世界初の長寿命のナトリウム・イオン・パワー・バンクが
発売された
World’s First Long-Life Sodium-Ion Power bank Launched
By Abhimanyu Ghoshal
https://newatlas.com/ より 2025.03.18
日本のハードウェア・ブランド、エレコムは世界初と謳うナトリウム・イオン電池を搭載したモバイル電池を発売した。従来のリチウム・イオン電池に比べて大幅に長いサイクル寿命と、極寒・高温環境下でも作動することを謳っている。
愛称で「DE-C55L-9000」と名付けられたこのモバイル電池は、外観は市場に出回っている多くのモバイル電池と似ており、丸みを帯びたレンガのような形状の中に9,000 mAhの電池、45 WのUSB Type-Cポート、18 WのType-Aポート、そして充電インジケーターLEDが搭載されている。
多量の電池よりも興味深いのは、その内部に使われている技術である。ナトリウム・イオン電池は、その仕組みや構造はリチウム・イオン電池とほぼ同じでるが、正極材にはより安価で豊富に入手できるナトリウムを使用し、電解液にはリチウム塩ではなくナトリウム塩を使用している。
つまり、これらの電池を製造するために、リチウム、コバルト、銅といった貴金属をそれほど多く採掘する必要はない。エレコムのパワー・バンクは、-34 ℃から50 ℃までの温度範囲で安全に動作するため、屋外の過酷な環境で作業する人にとっても最適な選択肢となるであろう。また、電池素材の特性により、発火のリスクがはるかに低くなっている。
この技術の問題を浮き彫りにする一つの大きな魅力は、リチウム・イオン電池に比べてサイクル寿命(セルのエネルギー密度が低下するまでの充放電回数)がはるかに長いことである。エレコムによると、このモバイル電池は5,000回の充電サイクルに耐えられるとのことである。これは、リチウム・イオン電池の通常の500~1,000サイクルをはるかに上回る。
これは、素晴しいことである。なぜなら、これは市販された最初の主要なナトリウム・イオン製品の一つであるからだ。この電池技術は1970年代から開発が進められ上おり、リチウム・イオン電池よりもkwh当りのコストが低くなる可能性がある。さらに、リチウム・イオン電池と同じように機能するだけでなく、製造方法も同様に可能なため、大量生産する際に多額の設備投資は発生しない。
ナトリウム・イオン電池は、ゼロボルト(安定した不活性状態)で輸送できるため、火災のリスクがはるかに低い状態で輸送できる。
さらに、コバルト、銅、グラファイトといったリチウム・イオン電池に必要な金属を採掘するための有害な採掘作業への依存を減らすことにもつながる。ナトリウムは海塩だけでなく、地殻にも豊富に存在する。
さて、パワー・バンクの話に戻る。エレコムのポータブル・パックは日本で9,980円で、数量限定で販売されている。これは、私が調べたAnkerの10,000 mAhの同等のパワー・バンク2つよりもかなり高価である。また、この製品は350 gとAnkerの製品(212~244 g)よりも重い。
これは、ナトリウム・イオン電池のエネルギー密度がリチウム・イオン電池よりも低いことが原因であると考えられる。これが、ナトリウム・イオン電池が電気自動車に広く採用されない要因の1つとなっているが、近い将来、一部の低速車にこの技術が作用される見込みである。ナトリウム・イオン電池は現在、電源バックアップなどの定置型蓄電池用途向けに開発されている。
つまり、この高価なパワー・バンクは性能で驚くようなものではないが、毎日充電しても最大13年は持つ。これはスマートフォンから自動車まで、あらゆるものに搭載される将来の電池技術の先駆けと言えるであろう。