FSUの研究者が5,000万ドルのエネルギー省コンソーシアムに
参加し、電気自動車用の強力なナトリウム・イオン電池を開発
FSU Researcher Joins $50M Department of Energy Consortium
to Create Powerful Sodium-Ion Batteries for Electric Vehicles
By Mckenzie Harris
https://news.fsu.edu/ 2025.02.18
アメリカで走行する約3億代の乗用車のうち、約10%が電気自動車である。この市場は、乗用車の選択肢の多様化と、燃料費の削減と排出量の削減を望むドライバーの要望により拡大している。市場に出回っている電気自動車の多くはリチウム・イオン電池で動いているが、リチウム抽出のコストと環境への影響が電池設計の革新を後押ししている。
フロリダ州立大学の化学者は、さまざまな業界で需要が高く、供給が限られている化学元素である重要元素への依存を減らすために設立されたアメリカエネルギー省の主要コンソーシアムを通じて、これらの問題に取り組む全国的な研究チームの一員である。
化学および生化学の助教授であるYan Zengはエネルギー省の5,000万ドルのLow-cost Earth-abundant Na-ion Storage Consortiumの一部として資金提供を受けており、このコンソーシアムは電気自動車で使用するための新しい種類のナトリウム・イオン電池を発見、開発、実証を目指している。ZengはFSUに数年にわたって割り当てられた30万ドル以上の資金を、より効率的なカソードの開発に充てる予定である。カソードは、電池に蓄えられるエネルギーの量と車に供給するエネルギー量を決定する。すべての電池の重要なコンポーネントである。カソードは電池のプラス部分であり、電池の使用時に遷移金属が電子を獲得し、還元反応が発生する。
「ナトリウムとリチウムは非常に似ており、ナトリウム電池は中国など他の国では商業化されている。」とZengは言う。「しかし、アメリカにはまだナトリウム・イオン電池で動く電気自動車はない。これは、環境に優しく手頃な価格の電気自動車に向けた同国初の大きな取り組みである。リチウムには大きなサプライチェーンの問題もあり、この問題を軽減することが経済のサプライチェーンの回復力を高めるために重要である。」
このプロジェクトはエネルギー省車両技術局の資金提供を受けており、6つの国立研究所と8つの大学の研究者を集めて、強力なナトリウム・イオン電池を組み合わせて作成するための新しい材料と方法を開発している。Zengのグループは、カソードの作成という役割に加えて、材料合成において人工知能やロボット駆動プラットフォームなどのツールを使用するという点でユニークである。
「カソードの作成に必要なターゲット材料を合成するために、2つの異なるアプローチを使用するとZengは述べた。「1つ目は固体反応と呼ばれ、異なる金属酸化物、炭酸塩、その他の塩などの異なる元素成分を混合し、チャンバーまたはチューブ炉で高温で「焼く」。2つ目のアプローチは溶液ベースで、溶液から材料を結晶化し、結果として得られた材料を分析して、何が一緒に機能し、何が機能しないかを判断する。効率を高めるために、ロボットアームがラボで反復作業を行い、Alアルゴリズムを使用して、どのようなパラメーターが結果を改善できるかを提案する。
ナトリウムはリチウムよりもわずかに重いため、ナトリウム・イオン電池は同じ重量とサイズのリチウム・イオン電池よりもエネルギーが低くなる。Zengのグループは、新しい元素と構造の組み合わせを作成し、カソード構造に出来るだけ多くのナトリウムを詰め込むことでこの差を克服し、これらの新しいナトリウム・イオン電池がリチウム・イオンよりもさらに強力になるようにする。これらの新しい元素と構造の組み合わせを持つ材料が作成され、分析されると、Zengと彼女のグループは国立研究所に赴き、他の科学者達とともにカソードを強化する特別な設計に協力する。
「Yanは固体材料の合理的設計の先駆者である。」と化学・生化学科長Wei Yangは語る。「化学的に複雑なため、環境に優しくコスト効率の高いナトリウム・イオン電池の設計は困難であり、反復作業で新たな知見を得るにはコストと時間がかかる。Yangが行なったように、AIを活用した学習とロボット駆動プラットフォームを統合することは、長年の課題に対する有望な解決策となり、国内外で大きな注目を集めている。これは、データ駆動型分子科学開発における当学科の強みを物語っている。」
コンソーシアムの他のメンバーは、カリフォルニア大学サンディエゴ校、ヒューストン大学、イリノイ大学シカゴ校、メリーランド大学、ロードアイランド大学、ウィスコンシン大学マディソン校、バージニア工科大学である。参加している国立研究所には、アルゴンヌ、ブルックヘブン、ローレンス・リバモア、パシフィック・ノースウエスト、SLAC国立加速器研究所、サンディア国立研究所などがある。
「FSUでの最初の年にこの資金を獲得できたことは、私にとって大きな意味がある。」とZengは語った。「研究室を立ち上げ、素晴しいチームを素早く構築し、最高の成果を出来るだけ早くコンソーシアムに届けられるように支援してくれた学部と大学にとても感謝している。」