海水電池と新興のブルー・エネルギー経済
Saltwater Batteries and the Emerging Blue Energy Economy
https://www.greenbuildingafrica.co.za/ 2023.05.12
● 科学的な進歩により、海水電池の貯蔵がより実現可能になりつつある。
● 多くの新興市場は海水電池技術を活用するのに理想的な位置にある。
● この新技術により、世界のリチウムへの依存度が低下する可能性がある。
● 持続可能なブルー・エネルギー経済は新興市場で着実に発展している。
新興市場が太陽光発電や風力発電の容量を増やしてエネルギー転換を加速しようとしている中、海水からのナトリウムを利用する最近の技術進歩は、電力貯蔵に重要なブレークスルーをもたらす可能性がある。
ここ数ヶ月間、新興企業は研究者達は変動する太陽光発電や風力発電を大規模に蓄電するための安価な容量を約束する海水電池技術を発表しており、この開発は世界的なリチウムへの依存を減らすのに役立つ可能性がある。
1月、アメリカに本拠を置く技術系新興企業Salgenxは、再生可能エネルギーの独立型貯蔵のほか、農業用灌漑ポンプ、温室の灌漑や照明、油井ポンプ、通信塔への電力供給にも使用できる塩水フロー電池を発表した。この技術は液体電解質の2つの別々のタンクで動作し、1つは塩水で、もう1つは独自の電解質である。2つの流体を循環させることで、電池は電気の入出力を調整できる。
一方、2022年12月、オーストラリアのシドニー大学の研究者達は、リチウム・イオン電池の4倍の蓄電容量を持つナトリウム硫黄電池も開発したと発表した。オーストラリアとアメリカの化学者達は、電極を変更して硫黄の反応性を改善することにより、新興市場の電力需要を満たす解決策を開発していると同時に、世界中の消費者を助ける可能性のある競合技術の市場創出にも貢献している。
市場調査会社Business Research Insightsによると、世界の海水電池市場は2021年に400万ドルだったが、年平均成長率37.1%で2028年までに3,600万ドルに達すると予想されている。
新興市場にとってのメリット
以前のエネルギー転換では、1つの主要なエネルギー源が別のエネルギー源に置き換えられた。例えば、19世紀には木材が石炭に、20世紀には石炭が石油に置き換えられたが、今日のマルチソース、マルチテクノリジーの移行により、地域毎に異なるクリーン・エネルギーの選択肢が提供されている。
この場合、海水技術の活用は、沿岸海域への十分なアクセスを持つ多くの新興市場、特に気候変動の影響を最も受けやすい発展途上島嶼国にとってプラスの効果をもたらすであろう。
こうした理由から、コロンビアの新興企業E-Dinaがこれらの技術における最初の画期的な進歩をもたらしたのはおそらく驚くべきことではないであろう。2021年にE-Dinaは水素ガスを放出する装置内のマグネシウムとの反応を引き起こすことで、500 mlの海水、さらには尿から45日間連続光を生成できるコードレス・ランプであるウォーター・ライトをデビューさせた。
国際エネルギー機関によると、世界中で電気なしでクラス人々の数が2022年に2000万人近く増加する中、このような装置は、特にアフリカのエネルギー貧困の解決に大いに役立つ可能性がある。しかし、塩水電池技術の最近の進歩は、イギリス王立化学会プラント能力反応性を利用して、オフグリッド・コミュニティに大規模な再生可能電力貯蔵容量を開発する機会を提供する。
Salgenxの設計は拡張性に優れており、同社は250 KW、3 MWh、6 MWh,
12 MWh、および18 MWhの構成を提供している。最も重要なことは、ほとんどのレドックスフロー電池に見られる膜がないため、初期費用とメンテナンス費用が削減されることである。
エネルギー輸入市場にとっての塩水電池のもう1つの重要な利点は、ますます複雑化するリチウムのサプライチェーンへの依存を克服できることである。
過去1年間、リチウム・イオン電池メーカーは、世界のリチウム埋蔵量の53%を保有するアルゼンチン、ボリビア、チリからなるラテン・アメリカのいわゆるリチウム・トライアングルに焦点を当ててきた。これにより、今後数十年間ラテン・アメリカを世界のリチウム供給の中心地に据えようとする官民パートナーシップに裏付けられた商業外交の波が押し寄せた。
しかし、サプライチェーンの混乱の脅威と、中国が世界のリチウム精製・加工の60%を占めていることから、従来のリチウム・イオン電池は炭化水素と同様に供給不足を抱えており、輸入国は最終的には輸出業者や精製業者に依存している。
ブルー・エネルギー経済
クリーン・エネルギー技術が地球上で最も強力な2つの自然力である太陽と風力を利用しているのと同じように、海洋とその貴重なナトリウムの恩恵により、新興国市場がエネルギーと気候の課題に対する持続可能な国内解決策を構築するための新たな道が生まれている。
海水電池は海洋資源を持続的に利用して成長を促進し、雇用を創出し、重要な海洋生態系を保護しようとする、いわゆるブルー・エネルギー経済を築く新たな開発の波の最新製品である。
アメリカのクリーン・エネルギー会社Tesla EnergyはPowerwallの電池とソーラーパネルを使用して、ケニアの沿岸地域で海水を飲料水に変えている。
一方、セーシェルは現在、世界最大の海水浮体太陽光発電所を建設中で、今年末までに完成する予定である。これらの発電所は送電網に5.8 MWの容量を提供することができ、気候変動目標を達成するという国の取り組みの一環である。
セーシェルは2018年に世界的にブルー・ボンドの利用の先駆けとなり海洋資源の持続可能な開発を支援するために1,500万ドルを調達し、他の南部および東アフリカ諸国は海洋生態系を保護するためにブルー・ボンドを利用していわゆるグレート・ブルー・ウォールを建設しようとしている。
監視すべきもう1つの分野は、現在、試験段階にある、海水から水素を生成する新興技術である。2022年12月、中国の科学者達は海水から水素ガスを生成する二重脱塩・電気分解装置のテストにおいて同様の画期的な成果を発表した。
2022年9月、フランスの気候技術スタートアップSweetch Energyは、フランスの産業パートナーであるEDF HydroとCNR、さらにはベンチャー・キャピタル会社のGo Capital、Demeter Investment Managers、Future Positive Capitalから、海水からの発電のために600万ユーロの資金を獲得した。