米国の電力網に初めてナトリウム・イオン電池貯蔵システムを導入
First Sodium-Ion Battery Storage Systems Deployed on U.S. Grid
By Lain Hocy
https://internationalfireandsafetyjournal.com/ 2025.08.08
米国におけるナトリウム・イオン電池蓄電システムの導入
Peak Energyは、同社のナトリウム・イオン電池蓄電システムの米国電力網への導入と出荷を発表した。
同社によると、これは米国で初めて導入される電力網規模のナトリウム・イオン蓄電ソルーションである。
このシステムは、特許出願中のパッシブ冷却設計を採用しており、生涯エネルギー・コストの削減を目指している。
また、独立第三者機関の報告書で電池蓄電システムの火災発生の多くに関与している部品も排除している。
この導入は、今夏、電力会社および独立系発電事業者9社とのパイロット・プログラムに一環として行なわれる。
パッシブ冷却と設計上の特徴
Peak Energy社は、同社のリン酸ナトリウムピロリン酸電池システムは、能動冷却・換気装置を含むすべての可動部品を排除していると述べている。これらの部品を排除することで、蓄電池システムにおける最も一般的な故障モードが低減する。この設計は、信頼性の向上と運用・保守コストの削減を目的としている。
ナトリウム・イオン化学は、補助冷却システムなしで幅広い温度範囲で動作を可能にする。これは、セルの寿命を延ばし、火災を防止するために能動的な冷却と換気を必要とするリチウム・イオン技術とは対照的である。
コストと性能に関する主張
送電網蓄電システムは、他の業界製品と比較してコスト競争力がある。その設計により、耐用年数全体にわたって運用・保守コストが低く抑えられる。
パッシブ冷却により、補助電源の使用量を削減し、故障する可能性のある部品の数を減らすことができる。性能試験の結果、設置電力1ギガワット時当たり年間少なくとも100万ドルの運用コスト削減が示された。
試験では、リン酸鉄リチウム電池の導入と比較して、生産コストが約20%削減され、20年間で電池の劣化が33%減少することも示された。
政策とサプライチェーンに関する考慮事項
今回の立ち上げは、米国連邦政府の政策が国内エネルギー・サプライチェーンへの関心を高めている中で行なわれた。エネルギー需要の増加により、蓄電池は送電網のレジリエンス(回復力)とコスト削減に不可欠なものとなっている。ナトリウム・イオン技術は、米国にサプライチェーン上の地点をもたらす。
米国は、ナトリウム・イオン電池の製造に使用される鉱物であるソーダ灰の埋蔵量で世界最大である。原材料のサプライチェーン全体は、国内または同盟国から調達可能である。
経営陣からの声明
Peak EnergyのCEO兼共同創設者であるLandon Mossburgは次のように述べている。「我々は、エネルギー貯蔵を経済的に不可欠な要素としてだけでなく、国家安全保障上の優先事項としても捉えている。米国が自国のエネルギーの未来を主導し、その主導権を維持していくためには、一刻を争う必要がある。」
「我々は、個々の重要な産業の製造を国内に取り込むことに尽力しており、今回の発表は、米国を電池製造における世界的リーダーにするというビジョンを迅速に実現できる能力を証明するものである。」
Peak Energyのエンジニアリング担当副社長Paul Durkeeは次のように述べている。「これは単なる製品発表ではない。エネルギー貯蔵における画期的な進歩である。我々は非常に安定した化学的性質を採用し、その利点をパッシブ冷却アーキテクチャに再投資した。
このシステムは極めてシンプルで、可動部品がなく、計画的なメンテナンスも不要、補助負荷もごくわずかである。これは、世界で導入された中で最も低コストの送電網蓄電技術である。我々のチームがビジョンを実現するために示した創造性と粘り強さを、私は非常に誇りに思っている。
今後の展開計画
このパイロット・プロジェクトは、米国におけるナトリウム・イオン電池蓄電の商品化に向けた最初のステップである。約1ギガワット時相当の将来の商用契約が交渉中である。今後2年間で、数百メガワット時の商用規模の蓄電が、複数の独立系発電事業者およびハイパースケーラーのパートナー企業に導入される予定である。
また、米国初のセル工場の開発も進められており、2026年に生産開始予定である。これは、2024年に5,500万ドルのシリーズA資金調達を実施し、2023年にはステルス状態から脱却する計画に続くものである。
消防・安全専門家にとっての重要性
パッシブ冷却システムの動作特性を理解することは、訓練、保守、検査基準の策定において重要となる。
米国の電力系統に初めて導入されたナトリウム・イオン電池蓄電システム:概要
Peak Energyは、米国でナトリウム・イオン電池エネルギー貯蔵システムを導入した。これは、米国の電力網に導入される初の送電網規模のナトリウム・イオン貯蔵システムである。
この設計はパッシブ冷却を採用し、貯蔵システムの火災につながる部品を排除している。このシステムは、さまざまな温度範囲において、パッシブ冷却や換気なしで稼動可能である。
試験の結果、設置電力1ギガワット時当たり年間少なくとも100万ドルの運用コスト削減が示された。また、リン酸鉄リチウム電池と比較して、生産コストを20%削減し、電池の劣化を抑制することもしまされた。
ナトリウム・イオンは、米国に豊富なソーダ灰資源があるため、国内サプライチェーンにおいて優位性がある。
このパイロット・プロジェクトには、9つの公益事業会社と独立系発電事業者が参加している。現在、交渉中の商用契約の総容量は約1 GWhである。
米国初のセル工場での生産開始は2026年を予定している。