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ディンカ研究所、新電池技術に向けた高性能ナトリウム・イオン

正極を実証

Dincă Lab Demonstates High-Performance Sodium-Ion Cathode for

New Battery Technology

By Wendy Plump

https://chemistry.princeton.edu/         2025.02.18

 

数十年にわたり、科学者達はリチウム・イオン電池への依存を打破する方法を模索してきた。これらの従来型の充電式電池は、ノートパソコンから携帯電話、電気自動車に至るまで、今日最も普及している家電製品に電力を供給している。しかし、原料のリチウムは高価であり、脆弱な地政学的ネットワークを通じて調達されることも少なくない。

 今月、ディンカ・グループは、有機の高エネルギー正極材料を用いてナトリウム・イオン電池を製造する画期的な代替技術を発表した。これにより、この技術が安全で、より持続可能な部品を用いて商品化される可能性が高まる。

 

 科学者達はナトリウム・イオン電池の開発において一定の進歩を遂げてきたが、そのエネルギー密度の低さが大きな課題となっている。サイズに対して電池の駆動時間が短い。また、出力に関係する高い電力密度も性能に影響を及ぼす。高エネルギー密度と高出力密度の同時実現は、代替電池において長年の課題となっている。

 しかし、ディンカ・グループが提案する正極材料、ビステトラアミノベンゾキノン(TAQ)と呼ばれる層状有機固体は、エネルギー密度と電力密度の両方において従来のリチウム・イオン正極を凌駕し、真にスケラブルな技術となっている。

 彼等の研究は、電気自動車に加えて、データ・センター、電力網、商業規模の再生可能エネルギー・システムなどの大規模なエネルギー貯蔵用途にも応用できる可能性がある。

 「電池のような重要な資源が限られていることの難しさは誰もが理解している。リチウムは確かにさまざまな意味で「限られている」と言えるであろう。」と、Alexznder Stewart 1886化学教授のMircea Dincăは述べている。「これらの材料については、常に多様なポートフォリオを持つことが重要である。ナトリウムは文字通りどこにでもある。我々にとって、有機物や海水といった非常に豊富な資源から作られた電池の開発は、最大の研究目標の1つである。」

 「エネルギー密度は、電池の容量と似ているため、多くの人が関心が寄せられているテーマである。エネルギー密度が高いほど、充電せずに車を走らせる距離が長くなる。我々が開発した新素材は、1 kg当たりのエネルギー密度で世界最高であり、体積比でも市場最高の素材に匹敵すると、我々は断言している。

 「真に持続可能で費用対効果の高いナトリウム・イオン・カソード、つまり電池の開発の最前線に立つことは、本当に刺激的である。」

 

理論上の最大容量に迫る

 研究室は1年前、ACS Central Science誌でTAQのリチウム・イオン電池製造への有用性を初めて報告し、その利点を強調した。研究者達はTAQの潜在能力を探求し続け、特にTAQが完全に不溶性で高い導電性を持つことを発見した。これらは有機正極材料にとって重要な技術的利点である。正極はあらゆる分極デバイスに不可欠な要素である。

 

 そこで彼等は、同じ材料であるTAQを用いて有機ナトリウム・イオン電池の開発に取り組んだ。リチウム・イオン技術から移植できないいくつかの設計原理を適応させる必要があったため、このプロセスには約1年を要した。

 最終的に、結果は彼等の期待を上回るものであった。カソードの性能は、理論最大容量と呼ばれるベンチマークに近づいた。

 「我々が選んだバインダーであるカーボン・ナノチューブは、TAQ微結晶とカーボン・ブラック粒子の混合を促進し、均質な電極を実現する。」と、ディンカ・グループの博士号を持ち、本論文の筆頭著者であるTianyang Chenは述べている。「カーボン・ナノチューブはTAQ微結晶を密着して包み込み、それらを相互に連結する。これらの2つの要素が電極バルク内の電子輸送を促進し、活物質の利用率をほぼ100%に高め、理論上ほぼ最大の容量を実現する。

 「カーボン・ナノチューブの使用により、電池のレート性能が大幅に向上する。つまり、同じ量のエネルギーをより短い充電時間で蓄えられるようになるか、あるいは同じ充電時間でより多くのエネルギーを蓄えられるようになるということである。」

 Chenによると、TAQの正極材料としての利点は、空気や湿気に対する安定性、長寿命、高温耐性、そして循環持続可能性も含まれるとのことである。