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       ナトリウム・イオン電池:リチウム・イオン電池の有望な代替品

Sodium-Ion Batteries: Promising Alternative to Lithium-Ion Batteries

By Boby Khobragade

https://e-vehicleinfo.com/       2023.10.03

 

ナトリウム・イオン電池

 電池は我々の日常生活に欠かせないものとなり、スマートフォンから電気自動車に至るまであらゆるものに電力を供給している。リチウム・イオン電池は、その高いエネルギー密度と長いサイクル寿命により、長い間市場を支配してきた。しかし、より持続可能で、手頃な価格で、豊富なエネルギー貯蔵解決策に対する需要により、代替電池技術の探求が行なわれている。ナトリウム・イオン電池は、これらの課題に対処する有望な候補として浮上している。

 よりクリーンで持続可能なエネルギー解決策への需要が高まっている中、研究者やエンジニアは電池技術の革新を常に模索している。近年大きな注目を集めている革新技術の1つがナトリウム・イオン電池技術である。

 ナトリウム・イオン電池は確立されたリチウム・イオン電池に代わる有力な代替品である。これらは電池環境を多様化するための広範な取り組みの一環であり、独自の利点を提供し、従来のリチウム・イオン技術に伴う制限の一部に対処する。

 

ナトリウム・イオン電池の化学

 ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池で使用されるリチウム・イオンの代わりに、電荷担体としてナトリウム・イオンを使用する。基本的な動作原理は同様で、正の正極と負の負極の間でのイオンの移動が関係する。

 「ナトリウム・イオン電池」は従来の化学物質のような特定の化合物や化学式ではない。代わりに、ナトリウム・イオンを電荷担体として使用する一種の電池技術を指す。このナトリウム・イオンはプラスとマイナスの間を移動する。

充電および放電サイクル中の電池内野電極。

 

化学成分

正極:カソードは正極であり、通常、充電中にナトリウム・イオンを受け入れ、放電中にナトリウム・イオンを放出できる化合物が含まれている。ナトリウム・イオン電池の一般的な正極材料には、コバルト酸化ナトリウム(NaCoO2)、リン酸鉄ナトリウム(NaFePO4)、およびその他のナトリウム・イオン・ベースの化合物が含まれる。

負極:アノードは負極であり、通常、充電中にナトリウム・イオンを貯蔵または挿入し、放電中にナトリウム・イオンを放出できる材料が含まれている。ナトリウム・イオン電池の一般的な負極材料には、硬質炭素(グラファイト状材料)やその他のナトリウム層間化合物が含まれる。

電解質:電解質は正極と負極の間でナトリウム・イオンの移動を可能にする導電性媒体である。通常、溶媒に溶解したナトリウム塩である。

セパレーター:セパレーターは、正極と負極を物理的に分離し、ナトリウム・イオンの流れを許可しながら短絡を防止する多孔質膜である。

 ナトリウム・イオン電池に関与する化学反応は複雑で、正極と負極の間のナトリウム・イオンの移動や、電極材料内の酸化還元反応が含まれる。

 

負極材料

  硬質炭素:硬質炭素材料は、石油コークスやその他の炭素源から得られることが多く、ナトリウム・イオン電池の負極として一般的に使用される。これらの材料はナトリウム・イオン貯蔵能力が高く、充電中のナトリウム・イオンのインターカレーションに対応できる。

  チタン酸ナトリウム:チタン酸ナトリウム(Na2Ti3O7)やチタン酸ナトリウム・ナノチューブなどの材料は、一部のナトリウム・イオン電池設計で負極材料としても使用される。優れたサイクル安定性とナトリウム・イオン貯蔵能力を備えている。

  リン系化合物:リン酸鉄ナトリウム(NaFePO4)などのリン系化合物は、理論容量と安全性が高いため、負極材料として研究されてきた。

 

正極材料

  ナトリウム・コバルト酸化物(NCO):ナトリウム・コバルト酸化物(NaCoCO2)は、ナトリウム・イオン電池の一般的な正極材料である。充電および放電サイクル中にナトリウム・イオンを可逆的に貯蔵および放出できる。しかし、比較的高価で量が少ない元素であるコバルトが含まれる場合がある。

  リン酸鉄ナトリウム(NFF):負極材料としての使用と同様に、リン酸鉄ナトリウム(NaFePO4)もナトリウム・イオン電池の正極材料として使用される。

  プルシアン・ブルーとその誘導体:プルシアン・ブルー(ヘキサシアノ鉄酸塩ナトリウム鉄)とその誘導体は、ナトリウム・イオン電池で使用される別の種類の正極材料である。高いサイクリング安定性と安全性で知られている。

  リン酸バナジウム・ナトリウム:一部のナトリウム・イオン電池は、電気化学的性能が優れているため、リン酸バナジウム・ナトリウム化合物(Na3V2(PO4)3など)をベースにした正極を使用する。

 

なぜリチウム・イオン電池ではなくナトリウム・イオン電池などのか?

 リチウム・イオン電池に対するナトリウム・イオン電池の潜在的な利点のいくつかは次の通りである:

1豊富なナトリウム:ナトリウムは地球上で最も豊富な元素の1つであり、その入手可能性はリチウムほど限定されていない。

これにより、ナトリウム・イオン電池の原材料のコスト効率が向上し、電池全体のコストが削減される可能性がある。

2コストの削減:前述したように、豊富なナトリウムは材料コストの削減に貢献する。さらに、ナトリウム・イオン電池は、より安価な電解質の使用やより安価な正極材料の使用など、簡素化された製造プロセスの恩恵を受ける可能性があり、これによりさらにコストを削減できる。

3環境への影響の低減:ナトリウム・イオン電池は、リチウム・イオン電池に比べてナトリウムが豊富に含まれており、サプライチェーンへの懸念が少ないため、環境への影響が少ない可能性がある。しかし、全体的な環境への影響は、原材料の採掘や抽出などの要因にも依存する。

4安全性:ナトリウム・イオン電池は一般にリチウム・イオン電池よりも安全であると考えられている。これは主にナトリウムの反応性が低く、熱暴走や火災のリスクが低いためである。この改善された安全性プロファイルは、安全性が最優先される用途に有利である。

5大規模なエネルギー貯蔵:ナトリウム・イオン電池は、その費用対効果と安全性により、太陽エネルギー貯蔵に応用される可能性がある。これらは送電網エネルギー貯蔵、再生可能エネルギーの統合、配電ネットワークの安定性に使用できる。

6既存のインフラストラクチャーとの互換性:ナトリウム・イオン電池は、リチウム・イオン電池に使用される既存の製造およびインフラストラクチャーと互換性があるように設計される場合がある。これにより、新しい電池技術へのスムーズな移行が促進される。

 

ナトリウム・イオン電池に取り組む企業

CATL ( Contemporary Amperex Technology Co. Ltd.) 

 CATLはリチウム・イオン電池で知られる中国の著名な電池メーカーである。彼等はリチウム・イオン技術の代替品としてナトリウム・イオン電池の研究開発に投資してきた。

東芝

 東芝はナトリウム・イオン電池開発のパイオニアである。彼等はナトリウム・イオン電池技術を進歩させるための研究努力を発表した。

ファラディオン

 イギリスに本拠を置く企業ファラディオンはナトリウム・イオン電池の開発に取り組んでおり、研究開発プロジェクトへの資金提供を受けている。いくつかの報道によると、有名なインドのグループ、Reliance Industriesはファラディオンの買収に13,500万ドルを支払った。

サクラ電池

 日本の企業であるサクラ電池もナトリウム・イオン電池の研究開発に取り組んでいる。

Ionic Materials

 アメリカに本拠を置く企業であるIonic Materialsは、ナトリウム・イオン電池を含むさまざまな種類の電池用固体電解質材料の研究開発を行なっている。

Ilika

 イギリスに本拠を置く材料会社Ilikaは、ナトリウム・イオン電池などのエネルギー貯蔵用途向けの先端材料の研究に取り組んでいる。

 

ナトリウム・イオン電池とリチウム・イオン電池の比較

項  目

ナトリウム・イオン電池

リチウム・イオン電池

原材料の豊富さ

ナトリウムはより豊富にある

リチウムはそれほど豊富にない

コスト

豊富なナトリウムのために一般的に安くなると期待される

コバルトのような材料がリチウム・イオン電池をより高価にする

エネルギー密度

通常、エネルギー密度が低く、電気自動車の航続距離に影響を与える可能性がある

より高いエネルギー密度により、電気自動車のより長い航続距離が可能になる

サイクル寿命

従来、ナトリウム・イオン電池のサイクル寿命は短かったが、改良が加えられている

リチウム・イオン電池は通常、サイクル寿命が良好である

安全性

ナトリウムはリチウムに比べて反応性が低いため、より安全であると考えられている。熱暴走のリスクが軽減される

通常は安全であるが、損傷したり乱用したりすると熱暴走を起こしやすくなる

環境への影響

ナトリウムが豊富に含まれており、サプライチェーンへの懸念が少ないため、環境への影響が低下する可能性がある

リチウムの採掘と抽出による環境への影響への懸念がある

充電速度

充放電速度は材質によって異なるが、リチウム・イオン電池よりも遅くなる場合がある

リチウム・イオン電池は多くの場合、より高速な充電機能を備えている

用途

大規模なエネルギー貯蔵、送電網用途、電気自動車の可能性

電気自動車、携帯型電子器機、エネルギー貯蔵システムで広く使用されている

研究開発

性能、エネルギー密度、サイクル寿命を向上させるための積極的な研究

パフォーマンスと安全性を向上させるための継続的な研究