アメリカがナトリウム・イオン電池で中国に対抗するには
遅すぎるであろうか?
Is It Too late for the US to Rival China on Sodium-Ion Batteries?
By Jason Deign
https://www.latitudemedia.com/ 2024.05.16
アメリカ企業は、中国企業が市場を独占する前に、ナトリウム・イオン電池製造で地位を確立しようと取り組んでいる。
アメリカの厳選された企業が、ナトリウム・イオン電池製造における中国のリードを奪おうとしている。
● 要点:Acculon Energy、bedrock materials、Natron Energyなどのアメリカのナトリウム・イオン電池企業は、新興市場を独占しようとしており、その内のいくつかは急速に商業生産に近づいている。しかし、中国は今月、この技術に基づく世界初の大規模エネルギー貯蔵プラントを立ち上げ、最初の市場を獲得した。
● 市場の基盤:ナトリウム・イオン電池は安価で入手しやすい材料を使用するため、エネルギー密度がない優先されない貯蔵や産業車両輸送などの用途でリチウム・イオン電池を上回る可能性がある。中国のメーカーは2023年に全世界に供給できるほどのリチウム・イオン電池を生産したが、ナトリウム・イオン市場でその成功を再現できるかどうか、あるいはアメリカの競合他社にチャンスがあるかどうかは未解決の問題である。
● 現在の見解:アメリカのナトリウム・イオン電池メーカーBedrock MaterialsのSpencer Gore最高経営責任者は、今後数年間で生産量が「飛躍的に増加する」と予想していると述べた。「中国国内には、ある程度の規模で材料や電池を生産している企業がおそらく12社ほどある。」と同氏は述べた。「中国国外では、ほんの一握りだ。」
アメリカのメーカーが中国で同業他社に打ち勝つには、迅速な対応が必要である。Goreは、ナトリウム・イオン電池は「研究室から市場への溝」を超え、現在、中国で初期量産段階にあると述べた。世界最大のリチウム・イオン電池メーカーの2社、BYDとCATLは昨年、電気自動車向けナトリウム・イオン製品の量産を発表した。
「世界の電池セル・メーカーの大半は中国、韓国、日本に本社を置いている。」とGoaは述べた。「国内のナトリウム・イオン技術は、電池製品の大規模生産経験を持つ既存の大手企業と競合するのではなく、提携する必要がある。」
しかし、他の気候技術とは異なり、中国のナトリウム・イオンのリードは比較的小さい。アメリカ企業も大規模製造に近づいている。ナトロン社は先月、商業規模の事業を発表し、アキュロンは2024年第四半期に商業生産を計画している。Goaはインフレ削減法により、国内のナトリウム・イオン電池製造能力を構築するための「非常に魅力的なインセンティブ基盤」が作られたと述べた。
「アメリカ企業は遅れているが、追いつく態勢は整っている」と同氏は付け加えた。
ナトリウム・イオンの魅力とその用途
Benchmark Mineral Intelligenceが3月に発表した見積もりによると、世界のナトリウム・イオン・セルの生産能力は2030年までに330ギガワット時を超えると予想されている。
ナトリウム・イオン電池は、自動車や家庭製品(現在のリチウム・イオン製品の需要の圧倒的2大ソース)には適していないため、この予測は、固定式蓄電と産業分野での大幅な普及を示唆している。
ナトリウム・イオンの大きな魅力は、ナトリウムが地殻で6番目に豊富な化学物質であり、世界中に存在することである。これは電池メーカーにとって大きなコスト削減を意味する。例えば、Bedrockはリチウム・イオンと比較して最大40%のコスト削減を主張している。しかし、ナトロン社がプレス・リリースで強調したように、リチウムやコバルトなどの倫理的または環境的監視がほとんどないまま抽出されることが多い材料を含まないため、安全性と持続可能性のメリットもある。
ミシガン州ホランドにあるナトロンの工場は、年間600メガワットのナトリウム・イオン電池を生産できる製造能力を備えている。この施設は、3億ドルのリチウム・イオン電池工場を4000万ドルかけて改造してできたものでデータ・センター専用の電池を供給する。
一方、Acculonは2ギガワット時のナトリウム・イオン電池製造能力を目指している。同社は設計に中国製のセルを使用しており、データ・センター運営者、エネルギー貯蔵、オフハイウエイ車両フリートの所有者もターゲットにしたいと考えている。
Acculonの共同創業者Andrew Thomasは、後者の使用例は特に有望であると述べた。なぜなら、ナトリウム・イオン電池は化学組成にもよるが、20~30分で再充電できるからである。これにより、過酷な環境で使われることが多い産業用車両に柔軟性がもたらされる。
「ナトリウム・イオン技術は、複雑な熱管理をしなくても、そのような環境で充電・放電できる。」と同氏は述べた。「低温でも高温でも性能は良好である。それがリチウム・イオンのいくつかの用途における障害となっていた。」
しかし、主流の電気自動車でナトリウム・イオンがリチウム・イオンとどの程度、あるいはどの程度の速さで競合できるかは不明である。
強気な見方もある。例えば、欧州の電気自動車電池メーカーであるノースボルトは、エネルギー貯蔵用のナトリウム・イオン製品を開発しているが、将来的にはその技術を自動車に使用できると主張している。また、Bedrockは1リットル当り300ワット時以上のエネルギー密度を達成できると述べており、エントリー・レベルおよび商用フリート車両でリチウム・イオンと競合できるほどである。しかし、AccuronのThomasは環境的である。
「アメリカの自動車メーカーは、信じられないほどの航続距離と充電能力を持つ車の開発に力を入れているが、それを実現するには別のエネルギー貯蔵技術が必要である。」と彼は語った。「ナトリウム・イオンはそういうものではない。そのようなエネルギー密度に達することは決してないであろう。」
今のところ、定置型貯蔵用途におけるナトリウム・イオンの可能性は、カリフォルニア州のCalSEED基金を含む投資家の注目を集め始めており、同基金はBedrock MaterialsとサンディエゴのUnigridを支援している。
「エネルギー転換には、多種多様なエネルギー貯蔵解決策が必要である。」とCalSEED所長のJoy Lassonは言う。「リチウム・イオンは素晴しいが、ナトリウムの方が豊富で入手しやすい元素である。」