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将来の蓄電池:リチウムの代わりにナトリウム

The Batteries of the Future: Sodium instead of Lithium

By Alexander Freund

http://www.dw.com より  2020.08.27

 

 ナトリウム・イオン再充電可能な電池はやがて安くなり、現在のリチウム・イオン電池に対して資源節約代替品となる。強力なプロトタイプと基礎研究における画期的な発見により、突破口が差し迫っているように見える。

 電気自動車、特に再生可能な電池との組み合わせは将来に気候に優しいモデルとして世界的に認められている。しかし、再充電可能な電池で希少で高価な金属リチウムの使用に長年焦点を当ててきたことが、世界中で自動車の大規模な電化を遅らせてきた。電気自動車、商用車、電動自転車が普及してきたが、限られた範囲、高価、面倒な充電インフラストラクチャーそして資源集約的な電池生産は急速な展開を遅らせている。電気自動車をより普及させるために、電池はもっと強力で耐久性で持続でき、コスト効果がなければならない。

 

リチウムの代わりにナトリウム

 その解決法はナトリウム・イオン電池である可能性があり、その開発は最近驚くべき進歩を遂げてきた。予見できる将来に、ナトリウム・イオン電池は電気自動車だけでなくスマートフォンやラップトップでも現在使われているリチウム・イオン電池に置き換えられるであろう。2つのアルカリ金属であるリチウムとナトリウムは化学的に非常に似ている。ナトリウムは比較的希なリチウムのエネルギー密度を持っていないけれども、ナトリウムは幅広く安価に利用できる。

 

画期的な展望

 しかし、現在、ナトリウム・イオン電池の性能は約20年リチウム・イオン電池の性能に遅れている。数十年間、研究はより強力なリチウムだけに集中されてきた。しかし、今や画期的な科学出版物だけでなく、非常に有望なプロトタイプまである。

 韓国のナトリウム・イオン電池は、20205月の発表によるとその能力が80%まで低下するまでに約500回完全に再充電出来るように管理した。アメリカ-中国の研究グループによって考案された僅かに異なった化学構造を持つ電池は同様の充電能力を持って450回の再充電を達成した。そして中国のナトリウム・イオン電池は僅かに能力が低いが、12分間の急速充電を1,200回した後でもその能力の70%をまだ維持していた。

 これが全てではないかも知れないが、実際には、これらの電池は多分、もっと何回も充電できるであろう。毎日、電池寿命は部分的にしか放充電しない傾向があるからだ。実験で電池の完全な充電と放電はずっと大きなストレスを与える。

DW Infographic: The world's largest lithium reserves

 さらに、ナトリウム・イオン電池技術は希少な資源を使わない。陽極の生産は希少なリチウム塩を必要としない;単なる食卓塩で十分である。強力な陰極は褐炭、木材、そして他のバイオマスから作られる。コバルトまたは同様の希少な物質も必要でない。

 

多層溶液

 しかし、ナトリウムは2つの欠点がある。1つは、リチウムは電池総重量の5%以下であるため、ナトリウムはリチウムよりも3倍重いので、ナトリウム・イオン電池も重くなる。さらに、ナトリウム・イオン電池はセル電圧が0.3ボルト低いため、必然的にエネルギー密度の約10%を失うので、能力が低くなる。これは今まで電池で使われてきたグラファイト陰極がほとんどナトリウムを吸収しないという事実に大部分負っている。

 しかし、ナノスケールの炭素が救済策を提供する可能性がある。これはヘルムホルツ・センター・ドレスデン-ローゼンドルフ(HZDR)によって率いられているドイツ-ロシア作業グループによる研究で示されている。グラフェンの二重層、すなわちウエハのように薄い炭素はこれまで使用されたグラファイトよりも陰極でかなり多くのナトリウム原子を貯蔵できることを研究は示唆している。グラフェン電解質が今日一般的に使われているグラファイト陰極の代わりにリチウム・イオン電池に組み込まれれば、かなり高い貯蔵能力を達成できるかもしれない。

 「それは2枚の紙の間に小さなボールを置くようなものである。」とHZDRの物理学者アルカディ・クラシェニニコフ博士は説明する。「どんどんボールを詰め込めば、紙のシートが押し離され、それらの間の空間が大きくなる。」

 

可能性のある新しいはずみ

 多層蓄電がリチウムに適用できれば、ナトリウムのような他のアルカリ金属にも適用できるだろうか?ドレスデン、スットットガルトそしてロシアの研究グループは複雑なスーパーコンピューター・シミュレーションを使ってこの疑問に取り組んだ。そして彼等の計算は、リチウムのようにナトリウムは、炭層としてだけでなく、他の層の上に何層もグラフェン・シートの間に置けることを示した。したがって、グラフェン電解質が、現在一般的に使われているグラファイト陰極の代わりに将来ナトリウム・イオン電池に組み込まれると、かなり高い蓄電能力を達成できる可能性もある。

 Molecular model: Sodium between two graphene layers

2つのグラフェン層の間に多くのナトリウム包含が可能である

 これらの結果は低コストのナトリウム・イオン電池用の将来の陰極開発の突破口となる可能性がある。「我々の研究は純粋に理論的な性質のものであり、新しい電池世代は我々の結果に基づいて近い将来に開発されるとは我々は主張しない。しかし多分、我々の結果は技術者達に何らかの新しい興味深い考えを与える。」とクラシェニニコフは強調する。

 

将来の電池

 したがって幸いにも、ナトリウム・イオン電池はもはや理論的な概念だけではない。それが実際的な現実になることが見える突破口が今にも起こりそうである。最近の研究結果は、高価なリチウム・イオン電池に対して既に具体的で入手可能な資源節約代替品があり、それらの性能が多層蓄電によって大きく増加される可能性があることを示している。

 ナトリウム・イオン電池が技術的に完成の段階に到達し、大量に生産され、電気自動車や携帯電話に組み込まれる前に確かに時間を要する。しかし、達成されると、関係する技術がかなり似ているため、リチウムからナトリウム・イオン電池への転換はほとんど問題がないはずである。