塩感受性遺伝子と血圧:専門家シリーズ
Salt Sensitivity Genes and Blood Pressure: n Expert Series
By Denise Furness
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塩の過剰摂取量は血圧の上昇と心臓の健康状態の悪化に関連している。我々の祖先は塩摂取量が少ない環境で進化したと考えられている。このため、人類は体内に塩を保持するための効率的な生物学的プロセスを開発してきた。しかし、今日の世界では我々の食物、特に加工食品には塩が豊富に含まれている。
一般的に塩という用語は食卓塩を指す。食卓塩は精製および加工されて、他のミネラルや不純物が除去されている。食塩には通常、フェロシアン化ナトリウムなどの固結防止剤が含まれており(訳者注:この化合物は食品添加物ではないので、国内で販売されている食塩には含まれていない)、平均して97~99%の塩化ナトリウムが含まれている。したがって、「食塩」という用語は一般に塩化ナトリウムを意味する。
ナトリウムは水を引き付けるため、塩は高血圧と関連している。塩の多い食事は血流に水を引き込み、血液量と血管内の圧力を増加させる。高血圧が長期にわたって続くと、心臓、腎臓、脳、目などの臓器に圧力がかかる。血圧が管理されないと、時間の経過と共に血管や臓器に悪影響を及ぼす可能性がある。しかし、誰もが同じように塩の反応するわけではない。高塩分の食事を摂取しても高血圧にならない人もいる。
塩感受性と塩抵抗性とは何か?
簡単に言うと、塩感受性とは、塩摂取量に反応して血圧が上昇することを指す。塩抵抗性とは塩分の多い食事をしても高血圧を発症しない人のことを指す。
もちろん、塩分だけが高血圧の原因ではない。進行中の高血圧と塩感受性は、我々の遺伝子と高塩分の食事や座りっぱなしの行動などの生活習慣との相互作用によって引き起こされる。アメリカ人口のほぼ半数が慢性高血圧、塩感受性、またはその両方を患っている。ニュージーランドでは、2021年に男性の約16%、女性の17.4%が高血圧を示した。
複数の遺伝子変異が塩感受性と高血圧に関連していると考えられている。特に、AGT(アンジオテンシノーゲン)およびACE(アンジオテンシン変換酵素)をコードする遺伝子内の共通の変異が特定されている。これらの遺伝子はレニンーアンジオテンシン系 で重要な役割を果たしており、これが血圧を調節するものである。これらのシステムには、図1に示すように、腎臓、心臓、血管、肝臓、肺、および脳を含む中枢神経系が含まれる。
図1 AGTおよびACE内の遺伝子変異は、塩分や水分の吸収とともに
血管収縮、交感神経活動を刺激し、結果として血圧の上昇を引き起こす。
遺伝と塩感受性
AGT内の一般的な遺伝子変異(rs699またはM2355Tとして分類)は高血圧のリスク増加と強く関連しており、2つの研究で塩感受性との関連が報告されている。ある試験では、遺伝子変異を受け継いでいる人々は、AGT遺伝子変異体を持たない人に比べて、減塩食後の血圧低下が大きくなる。
興味深いことに、rs699変異はAGTrs5051と連鎖して受け継がれる。連鎖とは、通常、変異が一緒に受け継がれることを意味する。Rs5051 A変異体は、ナトリウムを減らした後の血圧の大幅な低下にも関連している。これらの結果は、AGT内のこれらの遺伝的変異を受け継いでいる人々は塩感受性を経験する可能性が高く、血圧をより適切に管理するために食事中の塩分を減らすことが有益である可能性があることを示唆している。
ACE遺伝子内野最も一般的な変異は単一のDNA塩基の変化ではない。これは最も一般的な変異であり、SNP(-塩基多型)と呼ばれることが良くある。この場合、ACE遺伝子には挿入または欠失があり、余分なDNAチャンクが遺伝子に追加される(挿入)か、DNAが欠落する(欠失)ことを意味する。DNA検査に関しては、ACEの挿入または欠失はrs4340を含む多数のSNPによって識別される。
ACE欠失は、特に高ナトリウム食を摂取している人において、ACEレベルの上昇と高血圧に関連している。高血圧とACE欠失を関連付ける説得力のある証拠があるにもかかわらず、塩感受性に関する研究には一貫性がない。強力な結論を下すには、大規模な介入試験が必要である。
あなたは塩感受性か?
遺伝子検査を行った場合、その結果を確認して、高血圧や塩感受性への感受性を高める可能性のある遺伝子を受け継いでいるかどうかを判断できる。さらに、血圧計を持っている場合は、約1週間の減塩食を食べ、その後4日間塩摂取量を増やすことで自宅で測定できる。塩を多く含む食事を食べた後に血圧が5%以上上昇した場合は、塩感受性と考えられる。
AGTまたはACEに遺伝的変動がある場合、または塩が血圧を上昇させることが分った場合、ナトリウムを減らし、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの他のミネラルを増やすと、血圧レベルを健康な範囲に保つことができる。また、加工食品の代わりに果物や野菜を十分に摂取することに重点を置くことで、健康な免疫機能をサポートし、健康的な体重を維持するのに役立つ。これらは、長期的な心臓血管の健康を改善する可能性がある。