戻る

海水を飲料水に変える

Turning Seawater into Drinking Water

https://news.utexas.edu/      2016.02.10

 

 テキサス大学オースチン校の化学者達は海水から塩分を除去する小さな電界を作り出すことにより、従来の手法よりもエネルギー消費量が少なく、簡単な海水淡水化の新しい方法を導入した。

 

 テキサス大学オースチン校とドイツのマールブルグ大学の化学者達は海水から塩分を除去する小さな電界を作り出すことにより、エネルギー消費量が少なく、従来の技術よりも劇的に簡単な海水淡水化の新しい方法を導入した。新しい方法は店で購入した電池で実行できるほどエネルギーをほとんど必要としない。この工程は膜の必要性を排除し、マイクロスケールで水から塩を分離することにより、現在の脱塩方法が直面している問題を回避する。

 電気化学的に媒介された海水淡水化と呼ばれるこの技術は、先週、Angewandte Chemie誌に掲載された。研究チームはテキサス大学オースチン校のリチャード・クルックスとマールブルグ大学のウルリッヒ・タラレクが率いた。特許出願中であり、スピードアップ企業のOkeanos Technologiesによって商業開発中である。

 「飲料水と作物灌漑用の水の利用可能性は人間の健康を維持および改善するための最も基本的な要件の1つである。」と自然科学大学の材料化学部のクルックスは述べている。「海水淡水化はこのニーズに対処する1つの方法であるが、水を淡水化するための現在のほとんどの方法は、高価で汚染されやすい膜に依存している。我々が開発した膜を使わない方法はまだ改良とスピードアップが必要であるが、それが成功すれば、何時の日か簡単で持ち運び可能な装置を使用して、大規模な淡水を提供できるようになるかもしれない。」

 この新しい方法は地球の住民の約3分の1が住む水ストレスのある地域に有望である。これらの地域の多くは豊富な海水にアクセスできるが、従来の技術を使用して水を脱塩するために必要なエネルギー・インフラや資金にはアクセスできない。その結果、これらの地域で年間数百万人が死亡しているのは、水に関連する原因によるものである。

 {人々は淡水が欠乏しているため死にかけている。}とOkeanos Technologiesの創設者兼CEOであるTony Frudakisは述べている。「そしてある種のブレークスルーが発生するまで、彼等はそうし続ける。それが、我々の技術が表すことを望んでいることである。

 淡水化を実現するために、研究者達は海水で満たされたプラスチック・チップに小さな電圧(3.0ボルト)を印加する。チップには2つの分岐を持つマイクロチャネルが含まれている。チャネルの接合部では、埋め込まれた電極が海水中の塩化物イオンの一部を中和して、チャネルの他の部分と比較して局所的な電界を増加させる「イオン枯渇領域」を作成する。この電界の変化は塩を一方の分岐に向け直すのに十分であり、脱塩水がもう一方の分岐を通過できるようにする。

 「電極で発生する中和反応は海水中の塩分を除去するための鍵である。」とクルックス研究室の大学院生で論文の筆頭著者であるKyle Knustは述べている。橋のふもとの流し釣りのようにイオン枯渇領域は塩の通過を防ぎ、淡水の生成をもたらす。これまでのところ、クルックスと彼の同僚達は25%の淡水化を達成している。飲料水には99%の淡水化が必要であるが、目標を達成できると確信している。

 「これは原則の証明であった。」とKnustは言った。「イオン枯渇領域の形成に基づいて他の用途を開発しながら、同等の性能向上を実現した。これは99%の淡水化が我々の手の届かないところにないことを示唆している。」

 もう一つの大きな課題は工程をスケールアップすることである。現在、人間の髪の毛ほどの大きさのマイクロチャネルは毎分、約40ナノリットルの脱塩水を生成する。この技術を個人または共同で使用するために実用的にするには、装置は1日当たり1リットルの水を生成する必要がある。著者らはこれもなお達成できると確信している。

 これらの技術的な課題が克服されれば、様々なニーズを満たすために技術が様々な規模で展開される将来が予測される。

 「災害救援または地方自治体規模の設備を構築することができる。」とFrudakisは述べている。「Okeanosは、コーク・マシンのように見え、小さな村に十分な水を生産するために独立型で作動する小さな装置を構築することさえ考えていた。」