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新発見で全固体ナトリウム電池の実用化が近づく

New Discovery Brings Solid-State Sodium Batteries Closer to Practical Use

https://www.innovationnewsnetwork.com/     2024.04.11

 

大阪府立大学の作田敦准教授と林晃敏教授が率いるチームは、全固体ナトリウム電池の大量合成につながる可能性のあるプロセスを開発している。

 

 現在、最も広く使用されているのはリチウム・イオン電池であるが、リチウムよりもナトリウムの含有量がはるかに多いため、全固体ナトリウム電池が注目を集めている。これによりナトリウム電池の価格が安くなり、全固体電池の方が安全だと考えられているが、加工上の問題により大量生産が困難となっている。

 この研究の詳細を説明した論文はEnergy Storege Materials誌に掲載された。

 

エネルギー貯蔵における固体状態の可能性

 持続可能な開発目標を達成することを目的として、固体ナトリウム電池は信頼性の高いエネルギー貯蔵装置として大きな注目を集めている。注目すべきことに、電池の重要な材料である固体電解質の分野で大幅な改善が行なわれている。

 硫化物固体電解質は高いイオン伝導性と成形性を示し、その特徴は硫化物陰イオン副格子に由来する。

 充電式電池の需要と用途の増加に伴い硫化物電解質の合成は簡単で制御しやすくなる必要がある。

 近年、従来の熱処理法やメカノケミカル法などに加え、液相合成法が大量生産に適した方法として盛んに研究されている。溶媒が出発物質と生成物を分散させるため、このプロセスでは周囲温度で均一な反応が行なわれる。液相プロセスでは、出発物質と生成物の溶媒に対する安定性が異なるため、適用できる電解質システムは依然として制限されている。

 イオン伝導性および追加機能に関連する性能はその組成に大きく影響されるが、出発原料が繊細で安定性の低い硫化物であるため、その変動性が制限される。周期表上の元素の膨大な組み合わせを含む組成を詳しく調べるには、よりハイスループットでスケーラブルでユニバーサルな材料探査および製造プロセスを達成することが不可欠であり、液相の分散剤によって促進される。

 

高伝導性全固体ナトリウム電池の開発

 研究チームは、材料と融着を促進するフラックスの両方として多硫化ナトリウム(イオウ原子を2つ以上持つ硫化物)を使用し、世界で最も高いと報告されているナトリウム・イオン伝導性を備えた固体硫化物電解質を作成した。

 新しいナトリウム電池の導電率は実用に必要な約10倍であり、耐還元性の高いガラス電解質を実現した。このような高い導電性と成形性を備えた電解質を大量合成することが、全固体ナトリウム電池の実用化の鍵となる。

 「この新しく開発されたプロセスは、固体電解質や電極活物質を含むほぼすべてのナトリウム含有硫化物材料の製造に役立つ。」と作田准教授は述べた。

 「また、従来の方法に比べて、より高い性能を発揮する材料が得られやすいため、今後の全固体ナトリウム電池用材料開発の主流になると考えている。」