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独占:ナトリウム電池がエネルギー貯蔵市場を混乱させる

Exclusive: Sodium Batteries to Disrupt Energy Storage Market

https://www.energymonitor.ai/      2024.07.01

 

コストが急速に低下する中、ナトリウム・イオン電池が長期エネルギー貯蔵の未来を支配する見込みであることが、世界中の特許データに基づいて技術革新を予測するAIベースの分析で明らかになった。

 

 ナトリウム・イオン電池は、今後数年以内に長期エネルギー貯蔵市場に混乱をもたらすと、

Energy Monitorが独占的に確認したGetFocusによる新しい調査で明らかになった。GetFocusは、世界中の特許データに基づいて革新技術を予測するAIベースの分析プラットフォームである。ナトリウム・イオン電池は、他の長期エネルギー貯蔵技術よりも速いペースで進歩しているだけでなく、最も安価なディスパッチ可能な電力と同等のコストになり、2027年には主流になる見込みである。

 手頃な価格の長期エネルギー貯蔵は、太陽光や風力など、電力を安定的に生産しない再生可能エネルギー源の断続性に対処するものであり、世界のエネルギー転換にとって重要なマイルストーンとなる。ピーク生産時に生成された余剰エネルギーを貯蔵し、生産量が少ない期間や需要が高い期間に放出することで、長期エネルギー貯蔵システムは安定した信頼性の高いエネルギー供給を確保する。これは、化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーを電力網に広く統合するために不可欠である。

 GetFocusは、マサチューセッツ工科大学の研究にヒントを得た定量的手法を使用して、テクノロジーのどの部分がどれだけ急速に進歩しているか、そしてそれが市場を混乱させるかどうか、またいつそうなるかを予測できる。このシステムは、世界中の特許データを使用して、テクノロジーの「サイクル・タイム」(テクノロジーが新しい世代を生み出すのに何年かかるか)を計算できる。これらの指標を使用して、GetFocusは「テクノロジー改革率」を計算する。これは、1年間にテクノロジーの分野から期待できる1ドル当りのパフォーマンスの平均増加率を表す。

 「基本的に、問題を解決するのがどれだけ難しいかを測定できる。」とGetFocusのオペレーション責任者であるKacper Gorskiは言う。

 

エネルギー送電網全体にわたる多目的オプション

 ナトリウム電池技術は、エネルギー密度などの分野で、20年前のリチウム・イオン電池と同様の改善を経験している。関連するコスト削減により、この新興技術は遅くとも2023年までに長期エネルギー貯蔵の競争力のある解決策になる予定であると、この調査は示している。

 30種類の長期エネルギー貯蔵技術を分析した結果、ナトリウム・イオン電池は2024年には約57%という急速な改善率により、最も有望であることが分った。ナトリウム・イオン電池は往復のエネルギー使用の効率が高く、運用の柔軟性が高く、貯蔵および供給中のエネルギー損失が少ないという利点がある。急速な改善率により、エネルギー密度が向上し、貯蔵エネルギー単位当りのコストが削減され、大規模な運用でもエネルギー送電網全体で汎用性の高いオプションとして位置付けられる可能性が高いと、報告書は述べている。

 2024年のナトリウム・イオン電池の平均コストは1 kWhあたり87ドルで、89ドル/kWhのリチウム・イオン電池よりもわずかに安価である。リチウム・イオン・ベースの電池エネルギー貯蔵システムの設備投資コストが300ドル/kWhと同程度であると仮定すると、ナトリウム・イオン電池の57%の改善により、ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池よりもますます手頃な価格になり、2028年までに約10ドル/kWhに達するであろう。

 GetFocusによると、再生可能エネルギー用途の送電網規模の長期エネルギー貯蔵で電池エネルギー貯蔵システムが経済的に実行可能となるには、約50ドル/kWhのコストを達成することが不可欠である。「エネルギー貯蔵が、ガス火力発電所などのディスパッチ可能な電源を使用するコストと一致する時点でアルミニウム。」とGorskiは説明する。

 確かに、他の形態の長期エネルギー貯蔵と比較すると、電池はエネルギーを貯蔵する最良の方法であるとGorskiは言う。「圧縮空気エネルギー貯蔵のようなインフラと比較すると、新世代の電池を信じられないほどの迅速に開発できる。」と彼は言う。「化学反応をかなり迅速に微調整でき、小規模で実行して、必要な貯蔵要件に合わせて増強できるとかなり確信できる。

 「しかし、長期エネルギー貯蔵は、少々「場当たり的」である」と彼は警告する。「特定の場所では、相変化や圧縮空気エネルギー貯蔵など、より魅力的な他の解決策がアルミニウムかもしれない。」

 報告書によると、住友電気工業、日立製作所、ユアサ電池がナトリウム・イオン電池技術の開発をリードしていると報告書は述べている。これらの企業はまだ技術を商業化していないが、中国の電池メーカー、Great Powerは昨年、データ・センターに電力を供給する50 MW/100 MWhの長期エネルギー貯蔵プロジェクトを発表し、ナトリウム・イオン電池がすでに長期エネルギー貯蔵に検討されていることを実証した。

 「中国はおそらくナトリウム・イオン電池の生産をリードするであろう。」とGorskiは付け加える。「ヨーロッパとアメリカは電池生産の危険性を受け入れていない」。先週、韓国のリチウム・イオン電池工場で火災が発生し、22人が死亡、8人が負傷した。

 

国民に力を

 しかし、ナトリウム・イオン技術の優位性は、まだ保証されているとは言えない。メーカーは、エネルギー密度と往復効率を向上させるためにまだ取り組むべき課題を抱えており、電池の寿命とライフサイクル性能の向上も目指した開発は進行中である。

 生産に関しても不明な点がある。」とGorskiは付け加える。「我々は、リチウム・イオン電池生産施設をナトリウム・イオン電池生産施設に変えても、それほど問題がないと考えている。」

 しかし、この技術の運命の多くは政策立案者の手に委ねられており、中国とアメリカがどのようにして生産を奨励するかに注目が集まっている。Gorskiは、バイデン大統領が次のアメリカ選挙で2期目に当選すれば、長期エネルギー貯蔵が促進され、エネルギー転換の加速が政権の重要な優先事項になると予測している。

 「この技術を真剣に考えるなら、確実に貯蔵できる膨大なメガワットが必要になる。ヨーロッパでは、このエネルギーを9ヶ月間貯蔵する必要がある。ナトリウム・イオンのコストが下がると予測されているため、この目的には非常に魅力的である。」とGorskiは言う。

 全体として、ナトリウム・イオン電池はコンパクトなフットプリントと再生可能エネルギー源とのコスト効率の高い統合により、さまざまな用途で主要な長期エネルギー貯蔵技術として位置付けられであろう。その汎用性、風力発電所や太陽光発電所の近くなどのメーター前とメーター後の両方に適用できることから、今後数年間で長期エネルギー貯蔵市場に革命を起こす準備が整っていると研究者達は指摘している。

 しかし、この技術にはもう1つのスーパー・パワーが秘められているかもしれない。Gorskiは、この技術が将来、電力を真に民主化する可能性があると考えている。最終的には、各家庭が屋根のソーラーパネルとガレージや庭のナトリウム・イオン電池を結ぶ付け、真のエネルギー自給自足を実現できるようになるであろう。

 「平均的な消費者にとって納得のいく形でパッケージ化できれば、消費者は突然、地政学的な要因やエネルギー価格の変動にあまり依存しなくなるであろう。未来は非常に明るい。10年以内にそうなるかもしれない。」