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ナトリウム・イオン電池 - 技術とサプライチェーンの現状

Sodium-Ion Batteries Current Status of the Technology and Supply Chain

https://evreporter.com/       2023.08.09

 

 最近、ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池に対する可能性のある代替品として大きな注目を集めてきた。技術に投資し大規模生産を目論んでいるCATLBYDのような世界的な大企業で、ナトリウム・イオン電池の展望はエネルギー貯蔵や自動車産業の関心を集めてきた。BattrixxCTOYashodan Gokhale博士は、ナトリウム・イオン技術、サプライチェーンの発達、商業化を実現されるために必要な挑戦について論じている。

 

ナトリウム・イオン電池の利点

 ナトリウム・イオン電池は、低温での性能改善やサプライチェーンの依存性を低下させることを含めて、リチウム・イオン電池に優るいくつかの利点を提供する。ナトリウム・イオン電池は低温蓄電で大きな利点を提供している。例えば、-10℃または-20℃のような極端な低温でも十分な性能を発揮する。ナトリウム・イオン電池は3Cまたは$Cの高い出力で動作を可能にするように、電力とエネルギー応用の両方を可能にする高出力能力の利点を持っている。ナトリウム・イオン電池の大きな利点の1つは安全性である。極端な温度や湿度レベルに耐える能力はナトリウム・イオン電池のアピールをさらに強化する。

 

技術の準備と商用利用

 さらに、業界の多くの参加者は長いサイクル寿命を達成し、4,0005,000サイクル以上を達成したことを誇りに思っている。さらにリチウム・イオン電池と比較して望ましい性能を達成するために、さらなる開発のためのポイント残されている。Faradion TiamatEurope)、CATL(China)BYDHINAKPITNCLITT Roorkeeのような多くの会社はナトリウム・イオンの研究開発を活発に行っている。

ナトリウム・イオン電池会社リスト

● Faradion Limited

● AMTE Power PLC

● NGK Insulators Ltd

● HiNa Battery Technology Co. Ltd

● TIAMAT SAS

● Contemporary Amperex Technology Co. Limited-CATL

● Altris AB

● Natron Energy Inc.

● BYD

 

比較:世界中のナトリウム・イオン技術

有望なナトリウム・イオン化学…

 図(省略)

 いくつかの会社が彼等の製品の進歩を発表しているが、ほとんどがまだ56の間の技術準備レベル(TRL)であり、そのことは、それらが有望な結果を示しているだけで、商業生産に必要なレベル(TRL 79)に達していないことを意味している。カソードとアノード材料の選択は企業によって異なる重要な側面であり、技術全体の商業化の準備に影響を与える可能性がある。いくつかの企業は有望な結果とナトリウム・イオン電池を搭載した車両も展示したが、商業的な入手はまだ数年先のことである。CATLHINA、そしてBYDのような大手企業はナトリウム・イオン電池技術の進歩を披露した。例えば、JACグループはHiNa電池との協力した車両を発表した。しかし、電池パック用のナトリウム・イオン電池の購入に関心のあるOEMメーカーや企業にとって、実際に入手できるのはまだ限られている。2024年の第一または第二四半期までに、必要な認証を通過した後、スマートグリッドに入手できるリチウム・イオン電池のプロセスと同様に、電池を購入して電池パックを作成できる可能性があると予想される。

 ゲームチェンジャーとなるナトリウム・イオン電池についてのメディアの誇大宣伝にもかかわらず、いくつかの重要な欠点があり、対処する必要がある。ナトリウム・イオン電池のエネルギー密度は現在、100160 Wh/kgの範囲であり、リン酸鉄リチウム電池の性能に一致する。しかし、インドのような特別な地域用に百万個のナトリウム・イオン電池を生産するような大規模需要に合わせるために再現性と拡張性の達成はまだ挑戦中である。研究は、周期表から様々な元素で実験し、リン酸鉄リチウム・イオン電池のkg当りのwhに一致するような望ましい性能を達成させるための正しい材料を選択することである。

 

コストとエネルギー密度挑戦

 コストはナトリウム・イオン電池の商業的採用を妨げるもう1つの重要な要因である。業界は2025年または2026年までにナトリウム・イオン電池の価格を鉛-酸電池と同等にすることを目指しているが、現在のコストはNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)電池と比較して比較的高く、またはさらに高い。ナトリウム・イオン電池に使用される原料はコストに影響を与え、陰極と電解質技術で現在進行中の研究開発は時間経過と共に次第にコストが下がると期待されている。

 CATLBYD、パナソニック、サムスン、LG、その他のような大手企業はサプライチェーンの開発やコスト低減に数十億ドルを投資して来たため、ナトリウム・イオン電池が最初は価格面で競争することが困難になっている。ナトリウム・イオン電池は将来を約束するが、それらの実用的な可能性、再現性、費用対効果はまださらなる開発と最適化を要する。リン酸鉄リチウム・イオン電池は確かな実績を持っているが、ナトリウム・イオン電池は200 Wh/kgを超えるより高いエネルギー密度を提供すると、様々な用途に訴えることができる。技術が進化し進歩するにつれて、ナトリウム・イオン電池はより入手しやすくなり、コスト競争力も高まると期待でき、エネルギー貯蔵および輸送部門の様々な用途で実行可能な選択肢となる。

 

サプライチェーンと設備

 電池製造用のサプライチェーンを確保するという観点から、インドの会社は世界のプラットフォームから学び、コストを削減し高品質を確保するサプライチェーンを管理する個との重要性を認識している。大手インドのOEMや電池製造者(それらのある者はPLI(生産連動型インセンティブ)スキームはPLIの一部であり、彼等のサプライチェーンを積極的に監視している。鉱山および精製会社との戦略的提携により、テスラが電池用のグラファイト、コバルト、ニッケル資源を管理するためにパナソニックと協力している方法と同様に、彼等は電池生産用の必要な原料を確保することを目的としている。

 ナトリウム・イオン電池用の堅牢なサプライチェーンを確立するために、主な課題は重要な材料の調達と品質の維持にある。ナトリウム・イオン電池で使われるキー材料の硬質炭素への挑戦はヨーロッパと日本の会社、そして高品質の硬質炭素の生産に取り組んでいるインドのグループによって対処されている。これらの材料の純度と品質を確保することは、特にインドのような温度が変動する地域では、電池の反応中に膨張や樹枝状結晶生成の問題を避けることが不可欠である。

 ナトリウム・イオン電池用のサプライチェーンは現在、まだ十分に確立されていない。リチウム・イオンのサプライチェーンはより成熟しており入手し易くなっており、インドのいくつかの企業が既にリチウム・イオン・ギガファクトリーに多額の投資を行っている。一方で、ナトリウム・イオン電池はまだプロトタイプや実証段階で、ナトリウム・イオン電池用のギガファクトリーは2024年末までに近隣諸国で操業が開始される予定である。

 設備製作に関して、電池の全自動製造ラインを構築するための機械に対する高い需要がある。インドの会社はリチウム・イオン・ギガファクトリーの成長を支援する様々な諸国から機械を製造または輸入している。ナトリウム・イオン電池の需要は増加しているので、同様の努力がインドでナトリウム・イオン電池用の機器製造を確立するために行われている。およそ2025年までに、ナトリウム・イオン電池用の機器設置が進行中であり、ナトリウム・イオン電池の段階的なシェア拡大が可能であると予想される。

 

電解質とセパレーター

 ナトリウム・イオン電池用の電解質とセパレーターのサプライチェーンは次第に成熟しており、今年末までに、電解質の生産はインド外で始まり、最終的にはインドの生産能力も拡大すると予想される。

 

リチウム・イオン電池をナトリウム・イオン電池に置き換える挑戦

 様々な用途でリチウム・イオン電池をナトリウム・イオン電池に置き換えるために、業界関係者は次のような課題に対処する必要がある:

経済的なナトリウム・イオン電池の開発:ナトリウム・イオン電池は広範な採用を促進するためにリチウム・イオン電池とコスト競争力を持たなければならない。例えば、電動二輪車や三輪車の場合、コストと範囲は重要な要素である。製造者は、顧客がこれらの側面を優先するために、1回の充電での走行距離が長く、コスト効率の高い車両を提供することを目指している。

エネルギー密度への取り組み:業界は特別な用途や要求に応えなければならない。リン酸鉄リチウム・イオン電池に一致するか、それを超えるためにエネルギー密度を改善することは、市場での牽引力を得るために重要である。

大量生産とアクセス可能性:会社は生産を拡大し、OEMが自社製品にナトリウム・イオン電池を組み込むためのアクセシビリティを確保する。

技術的な障壁を越えて:硬質炭素陰極、膨張問題、そして他の製造の複雑さに関する挑戦を解決しなければならない。

安全性の確保:これはもう1つの重要な側面である。組織化されていない電気自動車製造部門では、安全基準が懸念事項となっている。ナトリウム・イオン電池は高エネルギー密度リチウム・イオン電池と比較して熱現象の影響を受けにくいので、安全性を改善できる。ナトリウム・イオン電池は比較的より熱安定性を提供できるので、極端な温度地域では特に有益である。

 

結論

 ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池に対する実行可能な代替品として計り知れない約束を示す。ナトリウム・イオン電池の開発では大きな進歩が見られたが、商用アクセスとコスト競争力は、依然として達成すべき重要なマイルストーンである。進行中の研究と業界の協力により、ナトリウム・イオン技術は、今後さらに成熟し、最終的には将来に向けて信頼性が高く持続可能なエネルギー貯蔵解決策としての地位を確立すると予想されている。