戻る

塩の代替品は腎臓病の人にとって危険か?

Are Salt Alternatives Dangerous for People with Kidney Disease?

By Kaitlin Sullivan

https://www.everydayhealth.com/      2023.07.17

 

FDA規則案では、食品生産者が食卓塩をカリウム・ベースの代替塩に置き換えることができるようになる。腎臓病の患者擁護団体は警鐘を鳴らしている。

 

 アメリカ食品医薬品局は今月初め、食品メーカーが本物の代わりに塩代替品を使用することを認める規則案を発表した。公衆衛生対策は、食品に添加されるナトリウムの量を減らすことを目的としている。

 疾病管理予防センターによると、2歳以上のアメリカ人の約90%が塩分を過剰に摂取しており、これが全米で見られる慢性疾患の負担の高さの一因となっている。提案されている代替品の1つは、カリウム塩としても知られる塩化カリウムである。ナトリウムの天然代替品は、ナトリウムの悪影響を及ぼさずに同様の風味を提供する。しかし、腎臓病患者の擁護者らは、食品にカリウムを添加する働きは慢性腎臓病患者にとって危険、さらには致命的になる可能性があると警告している。

 アメリカ腎臓患者協会、栄養・栄養学アカデミー、国立腎臓団体は、FDAが発表した直後の88日に生命を発表し、懸念を表明し、この規則案に反対を主張した。加工食品中の減塩に向けたFDAの取り組みを賞賛する一方で、「我々は国民の健康目標と、すでに医療的に複雑な国民のニーズとのバランスをちらなければならない。」と両団体は書いている。

 

腎臓病により体からのカリウムの排泄が妨げられる

 疾病管理予防センターによると、人口の約15%に相当する推定3,700万人のアメリカ成人が慢性腎臓病を抱えており、この病気は有色人種に特に影響を及ぼしているという。

 アメリカの黒人はアメリカ人口の約13%を占めている。また、ヒスパニック系アメリカ人は非ヒスパニック系アメリカ人に比べて腎不全を発症する可能性が約1.3倍高く、この人口の腎不全率は2000年以来70%上昇していると国立衛生研究所が報告している。

 腎不全を含む慢性腎臓病の多くの人々はカリウムを正常に排泄できない。このような人がカリウムを大量に摂取すると、ミネラルが血液中に蓄積する可能性がある。血液中のカリウム濃度の上昇、つまり高カリウム血症と呼ばれる状態は、異常な心拍リズムを引き起こし、さらには心臓突然死を引き起こす可能性がある。

 「腎機能が低下していることに気付いていない人々の非常に高い推定値と、高カリウム血症の臨床的影響を考慮すると、塩化カリウム代替品の形で「隠れカリウム」をアメリカ人の食生活に加えるのは、とるべきではないリスクである。」とアメリカ腎臓患者協会の声明はこう述べた。

 しかし、ニューヨーク市のNYU Langone Healthで腎臓内科の臨床主任を務めるDavid Goldfarb医師は、提案されている変更は重度の腎臓病の治療を受けている人々にのみ影響を与える可能性が高く、たとえその場合でも効果は穏やかなものになる可能性が高いと述べている。

 腎機能が低下し、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、またはスピロノラクトンと呼ばれる別の薬剤を服用している人は、体はカリウムを排泄するが、これを防ぐ薬がある。

 これらの二次薬は腸内のカリウムに結合することで作用し、血液中のカリウムを減少させる。Goldfarb博士によると、これらの薬は、カリウムの過剰摂取が危険な問題となる可能性がある薬を服用している慢性腎臓病患者にすでに一般的に処方されているという。

 「これらの人々も、このFDAの変更に関係なく、定期的にカリウム検査を受けることになるであろう。」と彼は言う。

 

集団利益はわずかな有害リスクを上回る可能性があるが、腎臓病患者は監視されるべきである

 Goldfarbは、この変更は害よりもむしろ利益をもたらす可能性が高いと主張した。「人々はナトリウムが有害であり、塩摂取量を制限する必要があることを認識している。それは特に慢性腎臓病、骨疾患、高血圧などの疾患を持つ人々に当てはまる。」と彼は言う。

 国立腎臓団体によると、塩分の過剰摂取は実際に腎臓病を引き起こす要因となる可能性がある。また、世界中で死亡者数第一位である高血圧、脳卒中、心臓病の原因にもなる。

 

塩代替品は心血管疾患と死亡のリスクを下げる可能性がある

 2021年にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたランダム化臨床試験では、中国農村部の600ヶ所の村で塩とカリウム・ベースの塩代替品の効果をテストした。この研究には年齢が60歳以上で、ほぼ全員が脳卒中、高血圧、またはその両方の病歴を有する約21,000人が参加した。参加者の半数は、75%が塩化ナトリウム、25%が塩化カリウムである塩代替品を使用していた。残りの半分は通常の塩を使った。研究者達は約5年後に追跡調査を行なったところ、塩代替品を摂取したグループの人々は脳卒中、重要な心血管イベント、あらゆる原因による死亡率が低いことが判明した。

 しかし、この研究の大きな注意点は、腎臓病を患っており、高カリウム血症になりやすくする薬を服用している人々は除外されていると言うことであった。したがって、この研究では、過剰なカリウムが高血圧、脳卒中、この集団に影響を与えるかどうかについての洞察は得られていない。

 Goldfarbはこの規則を支持しているものの、その潜在的な影響は否定しておらず、高カリウム血症になりやすくする薬を服用している慢性腎臓病患者のモニタリングが重要であると強調している。

 「腎臓病を持つ人にとって、適量のカリウムが安全である可能性はあるが、それには限界がある。」と同氏は述べ、代替塩を含む食品ではカリウム濃度が比較的低いままである可能性が高いと指摘した。塩のすべてではなく、一部を置き換える。「塩の代替品として使用できるカリウムの量は比較的少量であり、腎臓病の人にとっても必ずしも危険ではない。」