アメリカの研究者達はナトリウム・イオン電池のエネルギー密度を向上
US Researchers Increase Energy Density of Sodium-Ion Batteries
By Chris Randall
https://www.electrive.com/ 2024.02.29
アメリカエネルギー省のアルゴンヌ国立研究所の研究者達が、ナトリウム・イオン電池用の新しいカソード材料を開発し、特許を取得した。これにより、他のナトリウム・イオン電池よりも大幅に高いエネルギー密度が実現されるはずであるが、リチウム・イオン技術に比べるとまだやや遅れている。
アルゴンヌ国立研究所が開発したのは、ナトリウム・イオン電池用のおなじみのNMCカソードを改良したナトリウム・ニッケル・マンガン・鉄酸化物である。他のナトリウム・イオン技術と比較して、このカソードははるかに高いエネルギー密度を提供し、電気自動車の1回の充電で約180~200マイル(290~320 km)の走行距離を実現するのに十分である。
NMCカソードでは、原子が層状に配列されている。この構造により、層間でのリチウム・イオンの挿入と抽出が容易になる。ナトリウム・イオン電池に関する合計10年間の研究成果に基づき、上級化学者Christopher Johnson率いるテームは、ナトリウム・イオン電池専用の層状酸化物カソードを開発した。
NMFカソードは耐用年数も向上
アルゴンヌ国立研究所のプレス・リリースによると、NMFカソードの層状構造により、ナトリウム・イオンの効率的な挿入と抽出が可能になるはずである。また、カソード材料にはコバルトが含まれていないため、「この元素に関連するコスト、希少性、毒性の懸念」も軽減されるはずである。
研究者達は、以前のナトリウム・イオン電池のもう1つの欠点である寿命の短さも解消したいと考えている。新しいカソード材料により、ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池と同等の充放電サイクル数を達せいできる。「我々は現在、実験室段階から移行しており、実際の電気自動車の電池に似た電池セル内でカソードをテストする準備ができている。」とJohnsonは言う。これらのテストは、アルゴンヌのセル分析、モデリング、およびプロトタイピング施設で実施される。
電池材料としてのナトリウムの利点は良く知られている。ナトリウムは自然界にはるかに豊富に存在し、リチウムよりも採掘が容易である。その結果、1 kg当たりのコストはリチウムの数分の1で、価格変動やサプライチェーンの混乱の影響をはるかに受けにくい。「我々の推定では、ナトリウム・イオン電池のコストはリチウム・イオン電池の3分の1以下になるであろう。」とJohnsonは言う。さらに、カソード材料にはナトリウムのほかに主に鉄とマンガンが含まれている。
これは研究チームが物理的にある解決できない問題である。金属ナトリウムはリチウムの約3倍の重さがある。そのため電池の重量が増加し、航続距離が短くなる。Johnsonは、ナトリウム・イオン電池は長距離走行を求める人には魅力的ではないかもしれないが、価格に敏感な消費者、特に毎日の通勤距離が300 kmを超えることがほとんどない都市部の住民を引き付ける可能性があると強調している。
カソードのエネルギー密度が高まったこと、アメリカの研究者達はすでにナトリウム・イオン電池をより多くの自動車分野で魅力的なものにするための重要な一歩を踏み出している。プレス・リリースによると、Johnsonのチームはすでに、電池の残りの2つの主要コンポーネントである電解質とアノード用の新素材を開発しており、エネルギー密度をさらに高めようとしている。