ナトリウム・イオン電池のもう1つの欠陥を解消
Eliminating Another Flaw in Sodium-Ion Batteries
By Steve Bush
https://www.electronicsweekly.com/ 2025.01.14
アルゴンヌ国立研究所は、大きなナトリウム・イオンが前後に動くことで構造的な損傷を受けるナトリウム・イオン電池の故障モードの1つを解明した。
研究対象となったのは、遷移金属コアシェル粒子(ニッケルを多く含むコアをコバルトとマンガンを多く含むシェルで囲んだ粒子)から作られたナトリウム・イオン酸化物カソードである。
「マンガンを多く含む表面は、充放電サイクル中に粒子に構造的安定性を与える。」と研究室は述べている。「ニッケルを多く含むコアは、高いエネルギー貯蔵容量を提供する。」
サイクル中にエネルギー貯蔵容量は着実に低下したが、これは粒子内のシェルとコアの間に生じる歪みによりカソード粒子に亀裂が生じたことによるものと絞り込まれた。
さらに研究を進めると、これらの亀裂は粒子の奥深くで発生しており、予想されていたように表面で発生しているわけではないことが明らかになった。また、亀裂を止める方法も明らかになった。
上記の2つの文は、この発見に要した膨大な研究努力を裏切るものである。この発見には、他の機器の中でも特に世界最強のシンクロトロン2台と、そのデータを解析するために世界トップの50のスーパーコンピューター、つまりアルゴンヌ国立研究所のAdvanced Photon Source、ブルックヘブン国立研究所のNational Synchrotron Light Source ll、アルゴンヌ国立研究所のPolarisコンピューターが必要であった。
「カソード合成中に亀裂を防ぐことは、後でカソードを充電および放電するときに大きな利益をもたらす。」とアルゴンヌ国立研究所の化学者Gui-Liang Xuは述べた。
一見シンプルであるが亀裂のないカソード粒子は、400回の動作サイクルで貯蔵容量が失われることなく、製造に使用した熱処理の変更によって生まれた。
コアシェル・カソード粒子は、水酸化物前駆体を最高600℃の温度で加熱することによって作られる。
5℃/分の加熱速度で、わずか250℃でコアとコアシェル境界に亀裂が生じ、1℃/分という異常にゆっくりと加熱することで、堅牢な粒子が生成される。
「将来のナトリウム・イオン電池の見通しは非常に明るいようである。低コストで長寿命なだけでなく、現在、多くのリチウム・イオン電池に使用されているリン酸鉄リチウム電池正極に匹敵するエネルギー密度がある。これにより、走行距離の長い電気自動車が実現するであろう。」とアルゴンヌの電池チームリーダーKhalil Amineは語った。
研究所で計画されている今後の作業には、正極からニッケルを排除することでコストを削減し、持続可能性を高める試みも含まれている。
アメリカ政府のナトリウム・イオンへの資金提供
アメリカエネルギー省は、5年間で5000万ドルを投じて「LENS」と呼ばれる組織を設立した。これは、地球に豊富に存在する低コストのナトリウム・イオン貯蔵コンソーシアムでる。
アルゴンヌが主導するこの組織は、ブルックヘブン、ローレンス・バークレイ、パシフィック・ノースウエスト、サンディアのアメリカ国立研究所、およびSLAC国立加速器研究所が含まれる。
「今後の課題は、ナトリウム・イオンのエネルギー密度を改善して、まずリン酸ベースのリチウム・イオン電池に匹敵し、次にそれを上回るようにすることであり、同時にすべての重要な要素の使用を最小限に抑え、排除することである。」と、アルゴンヌの「エネルギー貯蔵科学共同センター」のリーダーでもあるコンソーシアム・ディレクターのVenkat Srinivasanは述べた。「如何なる改善も、サイクル寿命や安全性などの他のパフォーマンス指標を損なってはならない。」
LENSには、フロリダ州立大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校、ヒューストン大学、イリノイ大学シカゴ校、メリーランド大学、ロードアイランド大学、ウィスコンシン大学マディソン校、バージニア工科大学の8つの大学がパートナーとして参加している。
カソード研究の詳細は、Nature Nanotechnologyの論文「欠陥のない層状遷移金属酸化物カソードに向けたマイクロストレイン・スクリーニング」に記載されている。