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溶融塩電池とは

What Is a Molten Salt Battery

By Linda

gridedgenews.com/ より   2017.08.04

 

 グリーン・エネルギーに関して言えば、風力、太陽光、潮力などの再生可能エネルギー源の断続的な性質は電力網管理にとって難しい問題を提示する。ピーク・エネルギー生産はピーク・エネルギー需要としばしば上手く一致せず、消費量が少ない時に過剰なエネルギーを貯蔵する手段が必要となる。再生可能エネルギー源が普及し、化石燃料の排出を抑制する必要性が高まるにつれて、新しい電力網貯蔵解決策を見つけることがこれまで以上に重要となっている。これはソーラーパネルや風力タービンなどの再生可能エネルギー源の大規模な採用を実現するために必要な最後の技術である。

 

  溶融塩電池とは?

 溶融塩電池、特に液体金属電池は再生可能エネルギー源用の配電網エネルギー貯蔵解決策としてエネルギー業界から次第に関心を持たれてきている。高いエネルギーと電力密度、長寿命、低コスト材料と組み合わせて、配電網エネルギー貯蔵に固有の要求を満たす可能性がある。溶融塩電池は溶融塩電解質を使用する電池の一種である。溶融塩電池の成分は室温では固体で、長期間不活性な状態でそれらを貯蔵できる。活性化、中陽極、陰極、および電解質の層はそれらの相対密度と非混和性のために分離している。中央の溶融塩層はイオン伝導度の高い電解質として機能し、電池の充放電の際にイオン種が移動する媒体である。

 

  溶融塩電池の利点

 溶融塩電池は同時代の固体電池に比べて幾つかの固有な利点がある。成分の一部(または液体金属電池の場合は全て)が液体であるため、電池はより高い電流密度、より長いサイクル寿命、および大規模用途での簡素化された製造スキームを備えている。膜や分離器システムが含まれていないため、サイクル寿命が長くなり、エネルギー効率を長期間維持できる。配電網規模のエネルギー貯蔵会社であるAmbriは鉛アンチモンとリチウム液体金属電池が10年の間、毎日の充放電サイクルにわたって初期効率の85%を維持する必要があることを以前に示した。電池は本質的に3つの液相を含む容器であるため、構造はより重い金属を底部に、電解質を中央に、そしてより軽い電極を上部に注ぐのと同じくらい簡単である。この設計の主な欠点は成分を液体状態に維持する溜めに必要な高い動作温度である。但し、配電網規模の用途では、これらの高温は充放電サイクル中に発生する熱を使用して簡単に維持できる。

 

  溶融塩電池の歴史

 最初の溶融塩電池は実際には非常に長期間作動することを意図した物ではなく、爆弾やロケットの単一活性化一次電池として使用されていた。ドイツの第二次世界大戦時代の科学者ゲオルグ・オットー・エルブによって発明された最初の実用的なセルは熱電池と呼ばれ、戦争中に使用されることはなかったが、アメリカ兵器開発部門は最終的に技術を取得し、ロケット、爆弾、そして核兵器にも電力を供給するために使用した。これらの初期の電池は大量の電力を供給しながら、固体状態で無期限(50年以上)に持続する可能性がある。現在でも、AIM-9サイドワインダー、BGM-109トマホーク、MIM-104パトリオットなどのミサイルの主要な動力源として熱電池が使用されている。

 1966年にフォード・モーター社は電気自動車用のナトリウム-硫黄電池(NaS)液体金属電池を発明した。高出力密度と高エネルギー容量は有望に見えたが、290 – 390℃の高い作動温度により、フォードは研究開発を中止した。1983年に東京電力(TEPCO)と日本ガイシ(NGK)は配電網電力貯蔵の解決策としてのNaS電池システムの可能性を認識し、技術の研究開発を開始した。1993年にこのようなシステムの最初の大規模なプロトタイプが東京電力の綱島変電所でフィールド・テストされた。このシステムは3つの2MW6.6 KV電池バンクで構成されていた。これにより、NGK/TEPCOコンソーシアムの現在の配電網電力貯蔵NaS電池の基礎が築かれ、毎年90 MWの貯蔵容量が生成される。

 一方、1985年に南アフリカのプレトリアで、科学産業研究評議会のJohan Coetzer博士が率いるゼオライト電池研究アフリカ・プロジェクト(ZEBRA)が最初の塩化物ニッケル・ナトリウム電池を発明した。比エネルギーは90 Wh/kgで、特に安定したβアルミナ固体電解質であり、NaSよりも耐食性が向上している。この設計は斬新であるが、まだ大規模な商用配電網電力貯蔵装置が見られておらず、電池の研究開発において引き続きホットな話題となっている。しかし、それらはFIAMM Sonickによって展開され、Modec Electric Vanで使用されている。

 

  塩化ナトリウム・ニッケル電池

塩化ナトリウム・ニッケル(Na-NiCl2)電池も溶融ナトリウム芯を使用するが、代わりに放電状態ではニッケルを陽極として使用し、充電状態では塩化ニッケルを使う。どちらの形態のニッケル電極も液体状態では不活性であり、ナトリウム電伝導性のβアルミナ・セラミックがセパレーターとして使用される。NaS電池に含まれる純粋なナトリウム原素の代わりに、テトラクロロアルミン酸塩(NaAlCl4)芯が選ばれた。Na-NiCl2電池はしばしば金属ハロゲン化ナトリウム電池と呼ばれ、長い動作寿命、放電状態での組立能力、NaSよりも安全な化学的性質を持っている。Na-NiCl2電池の通常の動作温度範囲は270 – 350℃であるが、1会社の住友は61℃で解け90℃で動作する塩を使う同じ様な化学的性質を開発できた;彼等は当初2015年後半に商業試験を予定していたため、市場でどの様に機能するかは時間が経てば分る。

 

配電網蓄電の将来と溶融塩電池

 エネルギー貯蔵は再生可能エネルギー源のメリットを完全に享受するための世界のパズルの最後のピースであることが明らかになった。配電網規模のエネルギー貯蔵への投資に費やされる資金はより優れた再生可能エネルギー技術に費やされる資金よりも大きな重みを持っている。