新型固体ナトリウム電池、リチウム・イオン電池に匹敵する
エネルギー密度を実現
New Solid-State Sodium Battery Offers Energy Density Comparable to Li-Ion
https://energy.umd.edu/ 2025.05.06
メリーランド大学A. James Clark工学部のWachsmanグループがACS Energy Letters誌に発表した最近の研究では、薄いNASICON(ナトリウム超イオン伝導体)二重構造を採用したナトリウム固体電池の性能が向上している。
商業的に持続可能なエネルギー貯蔵解決策に対する世界的な需要の急増を受け、ナトリウム・ベースの電池は手頃な価格で実用的な代替手段として浮上した。その魅力は、ナトリウムが地殻中に豊富に存在すること、低い酸化還元電位、そして高い理論容量にある。従来の可燃性液体電解質を固体電解質に置き換えることで、エネルギー密度の向上と安全性の向上も期待できる。ナトリウム固体電解質は液体電解質と同等の高いイオン伝導率と示す広い電気化学的安定領域を実現しているが、ナトリウム固体電解質はこれまで、従来のリチウム・イオン電池と競合するために必要なエネルギー密度を達成していなかった。
NASICON系固体電解質は、優れた化学的、機械的、および熱的安定性で際立っている。本研究では、平坦で薄く(最薄18μm)、かつ高密度なZnとMgを二重ドープしたNASICON電解質セパレーター層を、3 D多孔質-緻密二重構造で作製する方法を紹介する。1.8 mAh/cm2という高い面積容量を持つリン酸バナジウム正極と、ナトリウムを充填した多孔質NASICON陽極を組み合わせたフルセルは、室温(22 ℃)で10.8 mAh/cm2(6 ℃)という記録的な高電流密度での充放電サイクル試験に成功し、さらに1.7 mAh/cm2(1 ℃)での長期持続充放電サイクル試験も実施した。
これまでの研究では、3 D多孔質・緻密質・多孔質三層構造のNASICONを用いることで、金属ナトリウムの界面インピーダンスの限界を克服した。界面における高い表面積と相互接続された多孔性により、従来の平面アノード形状と比較して界面抵抗が数桁も大幅に低減し、局所的な電流密度を効果的に分散させ、サイクリング中の体積変化を緩和する。この電解質構造は、スタック圧力を必要とせずに高エネルギー密度の室温ナトリウム固体電池を実現することを可能にしており、バックレベルでの商業的実現可能性をさらに向上させる。
「この新たな研究では、リチウム・イオンに匹敵するエネルギー密度(最大286 Wh/g)と、低温でも高レート充放電能力を備えた完全なセルの実証に焦点を当てた。この画期的な進歩により、固体ナトリウムは送電網スケールの蓄電の候補となるだけでなく、EV用途においてリチウム・イオンと競合することを可能にする。」とWachsmanは述べている。