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塩感受性血圧の手掛かり発見

Clue to Salt-Sensitive Blood Pressure Found

By Bill Snyder

https://news.vumc.org/   2024.10.21

 

 塩の過剰摂取量と心血管疾患および脳卒中との関連は十分に確立されているにもかかわらず、塩感受性血圧のメカニズムは十分に理解されておらず、広く利用できる診断ツールがなく、治療不可能な心血管疾患リスクのままである。

 

 バンダービルト大学医療センターの研究者によると、ガンの発症に関係するシグナル伝達経路は、心血管疾患と死亡の独立した危険因子である塩感受性血圧にも寄与している。高血圧の人の半数は塩感受性血圧を呈している。血圧は急激に上昇または下降し、食事中の(主に塩化ナトリウム)の摂取量が多いか少ないか、およびその結果として血中濃度が上昇または低下する。しかし、塩感受性は高血圧でない人の約25%にも見られる。

 塩の過剰摂取量と心血管疾患および脳卒中との関連は十分に確立されているにもかかわらず、広く利用できる診断ツールがないまま、治療不可能な心血管疾患リスクのままである。」とバンダービルト大学医療センターの研究者らは最近、Circulation Research誌に報告した。

 この論文の責任著者であるAnnet Kirabo博士は、この現象を何年も研究してきた。臨床薬理学部門の医学准教授である彼女と彼女の同僚達は、免疫系に手掛かりを見つけた。彼等は以前、ナトリウム濃度の上昇が、体の免疫レパートリーの一部である抗原提示骨随細胞を活性化することを報告している。同時に起こる血圧の上昇は、炎症誘発性シグナル伝達分子(サイトカイン)とイソレブグランジンと呼ばれる反応性の高い化合物の産生増加に関連している可能性がある。

 今回の研究では、研究者達は細胞発達や免疫反応、ガンや心血管疾患に重要なJAK/STRT/SMADシグナル伝達経路を調査した。塩感受性高血圧患者では、急速な塩負荷と枯渇(塩摂取量の増加または減少)により、血圧だけでなく抗原提示細胞の経路の特定の遺伝子の発現にも対応する変化が引き起こされた。

 塩感受性患者では、この経路の3つの構成要素である酵素JAK2とタンパク質STAT3

よびSMAD3の発現が、塩負荷後に上昇し、塩枯渇後に低下した。これらの遺伝子発現は、

塩抵抗性高血圧患者のAPCでは発生しなかった。

 塩感受性高血圧におけるJAK2の役割を確認するために、研究者達はCD11c+と呼ばれる

APCからJAK遺伝子を削除した場合の効果を研究した。マウス・モデルでこの意地を「ノ

ックアウト」すると、STAT3SMAD3の下流の活性化が沮止され、サイトカインとイソ

レブグラジンの分泌が減少し、塩誘発性高血圧が予防された、

 これらの発見は、APCにおける下流シグナル伝達のJAK2活性化が塩感受性高血圧の診

断のバイオマーカーであり、塩感受性の治療の潜在的なターゲットである可能性があるこ

とを示唆していると研究者達は結論付けた。

 「骨髄JAK2と塩感受性高血圧に関する我々の研究は、ガン患者の心血管合併症を理解

するための新しい扉を開くものでもある。」とKiraboは指摘した。「ガンにおけるJAK2

役割は確立されているため、この研究は高血圧と腫瘍学の交差点を浮き彫りにし、ガン治

療を受けている患者の塩感受性に対処する心臓腫瘍学戦略の必要性を強調している。」

 Kirabo研究室の医学研究インストラクターであるMohammad Saleem博士が、この論

文の筆頭著者である。