戻る

電池で「夢の技術」が新たな発見で現実に一歩近づく

Battery ‘Dream Technology’ a Step Closer to Reality with New Discovery

https://news.utexas.edu/      2021.12.06

 

テキサス州オースチン-テキサス大学オースチン校の技術者達によって作成されたナトリウム硫黄電池はスマートフォンから電気自動車まで全ての電力を供給する一般的に使われているリチウム・イオン電池の商業的に実行可能な代替手段としての技術を妨げてきた最大のハードルの1つを解決する。

ナトリウムと硫黄は環境や人権の問題もあるリチウムやコバルトなどの材料よりも安価で広く入手できるため、将来の電池生産にとって魅力的な材料として際立っている。このため研究者達は過去20年間、室温のナトリウム・ベース電池を実行可能にするために取り組んできた。

 「ナトリウムと硫黄は豊富で環境に優しく、考えられる限りのコストが安いため、私はこれを夢の技術と呼んでいる。」とテキサス大学テキサス材料研究所の所長でウォーカー機械工学科のアルムガム・マンシラム教授は述べている。「今後の電化の拡大と再生可能エネルギー貯蔵の必要性の高まりにより、コストと手頃な価格が唯一の支配的な要因になるだろう。」

 テキサス大学オースチン校からの最近の2つのナトリウム電池の進歩の1つで、研究者達は電解質の構成を微調整した。これは電池の充電と放電を刺激するために陽極と陰極の間でイオンが前後に移動するのを容易にする液体である。彼等はナトリウム電池の一般的な問題である樹状突起と呼ばれる針状結晶の成長を研究した。これにより電池が急速に劣化し、短絡し、さらには発火または爆発する可能性がある。

 研究者達はJournal of the American Chemical Societyの最近の論文で彼等の発見を発表した。

 ナトリウム-硫黄電池用の以前の電解質では、硫黄から形成された中間化合物は液体電解質に溶解し、電池内の2つの電極間を移動した。往復移動として知られるこの動的な動きは材料の損失、構成部分の劣化、およびデンドライト形成につながる可能性がある。

 研究者達は硫黄の溶解を防ぎ、往復移動とデンドライトの問題を解決する電解質を作成した。これにより電池の寿命を長くすることができ、300回の充放電サイクルにわたって安定いた性能を発揮する。

 水に砂糖を沢山入れるとシロップ状になる。すべてが解消されるわけではない。」とManthiram研究室の博士課程学生のAmruth Bhargavは述べている。「いくつかのものは半分がリンクされ、半分が解消されている。電池ではこれを半溶解状態にする。」

 新しい電池電解質は濃縮塩溶液を不活性で関与しない溶媒で希釈することにより、同様の方法で設計された。これにより「半溶解」状態が維持される。研究者達はそのような電解質が電極での不要な反応を防ぎ、電池の寿命を延すことを発見した。

 リチウムの価格は過去1年間で急騰し、代替品の必要性を強調している。リチウム鉱業は地下水の大量使用、土壌と水質の汚染、炭素排出などの環境への悪影響について批判されてきた。比較すると、ナトリウムは海洋で入手可能であり、より安価で、より環境に優しいものである。

 リチウム・イオン電池は通常コバルトも使用する。コバルトは高価で、主にアフリカのコンゴ民主共和国で採掘されており、人間の健康と環境に大きな影響を与える。昨年、Manthiramはコバルトを含まないリチウム・イオン電池のデモを行った。

 研究者達は電気自動車や風力や太陽光などの再生可能資源の貯蔵などの技術に適用できるかどうかを確認するためにより大きな電池でテストすることにより、ブレークスルーをさらに発展させることを計画している。

 本論文の他の著者達にはテキサス材料研究所の博士研究員であるJiarui HeWoochul Shinがいる。この研究はアメリカエネルギー省の基礎エネルギー科学局、材料科学工学部門からの助成金で支援された。