溶融塩のより明確な画像取得のため研究者達は協力
Researchers Team up to Get a Clearer Picture of Molten Salts
By Brookhaven National Laboratory
https://phys.org/より 2021.11.29
研究者達は実験と理論を組み合わせて溶融塩環境での腐食生成物としてのニッケルの
構造とダイナミックスをモデル化した。
出典:アメリカ・エネルギー省Santanu Roy/ORNL
エネルギー省のオークリッジ、ブルックヘブン、アイダホ国立研究所、およびストーニ・ブルック大学の研究者達は高度なエネルギー技術にとって重要な熱伝達媒体である溶融塩についての基本的な洞察を得るための新しいアプローチを開発した。
溶融塩、またはソルト・メルトは様々な温度で液体のままであり、最も高温の用途の幾つかに安定した熱特性と導電特性を提供する。それらは原子炉に燃料を供給して冷却し、高温電池に電力を供給し、集光型太陽光発電所のエネルギーを蓄えられる。数十年前の実験は安全で効率的で手頃な価格の原子力エネルギーを生産する可能性を示した。
「現在のエネルギー問題に対処するために溶融塩を使用することに新たな関心が集まっているが、塩とその構造材料との相互作用をより深く理解して、それらを取り巻く技術を開発する必要がある。」とORNLのVyacheslav Bryantsevは述べている。「理論と実験を組み合わせることで、技術者達が溶融塩システムを設計する際に考慮する必要のある多くの物理的特性に関連する有用なモデルを作成できる。」
チームは極限環境での溶融塩を調査するDOEエネルギー・フロンティアー研究センターの一部として協力した。
Journal of American Chemical Societyに発表された結果は、溶融塩の構造とダイナミックス、およびそれらを含むために使用される合金との相互作用に関する捉えどころのない情報を提供する。
腐食は溶融塩の既知の課題であるが、実験的に予測および調査することが難しいため、工程は十分に理解されていない。その理由の1つは、溶融塩が動的で変化し、固体から溶融して液体になるだけでなく、温度や組成の変化に伴って変化することである。その複雑さに加えて、ニッケル、クロム、その他の遷移金属など、検出や解釈が難しい方法で塩の混合物と相互作用する腐食生成物がある。
この研究は塩化物ベースの溶融塩、ZnCl2-KCl中の微量のニッケルを観察することを目的としている。ブルックヘブンの共同研究者達は国立シンクロトロン光源IIのインナーシェル分光法ビームラインを使用して、拡張X線吸収微細構造分光法を実行した。これは特定の元素を選択して原子構造について学習できる強力な手法である。X線は試料を通過し原子に吸収される。照射された原子は周囲の原子またはイオンによって散乱された電子を放出する。
研究者達は散乱パターンを測定して存在する配位構造、つまり原子と分子が中心の金属イオンの周りに配置される方法の図を作成できる。この場合の目標は様々な形で存在する可能性のある協調ネットワークでニッケル・イオンが塩化物とどの様に結合するかを理解することであった。
EXAFS理論を実験データに適合させる従来のアプローチでは、存在する構造の平均的な画像を作成できるが、溶融塩環境の複雑さを捕らえることはできない。ニッケルは塩化物と相互作用してそれぞれが異なる配位数を持つ複数の構造を形成し、それらは独立して共存および進化する、多様性を説明するには新しいアプローチが必要である。
「従来のフィッティング法ではニッケルの配位構造を説明するには不十分であり、実験データの解釈が困難であることが分った。元素が様々な形で現われる溶融塩の高度に無秩序な状態を説明できるアプローチが必要である。構成を同時に、行うと、「ブルックヘブン国立研究所の科学者であるSimerjeet GillとAnatoly FrenkelはEXAFSのデータ収集と分析を主導した。
研究者達はニッケルによって採用された複数の配位状態(ニッケル・イオンの様々な構成)を特定し、それらの集団を定量化する方法を開発した。これは、これまで不可能だった偉業である。新しいモデルはアイダホ国立研究所のチーム・メンバーによって実行された吸光分光法を使用して検証された。
「我々の最初のステップは溶融塩構造ネットワークが原子レベルでどの様に見えるか、そしてニッケルが塩化物共有を介してそのネットワークの一部になる方法を理解することであった。通常、溶融塩中のニッケルと他の陽イオン(すなわち亜鉛)は密接に接触した構造で、それらの間で1つまたは2つの塩化物を共有することが分った。」とORNLのSantanu Royは述べている。
研究者達が、どの配位構造が存在するかを決定したら、次のステップは溶融塩環境でそれらが時間の経過と共に形成および進化する理由と方法を理解することであった。
「溶融塩で形成される構造は動的であり、温度と組成の変化に敏感であることは分っているが、その関係を定量化したかったのである。」とロイは述べている。「ニッケル塩化物ネットワークは塩化物交換の工程を通じて進化を続ける。塩化物イオンは移動し、他の塩化物イオンと場所を交換する。その場合、ネットワーク全体が新しい構造を採用する可能性がある。」
チームは予想通り塩の溶融温度が上昇するにつれてイオンがより多くの運動エネルギーを獲得し、ニッケル・イオンの周りの塩化物交換ダイナミックスが速くなることを示した。驚くべき結果は元素の比率を調整することによる塩の溶融物の組成の変化も塩化物交換のダイナミックスに大きな影響を及ぼし、より多くの構造的無秩序が導入されると、より速くなることであった。重要な発見は溶融組成の函数としての塩化物交換ダイナミックスをニッケル・イオンによって採用された配位構造に関連付けた。
この研究は、イオンが溶融塩で相互作用する方法のいくつかの重要な側面を明らかにし、様々な配位構造がどのように形成されるかを支配する規則を説明した。
「理論と実験を組み合わせたこれらの取り組みは、特定の用途向けに最適化できるイオン溶解度や輸送などの特性に基本的な洞察を結び付ける上で大きな飛躍をもたらす。」とBryantsevは述べている。