ナトリウム・イオン:ナトリウム・イオン電池の3つの大きな約束
Sodium-Ion: The Three Big Promises of Sodium -Ion Batteries
By Shazan Siddiqi
https://www.powersystemsdesign.com/ 2025.05.23
ナトリウム・イオン電池は、材料の豊富さ、システムの互換性、そして安定性の向上という独自の組み合わせにより、リチウム・イオン電池の魅力的な代替品として台頭している。エネルギー貯蔵市場が拡張性と費用対効果の高い解決策を模索する中、ナトリウム・イオン電池の核となる可能性は、電池の導入方法と導入場所を根本的に変える可能性がある。この技術がなぜこれほど有望なのか、詳しく見ていこう。
豊富な鉱物資源
ナトリウム・イオン電池は、鉱物資源の豊富さという重要な利点を有している。地政学的緊張、新型コロナウイルス感染症後の供給問題、そして需要の増加により、リチウム価格は2022年に1トン当り8万米ドル以上に急騰した。これは、グラファイト処理の93%以上、世界のギガファクトリー生産量の80%以上を中国が支配するサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにした。
その後、リチウム価格は1トン当り約1万米ドルまで下落したが、炭酸ナトリウムは依然としてはるかに安価である。これは材料費の削減と供給ショックの影響の軽減を意味数する。また、ナトリウムは広く入手可能で、トロナや塩などの一般的な原料から供給できるため、国内生産の有力な候補となっている。
ID TechExのレポート「ナトリウム・イオン電池2025-2035:技術、主要企業、指示、予測」によると、リチウム価格が再び1トン当り5万米ドルを超えた場合、ナトリウム・イオンのコスト優位性はさらに顕著になると予測されている。
ドロップイン互換性
ナトリウム・イオン電池は、既存のリチウム・イオン電池製造プロセスとの互換性に優れている。多くの場合、同じ製造プロセスと装置を用いて製造できるため、より迅速かつ低コストでスケールアップが可能である。しかし、その互換性は化学組成に依存する。層状酸化物やプルシアン・ブルー類似体などの一部の材料は湿気に敏感であり、水蒸気との反応による性能低下を防ぐため、ドライルームでの取り扱いが必要である。
また、ナトリウム・イオン電池はエネルギー密度が低いため、同じエネルギーを貯蔵するにはより多くの電池が必要になる。そのため、必要な設備が増加し、取得コストが約15%上昇すると推定されている。しかし、ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオンのサプライチェーン大部分を勝つ移用でき、プロセスとインフラを共有することで、産業規模への貴重な近道となる。
ナトリウム・イオン電池とリチウム・イオン電池の生産互換性は、その化学的性質によって異なる。
安全上の利点
ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池とは異なり、充電状態をゼロにした状態で輸送できる。これにより、輸送中の火災リスクが低減され、輸送がより安全、容易、そして安価になる。これは、特にグローバル・サプライチェーンにおいて、物流上の重要な利点となる。
ナトリウム・イオン電池は通常、硬質炭素アノードを使用する。ナトリウムはグラファイトにインターカレーションしないため、引火点が高く液相範囲が広いプロピレンカーボネート(PC)などの異なる電解質溶媒を使用できる。PCはリチウム・イオン・システムでは一般的に安全ではないが、ナトリウム・イオン・セでは良好に機能する。PCはDECやDMCなどの可燃性が高い溶媒の代替として利用でき、熱安定性と安全性を向上させる。
とはいえ、ナトリウム・イオン電池は常にリチウム・イオンよりも安全であるという一概な見解は正確ではない。安全性は、使用される特定の化学組成に大きく依存している。例えば、NFPPやNFMといった層状酸化物材料は、過酷な条件下では異なる挙動を示す。これらの違いについては、ID TechExのレポート全文で詳しく説明されており、複数のナトリウム・イオン電池開発企業によるARC試験データも含まれている。
熱負荷環境下において、ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池よりも高温で熱暴走に陥りやすく、その進行速度も遅いため、特定の条件下では安全性が向上する。
将来展望
ID TechExのレポート「ナトリウム・イオン電池2025-2035:技術、主要企業、市場、予測」では、この技術がエネルギー貯蔵市場で競争力を持つための3つの主要な展望を指摘している。
安全性を維持しながらエネルギー密度を向上させること。これには、正極、負極、電解質、そしてセル全体の設計と統合の改善が含まれる。現在市販されている中国製ナトリウム・イオン電池は、エネルギー密度が120 Wh/kg以上、250 Wh/L以上であるが、LFPセルの平均エネルギー密度である160 Wh/kg、300 Wh/Lには及ばない。
システム・レベルでの総所有コストで競争しよう。ナトリウム・イオン・セルは、LFPより必ずしも安くはないものの、運用保守コストの削減といったシステム・レベルの改善によって価格差を縮小できるほどの価格帯で競争力を持つ可能性がある。これは、LFPがセル・トゥ・パックのイノベーションによって普及した例と同じである。
セルの化学組成に基づいて、ニッチな性能分野を見付けよう。低温性能、高出力、安全性の向上といった分野が含まれる。その好例として、データ・センター向け無停電電源装置の開発に取り組むNatron Energyや、SoC推定と低温性能を向上させるためにナトリウム・セルを採用したCATLのハイブリッド電池パックが挙げられる。