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プリンストン大学、画期的なナトリウム・イオン正極材料を発表

Princeton University Announces Breakthrough Sodium-Ion Cathode Material

By Carla Westerheide

https://www.electrive.com/    2024.02.24

 

ナトリウム・イオン電池は、リチウム・イオン電池のコスト効率の高い代替品となる可能性がある。しかし、エネルギー密度は依然として低い場合が多いのが現状である。プリンストン大学によると、研究者達は、リチウム・イオン正極を上回る性能を発揮する可能性のある高エネルギー・ナトリウム・イオン正極を発見した。

 

 ナトリウム・イオン電池は、リチウムとは異なり入手しやすく安価で非常に安全な、重要度の低い原材料と考えられているため、電動自転車にとって興味深い材料である。さらに、サプライチェーンはアジア企業に支配されていない。

 ニュージャージー州プリンストン大学の研究者は、ナトリウム・イオン電池の分野で重要な進歩を遂げたと発表した。フォルクスワーゲン傘下のイタリアのスポーツカー・ブランド、ランボルギーニからの資金援助を受け、Mircea Dincă教授率いる研究チームは、「有機の高エネルギー正極材料を用いてナトリウム・イオン電池を製造する画期的な代替材料の開発に成功した。これにより、この技術が安全で安価、かつより持続可能な部品を用いて商業化される可能性が高まった。」

 Dincă教授らが今回発表した正極材料は、ビステトラアミノベンゾキノン(略称TAQ)と呼ばれる層状有機固体で、「真にスケーラブルな技術において、エネルギー密度と出力密度の両方において従来のリチウム・イオン正極を凌駕する。」とされている。

 Dincăの研究室は昨年、TAQを用いたリチウム・イオン電池を発表しており、それ以来、この技術をナトリウム・イオン電池に適用し、最適化する研究に取り組んできた。

 「我々が選択したバインダーであるカーボン・ナノチューブは、TAQ微結晶とカーボン・ブラック粒子の混合を促進し、均質な電極を実現する。」と、Dincăグループの博士号を持ち、本論文の筆頭著者であるTianyang Chenは述べている。「カーボン・ナノチューブはTAQ微結晶を密着して包み込み、それらを相互に連結する。これらの要因はいずれも電極内部の電子輸送を促進し、活物質の利用率をほぼ100%に高め、理論上ほぼ最大の容量を実現する。」これは、とりわけ充電性能の向上につながるはずである。

 「電池のような重要な資源が限られていることの難しさは誰もが理解している。リチウムは確かにさまざまな意味で「限られている」と言えるであろう。」とMircea Dincăは述べた。こうした材料については、多様なポートフォリオを持つことが望ましい。「ナトリウムは文字通りどこにでもある。我々にとって、有機物と海水といった非常に豊富な資源から作られた電池の開発は、最大の研究目標の1つである。」

 この電池研究者は次のように付け加えた。「エネルギー密度は、電池の容量と同義であるため、多くの人が関心を寄せるものである。エネルギー密度が高いほど、充電せずに車を走らせる距離が長くなる。我々が開発した新素材は、1 kg当たりのエネルギー密度で世界最高であり、体積比でも市場最高の素材に匹敵すると、我々は断言している。」

 ランボルギーニの資金提供を受けた同研究所の論文「層状有機正極を用いた高エネルギー・高出力ナトリウム・イオン電池」は今月、アメリカ化学会誌(JACS)に掲載される。