戻る

数分以内に海水を飲めるようにする

Making Seawater Drinkable in Minutes

By National Research Council of Science & Technology

https://phys.org/より  2021.06.29

 

 WHOによると、世界中で約785百万人が清澄な飲料水源を欠いている。地球上で大量の水があるにもかかわらず、そのほとんどは海水で、全水量の約2.5%だけが淡水である。清澄な飲水量を提供する方法の1つは海水を脱塩することである。韓国土木建築技術研究所(KICT)は膜蒸留法によって海水を淡水に転換する安定した性能のエレクトロスピニングされたナノファイバー膜の開発を発表した。

 膜の濡れは膜蒸留において最も難しい問題である。膜蒸留中に膜が濡れていれば、膜を交換しなければならない。進行中の膜の濡れは特に長期間の操作で観察されている。膜が十分に濡れると、膜は非効率的な蒸溜性能を示すこととなる。膜を通した供給量の流れが低品質の透過液をもたらすからである。

 Yunchul Woo博士が率いるKICTの研究チームは、エレクトロスピニングされた代替ナノ技術によって製造された同軸エレクトロスピニングされたナノファイバー膜を開発した。この新しい蒸溜技術は世界の淡水不足を解決するのを助ける可能性があることを示している。開発された技術は濡れ問題を防ぎ、膜蒸留工程で長期間の安定性も改善する。三次元の階層構造はより高い表面粗さ、したがってより良い疎水性のために膜内のナノファイバーによって形成されるべきである。

 同軸エレクトロスピニング技術は三次元の階層構造を持つ膜を製造するための最も有利で簡単なオプションの1つである。Woo博士の研究チームはコアとしてポリ(フッ化ビニリデンーコーヘキサフルオロプロピレン)を使用し、鞘として低密度のポリマーと混合したシリカエアロゲルを使用して、同軸複合膜を生成し超疎水性膜表面を得た。事実、シリカエアロゲルは通常のポリマーの熱伝導率と比較してはるかに低い熱伝導率を示した。伝導熱損失が減少するため、熱伝導率は膜蒸留工程中の水蒸気流量を増加させた。

 膜蒸留用途でエレクトロスピニングされたナノファイバー膜を使用した研究のほとんどは高い水蒸気流量性能を示したが、50時間未満しか作動しなかった。反対に、Woo博士研究チームは製造された同軸エレクトロスピニング・ナノファイバー膜を使用した膜蒸留工程を1ヶ月である30日間稼働させた。

 同軸エレクトロスピニング・ナノファイバー膜は1ヶ月間99.99%の脱塩率を示した。その結果に基づいて、低い滑り角と熱伝導特性により、膜は濡れや汚れの問題なく上手く機能した。温度分極が膜蒸留における重大な欠点の1つである。それは伝導熱損失のために膜蒸留工程中に水蒸気流量性能を低下させる。この膜は低滑り角、低熱伝導率、温度分極の回避、過飽和の高水蒸気流量性能を維持しながら濡れや汚染の問題低減など、幾つかの重要な特性を備えているため、長期間の膜蒸留用途に適している。

 商業的に利用できる膜蒸留工程で高い水蒸気流量性能よりも安定した工程であることがもっと重要である、とWoo博士の研究チームは述べた。「同軸エレクトロスピニングされたナノファイバー膜は濡れ問題の悩み無しに海水の処理できる強い可能性を持っており、パイロット規模および実用規模の膜蒸留用途に適した膜である可能性がある。」とWoo博士は言った。