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ナトリウム・ベースの電池はリチウムの逼迫を解決できる

Sodium-Based Batteries Could Solve the Lithium Crunch

By Grace Donnelly

https://www.emergingtechbrew.com/        2022.08.01

 

リチウムは電池技術に関して最も注目を集めているが、周期表の階下の隣人は最終的にそれを置き換える可能性がある。ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池と比較して、サプライチェーンの頭痛の種なしに、より広い範囲の用途で同様の性能を達成できることを示唆する技術の進歩により注目を集めている。S&P Global Commodity Insightsによると、電池の需要の高まりによりリチウムの価格は急騰しており、昨年と比較して450%近く上昇している。一方、ナトリウムは「ほぼ無制限の供給量を持っている。」と電池研究のパイオニアであり、ナトリウム電池のブレークスルーに関する最近のDOEラボレポートの筆頭著者であるJason ZhangEmerging Tech Brewに語った。

他の電池化学と同様に、ナトリウム・イオンには独自のトレードオフがある。また、CALTのような一部の企業は短期的な商業化を検討しているが、Zhangは、この技術が成熟に達し、生産が拡大するには数年かかると述べた。

 

安定した塩

ナトリウムはリチウム・イオン電池に使用される金属よりも豊富であるため、安価で環境に優しい供給源にある。地球の地殻中のナトリウム濃度はリチウムの野菜・果物食500倍であり、海水から抽出することもできる。また、ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池よりも不燃性で温度変化の影響を受けにくいため、安全である。

最大の欠点は、ナトリウム・イオン電池がリチウム・イオン電池よりもエネルギー密度が低いことである。つまり、標準的なリチウム・イオン電池と同じサイズのナトリウム電池を搭載した電気自転車は、1回の充電で遠くまで移動することはできない。そして、問題をより困難にするために、同じスペースにより多くの電圧を詰め込むと、ナトリウム・イオン電池はより速く故障する。

DOEの太平洋北西部国立研究所のZhangと彼のチームを含む研究者達は、ナトリウム・イオン電池の寿命を延ばし、エネルギー密度を向上させて、今日のリチウム・イオン電池に匹敵する性能を達成することに取り組んでいる。彼等が6月に発表した研究は、その目標を現実に一歩近付けた。Zhangと太平洋北西部国立研究所チームは、以前の反復よりも寿命を延す材料の組み合わせでナトリウム・イオン電池を開発した。

新しい電池の主な違いは、電解質(電池の負のアノード側と正のカソード側の間にある部分で、セルがエネルギーを充放電するときにイオンを前後に通過できるようにする部分)である。電池がその耐用年数の終わりに達すると、それらのイオンを流し続ける電気化学反応は遅くなり、電池の再充電が妨げられる。このプロセスは、現在のナトリウム・イオン電池ではリチウム・イオン電池よりもはるかに迅速に行われる。

太平洋北西部国立研究所チームは、異なる液体溶液と特定の種類の塩が、以前に報告されたほとんどのナトリウム・イオン電池よりも長いライフサイクルを可能にする新しい電解質を作り出すことを発見した。「ナトリウム電池の場合、電圧を上げると、電解液の安定性がはるかに低下する。したがって、この研究の結論は、高電圧でも非常に安定した電解質を開発したことである。」とZhangは述べている。

 

将来を見据えて

中国の電池大手CALTは、早ければ来年にもナトリウム・イオン電池の製造を開始する可能性があり、多くのスタートアップもナトリウム・イオン生産の製造能力の向上に取り組んでいる。イギリスに本拠を置くFaradionは、2011年からナトリウム電池に注力してきた。中国のHiNa Battery Technology、フランスのTiamat、スエーデンのAltris AB、アメリカのNatron Energyもナトリウム・イオン電池を商品化している。

短期間には、ナトリウム・イオン電池は、定置型蓄電のようなより低いエネルギー密度でより長持ちする電池を必要とする用途に使用でき、電気自動車に必要なリチウム・イオン電池の原材料の供給制約の一部を緩和する可能性がある。

研究者達はナトリウム・イオン電池のエネルギー密度の安定性の向上に向けて引き続き努力する、とZhangは述べた。一部の専門家達によると、ナトリウム電池技術が完全に開発されれば、エネルギー貯蔵システムとともに軽量電気自動車に電力を供給することができるはずである。

太平洋北西部国立研究所チームはまた、ナトリウム・イオン電池のアノードとカソードの改善にも注力している、とZhangは語った。目標は陽極を改善し、陰極中のコバルトを除去できる材料を特定することである。しかし、この新しいナトリウム電池を実験室から商業生産に移すには、5年から10年かかる可能性がある、とZhangは推定した。同氏は実験室にはまだ商業パートナーはいないが、技術を商業化するために「積極的に業界パートナーを探している。」と述べた。

「ナトリウム電池には依然としてかなりの作業が必要である。だから我々は、これがすぐに使える技術だと人々に思われたくない。」と彼は言った。