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X線画像でナトリウム・イオン電池の一時的な欠陥を捉える

X-Ray Imaging Captures Fleeting Defects in Sodium-Ion Batteries

 

By David Nutt

https://news.cornell.edu/    2023.05.01

 

 ナトリウム・イオン電池はより豊富な天然資源を利用しているため、リチウム・イオン電池の持続可能な代替品として宣伝されている。しかし、ナトリウム・イオン電池は再充電するとカソードが急速に劣化すると言う大きな問題に直面している。

 コーネル大学主導の共同研究は、ユニークな形式のX線イメージングを使用することで、この劣化を引き起こす可能性ある捉えどころのないメカニズム、つまり一時的な結晶欠陥を特定することに成功した。これにより、研究者は電池の動作中に一時的な欠陥を捉えることができた。

 同グループの論文、「Naイオン電池の層状酸化物における準安定欠陥のオペランド相互作用と変換」はAdvanced Energy Materials誌に414日に掲載された。筆頭著者は博士研究員のOleg Gorobstovである。

 プロジェクトを主導するのは、コーネル大学材料科学工学部の助教授でCroll Sesquicentennial Faculty FellowAndrej Singerである。彼の研究グループは、多くの場合、高度なオペランドX線ツールを利用して、エネルギーおよび量子材料におけるナノスケール現象を研究してきた。これらの技術は、イオン輸送中に短時間だけ現われる一時的な欠陥の挙動を調査するのに特に役立つ。その結果、そのライフサイクルと影響については不明な点が多く残されている。

 Shirley Meng教授率いるカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者およびアメリカエネルギー省アルゴンヌ国立研究所の高度光子源と協力して、チームは高度に同期したX線ビームを備えたBragg Coherent回折イメージングを使用して、充電中のナトリウム・イオン電池の構成部品に焦点を当て、NaxNi1-yMnyO2正極内の形態と原子変位を明らかにするリアルタイム3Dスナップ・ショットを作成した。

 「ここではオペランド測定が不可欠である。」とSingerは言う。「最初の充放電サイクルの前後で電池を観察すると、欠陥は見つからなかった。しかし、手術中に欠陥がどのように形成され、自己修復され、検出可能な「傷跡」が残るのがわかる。」

研究チームは観察結果を説明するために、転位などの欠陥により延性材料が破損することなく変形できる金属からインスピレーションを得た。研究者達は冶金モデルを使用することで、過度欠陥(準安定欠陥とも呼ばれる)の動きを追跡し、材料が変形して自己修復するときに欠陥を動かす応力を定性的に予測した。

 「転位は一次元の結晶欠陥である。我々が研究しているセラミック陰極にそれらが存在することは驚くべきことであり、その形成メカニズムはまだ理解されていない、我々は転位が一時的に形成される逆位相ドメイン境界で形成されることを発見した。」とGorobtsovは述べた。「古代の前述の構成は、この重要な種類の材料における欠陥のダイナミックスをより深く理解するのに役立つことを期待するパズルの新しいピースである。」

 研究者達は現在、電池の動作時に欠陥が出入りするイオンとどのように相互作用するかか、つまり、エネルギー伝達の基本的なメカニズムであるイオン拡散に注目している。Singerはまた、転位の方向は粒子の形状がプロセスにおいて重要な役割を果たすことを示唆しているため、彼のチームと共同研究者らは古代の形態を調製して転位を促進または排除できるかどうかを調査する予定であると述べた。

 「電池材料における広範な欠陥の役割をまだ理解していない。」とSingerは言う。「何世紀にもわたって、鍛冶屋は金属の欠陥工学を利用して、自分でも気づかないうちに、より強くて耐久性のある材料を作成してきた。欠陥工学アプローチをセラミックスに適用することは、静電気が存在するために非常に困難である。それにもかかわらず、新しいオペランド測定の助けと、関係するメカニズムのより深い理解により、我々はこの課題に取り組み始めることができるようになった。」

 共著者には、Stephanie MatsonDaniel WeinstockZiyi Wangとカリフォルニア大学サンディエゴ校、シカゴ大学、アルゴンヌ国立研究所の研究者達が含まれる。

 この研究は国立科学財団の支援を受けた。