溶融塩電池は長期のエネルギー貯蔵を提供できる可能性がある
Molten Salt Battery Could Provide Long-Term Energy Storage
By Ally Winning
https://www.powersystemsdesign.com/ 2022.05.05
エネルギー省太平洋岸北西部国立研究所の研究者達は、数ヶ月後に使用できるようにエネルギーを「凍結」する方法を開発した。
再生可能エネルギーの最大の欠点は、太陽が照る時間や風が吹く時間をコントロールできないことである。その要因だけでも、現時点で再生可能エネルギーが我々のエネルギー需要のすべてを供給することはできないことが分かる。もちろん、潮力エネルギーや水力発電など、より予測可能な他の種類の再生可能発電もあるが、潮力発電を最大限に活用する技術はまだない。また、水力発電には特定の地理的特徴が必要であり、十分ではない。再生可能エネルギーへの支援が必要なのは、時間ごと、または日ごとだけでなく、季節ごとでもある。太陽の光が最も当たらない冬に、エネルギーの大部分を家の暖房に使う。多くの国で冷房が必要な夏には、風が少なくなる。これら両方の問題に対する1つの解決策は蓄電である。短期の蓄電については多くの取り組みが行なわれてきたが、これまで長期の蓄電についてはあまり話題になっていなかった。
溶融塩の使用は、余剰の再生可能エネルギーを貯蔵するために研究されている技術の1つであるが、それは短期間の使用を目的としていた。現在、科学者達は数ヶ月後に使用できるようにエネルギーを「凍結」する方法を開発した。新しい「凍結融解電池」はエネルギー省太平洋岸北西部国立研究所の科学者によって設計された。彼等はホッケーのパックほどの大きさのプロトタイプを開発した。
最初に電池は180℃に加熱され、溶融塩電解質が液体になり、イオンが流れるようになり、化学エネルギーが生成される。その後、電池は室温まで冷却され、電解質が固体になり、エネルギーを運ぶイオンがその場で凍結し、エネルギーが閉じ込められる。エネルギーを放出するには、電池を再度加熱するだけで済む。凍結融解コンセプトにより、電池のアイドリング時の自己放電の問題が回避され、12週間にわたって容量の92%が維持される。研究チームは豊富で調達が容易な材料を使用した。陰極と陽極は、それぞれアルミニウムとニッケルの固体プレートである。電池のエネルギー容量を高めるために、電解液に硫黄も添加された。
電池の化学的性質が安定しているため、電池の陰極と陽極の間にグラスファイバー製セパレーターを使用できる。製造コストが高くなり、凍結融解サイクル中に破損しやすくなる。
電池のエネルギーは1 kWhあたり約23ドルの材料費で蓄えられるが、これは最近のニッケル価格の高騰前に測定されたものである。研究チームは現在、材料コストをキロワット時当り約6ドルまで下げるために鉄の使用を検討しており、これは今日のリチウム・イオン電池の材料コストの約15分の1である。これらの電池の理論上のエネルギー密度は1 kg当たり260ワット時で、今日の鉛蓄電池やフロー電池よりも高くなる。
研究はCell Reports Physical Scienceに3月23日にオンライン掲載された。この論文の他の著者には、太平洋岸北西部国立研究所研究者のEvgueni Polikarpov、Nathan Canfield、Mark Engelhard, J. Mark Weller、David Reed、および元太平洋岸北西部国立研究所研究者のXiaowaen Zhanが含まれる。太平洋岸北西部国立研究所を運営するBattelleは今日の技術に関する特許を申請した。