食の食餌を与えられたマウスでは、通常の食餌を与えられたマウスよりも腫瘍の増殖が著しく遅くなった。これらの発見は、ガンの治療、特に免疫系の自然な能力を利用してガンと闘う治療法であるガン免疫療法にとって重要となる可能性がある。高塩分食はマウスの腫瘍増殖を遅らせることに加えて、ヒトのガン細胞の骨随由来サプレッサー細胞機能を阻害することができた。実際、免疫抑制性骨随由来サプレッサー細胞の活性は、ヒトのガン細胞ではほぼ完全にブロックされた。このデータは、高塩分の食事でナトリウム濃度が上昇すると、骨随由来サプレッサー細胞の効果が低下し、腫瘍の増殖が遅くなるだけでなく、ガン患者の免疫システムも強化される可能性があることを示している。ガン免疫療法に関連する最大の困難の1つは、腫瘍近くの骨随由来サプレッサー細胞の蓄積が部分的に原因となり、ガン患者の免疫システムが低下していることが多いことであるため、これは重要な発見である。

 これらの結果は将来、ガン免疫療法に役立つことが判明するかもしれないが、塩は既に健康リスクと関連していることを心に留めておく必要がある。研究によると、塩の過剰摂取量は心血管疾患、慢性腎臓病、骨粗鬆症、胃ガンを引き起こす可能性がある。この研究はマウスとヒトの細胞における高塩分食の利点を実証したが、ナトリウム摂取量の増加は健康に悪影響を与えることにも留意することが重要である。

 それにもかかわらず、これらの結果は、医療専門家に腫瘍増殖の管理に関して、塩分濃度の操作という別のツールを提供することになった。塩を多く含む食事を食べることは、塩の抗腫瘍効果を活用する最良の方法ではないかもしれないが、将来的には、これらのメカニズムをガン免疫療法における骨随由来サプレッサー細胞機能のブロックに使用できる可能性がある。