ナトリウム・イオン電池の将来のロードマップ
The Future Roadmap for Sodium-Ion Batteries
https://www.blackridgeresearch.com/より 2022.02.17
エネルギー貯蔵の会話はナトリウム・イオン技術で賑わっているが、それは当然のことである。世界中のエネルギー変換を加速させているのは何処にでもあるナトリウムである。現代経済は、手頃な価格で環境に優しいエネルギー源の需要を押し上げている。
リチウム供給量の不足は大規模なエネルギー貯蔵のための代替電池システムを利用する必要性の高まりの背後にある原動力である。持続可能なポスト・リチウム電池の探求に関しては、研究はナトリウム・イオン電池の有望な代替品を示している。
リチウム市場は需要に対して供給不足を示しているが、ナトリウム市場はバランスの取れた需要と供給有望に見える。リチウム・イオン電池は費用対効果が高く持続可能なエネルギー貯蔵に対する将来の需要に応えられない可能性がある。しかし、ナトリウムの相対的な豊富さと低コストは、次世代の電池技術のための一般的な選択肢としてそれを位置付ける。ナトリウム・イオン電池はゆっくりと、しかし着実に世界の電池市場で競争力を獲得している。
ナトリウム・イオン電池の内外、そしてもちろん将来のロードマップを知ろう。
● ナトリウム・イオン電池の歴史と背景
● ナトリウム・イオン電池とは
● ナトリウム・イオン電池はどの様に機能するか?
● ナトリウム・イオン電池とリチウム・イオン電池
● ナトリウム・イオン電池の利点
● ナトリウム・イオン電池の欠点
● ナトリウム・イオン電池の応用
● ナトリウム・イオン電池を作るのは誰か?
● 世界の電池市場の成長
● ナトリウム・イオン電池の将来ロードマップ
● 結論
ナトリウム・イオン電池の歴史と背景
1807年、イギリスの化学者で発明家のハンフリ-・デイビー卿は水酸化ナトリウムの電気分解によってナトリウムを発見した。アルカリ金属はその汎用性の高い用途で良く知られている。
ナトリウム・イオン電池の歴史は1980年代にさかのぼるが、リチウム・イオン電池はエネルギー貯蔵のニーズに成功した高いネルギー密度のために、1990年代に中心的な役割を果たした。10年前、世界的にリチウム供給量が減少していると言う憂慮すべき認識のために、焦点がナトリウム・イオン電池に移った。電池は我々の生活に偏在しているため、一貫して費用対効果の高い方法で、お金に見合うかちを提供する必要がある。
持続可能性と電池性能の最大化との間の最良の妥協点を見つけることは困難か?それは難しいことではないが、実行可能である。
電池の有効性を決定する主な要因は次の通りである:
● 原材料の入手可能性
● 費用
● サイクル寿命
● エネルギー密度
● 安全性
● 温度作動範囲
ナトリウム・イオン電池はリチウム・イオン電池と同等に競争するために増強を必要とするエネルギー密度を除いて、上記のパラメーターで良好なスコアを獲得する。次に、ナトリウム・イオン電池の構成を見ていく。
ナトリウム・イオン電池とは
ナトリウム・イオン電池は、ナトリウム・イオン電池を電気出力用に最適化する強力な性能である。ナトリウム・イオン電池の作動原理を深く掘り下げる前に、ナトリウム・イオン電池に関連するいくつかの重要な用語を知っておくと陽極と良い。
電池:電池は化学エネルギーを電気/電気エネルギーに変換する装置である。
ナトリウム:ナトリウム(Na)は、原子番号11の反応性が高く、柔らかく、銀白色の化学元素である。その記号はラテン語の名前、ナトリウムに由来している。
イオン:イオンは電子の利得または損失による正味の電荷を有する原子またはアイテムのグループである。
電極:電流を流し、電池の電荷を生成するために不可欠な電気伝体である。
陽極:陽極は放電プロセス中に酸化が起こる場合である。それは電子受容体として作用する。
陰極:陰極は放電プロセス中に還元が行われる場所である。それは電子供与体として作用する。
電解質:これは電流輸送のためのイオン媒体である。
分離器:セパレーターは多孔質であり、内部短絡を防止するための電気絶縁体として機能するポリマー・ベースの膜である。イオン輸送を容易にし、陽極と陰極の間の接触を回避する。
溶媒混合物:混合溶媒は高いイオン伝導性を可能にし、広い使用温度範囲を有する電解質溶媒である。
Al集合体:アルミニウム箔は高い導電性および安定性を提供するので、適切な集電体として作用する。
バインダー:バインダー材料は電極の膨潤を防ぎ、電極内に活物質粒子を一緒に保持する。
インターカレーション:このプロセスは層状材料または構造間のイオンの可逆的包接を指す。
デインターカレーション:このプロセスは層状材料または構造の間に挿入された分子を除去することを指す。
ナトリウム・イオン電池はどの様に機能するか?
電池は陽極と陰極で構成されている。ナトリウム・イオンまたはナトリウム・イオン電池は電池の電極間の可逆反応の原理に基づいて作用する。
リチウム・イオンまたはリチウム・イオン電池のように、ナトリウム・イオンは2つの電極(陽極と陰極)の間を移動して電気を生成する。したがって、最適な結果を達成するためには、標準的な陽極材料および陰極材料構成が推奨される。この電気化学的プロセスはどのように機能するか?作動原理は、電極で酸化と還元が起こる充放電プロセスを含む「ロッキングチェア機構」に基づいている。
ナトリウム・イオン電池では、ナトリウム・イオン源が陽極(正極)であり、ナトリウム・フリー源が陰極(負極)である。充電プロセスはナトリウム・イオンを電解質を介して負極に伝達する。固体電解質間相および陰極電解質間相の形成は、連続的な電解質劣化を防ぎ、電池機能を維持する。
進行中の充電は、所定の充電終了電圧に達する時点まで、吸着および挿入機構を介してより多くのナトリウム・イオンを放出する。放電プロセスは、陰極から陽極へのナトリウム・イオンの移動を逆転させる。定義されたカットオフ電圧に達するまで、電池電圧の一貫した減少がある。各サイクルには、陽極から陰極へのナトリウム・イオンの充電と放電が含まれる。
ナトリウム・イオン電池とリチウム・イオン電池
リチウム・イオン電池は長い間、電池の景観を支配してきた。リチウム・イオン電池は近い将来、携帯および固定電池の両方のエネルギー貯蔵用途で世界市場シェアを支配する可能性がある。それにもかかわらず、他の電池技術は徐々に地歩固めている。
なぜリチウム・イオン電池からナトリウム・イオン電池に焦点が移っているのか?リチウムおよびリチウム・ベースの部品の供給が逼迫するにつれて、入手が制限され、採掘コストが高いため、リチウム・イオン電池の製造と販売が困難になっている。
答を見つけるために、いくつかの大きな違いを見てみる。
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ナトリウム・イオン電池 |
リチウム・イオン電池 |
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豊富な天然資源(ナトリウム) |
乏しい天然資源(リチウム) |
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確実な調達 |
危険な調達 |
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安価(最高の節約) |
かなり高価(高い材料費と危険な供給網) |
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かさばる |
軽量 |
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幅広い温度で安定 |
高温で不安定 |
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良好な低温性能 |
劣った低温性能 |
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急速な充電/放電 |
長時間効果的に放電できない |
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寿命スパンが比較的長い |
寿命スパンが比較的短い |
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不燃性電池 |
可燃性電池 |
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ナトリウム電池を容易に安全にリサイク |
リチウム電池の安全なリサイクルは困難 |
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出典:Blackridge Research & Consulting |
ナトリウム・イオン電池の利点
限られたリチウム埋蔵量は様々な電池用途のための汎用性と経済的に実行可能なナトリウムへの道を開いている。ナトリウム・イオン電池の多くの利点を見てみよう。
豊富に利用可能
アルカリ金属は地球上で」6番目に豊富な物質である。ナトリウム・イオン電池の開発と展開に関する絶え間ない研究開発の背後にある理由である。
高い適応性
ナトリウム・イオン電池は家庭や企業向けの再生可能エネルギー貯蔵、配電網貯蔵、データおよび通信会社のバックアップ電力など、幅広い電力用途に使用できる。
火災安全性
リチウム・イオン電池には、過熱や熱暴走の危険性があり、電池の故障、爆発、または電池の火災につながる。ナトリウム・イオン電池の相対的な安定性は、プラスの差別化要因である。
低コストの代替品
リチウム・イオン電池材料は非常に高価である。これと比較して、ナトリウム・イオン電池部品は安価である。ナトリウム・イオン電池は、リチウム・イオン電池よりも安全で30%安いと考えられている。
毒性が低い
リチウム・イオン電池の火災は有毒ガスを環境中に放出する可能性がある。対照的に、ナトリウム・イオン電池は安全で環境に優しい。
安定性
ナトリウムは容易にイオン化し、ナトリウム・イオン電池はより広い温度で比較的安定しており、実証可能なシステム統合効率を備えている。
ナトリウム・イオン電池の欠点
リチウム・イオン電池はかなり前から存在していたが、ナトリウム・イオン電池は商業的な状況にとって比較的新しいものである。堅牢な産業供給網の欠如と現在の市場状況は、ナトリウム・イオン電池の積極的な用途には適していない。
ナトリウム・イオン技術は商業用途向けの構造安定性と弾力性を向上させるための継続的な研究開発段階にあるため、ナトリウム・イオン電池の最大の欠点を知ることが重要である。
低エネルギー密度
唯一の欠点はリチウム・イオン電池と比較してエネルギー密度が低いことである。リチウム・イオン電池ほどの大きな充電を提供することは、その低いエネルギー密度のためにナトリウム・イオン電池にとって現在、実現不可能である。
大きなサイズ
ナトリウムはリチウムの3倍重いため、ナトリウム・イオンは液体電解質中では容易に移動できない。これがナトリウム・イオン電池のかさばりの背景にある理由である。
ナトリウム・イオン電池の応用
研究によると、リチウム・イオン電池の標準的な内部構成を対応するナトリウム成分に置き換えると、有意義な結果が得られることが示されている。広範な研究は、クリーンでグリーンなエネルギーに対する需要の高まりを満たすためにナトリウム・イオン電池の使用をサポートしている。
ナトリウム・イオン電池のよく知られている用途のいくつかは次の通りである:
自動車・運輸
炭素排出量削減目標は、輸送の電化に大きな影響を与える。したがって、費用対効果の高い電池化学は、電気自動車の革新に不可欠である。電気自動車の販売が今後数年間で成長すると予想されるため、ナトリウム・イオン技術は電気自転車や電気自動車を含む電気自動車にとって否定できない選択肢である。
配電網レベルの用途
配電網は信頼性の高い電力に依存している。断続的な電源は配電網の機能を妨げる可能性がある。ナトリウム・イオン電池は太陽エネルギーと風力エネルギーを最適化し、独自の配電網エネルギー貯蔵要件を効果的に満たすのに役立つ。
産業用輸送
ナトリウム・イオン電池は一定の準備状態と強力なピーク電力により、資産利用率を最大化し、運用コストを最小限に抑えることができる。
電源バックアップ
データおよび通信セクターは世界経済を牽引するために電池駆動のインフラストラクチャーと運用に大きく依存している。ナトリウム・イオン電池は安全でシームレスな電源を確保するためにオンデマンド電力を供給できる。
ナトリウム・イオン電池を作るのは誰か?
世界中の様々な企業がナトリウム・イオン電池を製造している。大手電池製造者には、ナトリウム・イオン技術を開発するための専門チームがある。
ナトリウム・イオン電池の三大企業は次の通りである:
ファラディオン社
ファラディオン社はナトリウム・イオン技術を商品化した世界初のナトリウム・イオン電池企業である。イギリスに本拠を置く同社は、非溶液姓ナトリウム・イオン電池技術を専門とし、包括的で広範なIPポートフォリオを備えたナトリウム・イオン電池に関連する印象的な特許を保有している。
バックアップ電源や低コストの電気輸送から住宅や産業の貯蔵まで、ファラディオン社は安価でクリーンなエネルギーで知られる効率的で費用対効果の高い現実世界のナトリウム・イオン電池解決策を提供する。
ナトロン社
ナトロン社(Natron Energy)は総所有コストを改善するためのスタンドアロンまたは統合電池解決策を提供する。同社はより高いピーク容量、安全性、長いサイクル寿命などの印象的な利点を提供する革新的な電池解決策で、従来の電池技術の限界を押し広げてきた。
ナトロン社のプルシアン・ブルー・ナトリウム・イオン技術はより良い電池化学でより良い性能のために構築されている。これは、ナトロン社のBlue TrayTM4000で、ULにリストされている史上初のナトリウム・イオン電池である。
CALT社
中国に拠点を置くCALT(Contemporary Amperex Technology Co., Ltd )総研は2021年7月に初のナトリウム・イオン電池を発売した。電池の巨人は2023年に商業生産を開始する予定である。
ナトリウム・イオン電池とは別に、CALTはナトリウム・イオン電池とリチウム・イオン電池を1つのパックに美しく統合したAB電池パック製品を発表した。CALTはまた、サイクル性能を高めるために、独自の多孔質構造を有する硬質炭素材料を開発した。
世界の電池市場の成長
近年の電池ブーム
電池の革新は21世紀初頭から長い道のりを歩んできた。リン酸鉄リチウム、ニッケル・コバルト・アルミニウム、ニッケル・コバルト・マンガンの3つの主要な電池技術である。
リチウム資源の減少は、より安価で実行可能な代替品の探索を奨励した。自動車メーカー、企業、政府、公益事業会社、その他の組織がナトリウム駆動のエネルギー貯蔵装置やシステムに移行し始めることは驚くことではない。
イギリスに本拠を置くナトリウム・イオン電池メーカーのファラディオン社のインドの買収は、ナトリウム・イオン電池の望ましさと需要にスポットライトを当てる。各国は再生可能エネルギーの選択肢を求めているが、統合製造施設を通じて技術を商業化する取り組みを強化している。
差し迫ったリチウム不足により、より安価で安全な電池商品の探索が加速するにつれて、ナトリウム・ベースの電池は、増え続ける世界的なエネルギー貯蔵要件を満たすことができる画期的なエネルギー貯蔵技術の1つである。
Blackridge Research & Consulting – Market Research Reports
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ナトリウム・イオン電池の将来ロードマップ
ナトリウム・イオン電池の研究開発
電池技術分野における現在の研究開発能力は、エネルギー貯蔵に対する指数関数的な需要に対応するために急速に成長している。世界のリチウム埋蔵量に対する圧力を緩和することは、実行可能な非リチウム電池オプションを探している研究者の主な焦点である。
例えば、アメリカ国立科学財団は、樹枝状結晶(フィラメント)の成長に抵抗し、火災や爆発のリスクを低減する高速で安定したナトリウム・イオン電池の開発に役立った研究に一部資金を提供した。カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者達は、固体ナトリウム・イオン電池の効率、寿命、安定性を高めるための新しい固体電解質を設計および製造するために他の研究者達と協力した。
脱炭素化、再生可能エネルギーの送電網への統合の高まり、電気自動車の採用の増加は、環境に優しく社会的に意識の高いエネルギー貯蔵技術の開発を促進するいくつかの要因である。
世界的な研究開発努力はナトリウム・イオン電池の工業化を強化している。特に電気自動車市場は、ナトリウム・イオン電池技術の研究開発の恩恵を受け、運用効率を高め、コストを削減し、より多くの収益機会を促進する可能性がある。
ナトリウム・イオン電池の道のり
ナトリウム・イオン電池の将来はどうなるのだろうか?非リチウム代替品の中でもナトリウム・イオン電池の望ましさは、主に豊富さ、低コスト、および高性能によって駆動される。高度な技術力と電池の革新は、ナトリウム・イオン電池の商業規模での受け入れと採用に不可欠である。
ナトリウム電池の多様で複雑な開発段階は電池のランドスケープにおける革新につながる。例えば、ハイブリッド電池はナトリウムとリチウムの最高の機能をブレンドして電池性能を向上させる有望な可能性を提示する。
ナトリウム・イオン電池の利点は電池の革新を次のレベルに引き上げるだろうか?
研究は低コストで高性能なナトリウム・イオン電池が電池市場で強力な足場を築く可能性を確認している。世界が安全で持続可能なエネルギー貯蔵をますます求めるようになるにつれて、ナトリウム・イオン技術の革新は将来改善されるであろう。
結論
充電式電池市場は革新によって牽引される。電池技術はもはやリチウム・イオン電池だけにとどまらない。電池製造者と電池科学者達は高コストと差し迫ったリチウム不足を受けて、リチウム・イオン電池の代替品に取り組んできた。さらに、破壊的な電池技術の使用の増加はカーボン・ニュートラルの目標に沿っている。
支配的なリチウム・イオン電池は価値のあるナトリウム・イオン電池の潜在的な後継者を有する。長年にわたり、商業化の成功は携帯型電子器機、電気自動車、エネルギー貯蔵システムなどへのリチウム・イオン電池の大規模な展開につながった。しかし、ナトリウム・イオン電池部品のニッチ市場と、ナトリウム・イオン発電機からデータ・センター用のカスタマイズされたナトリウム・イオン電池まで、ナトリウム駆動の革新が急増している。
ナトリウム・イオン電池市場は、パイロットプラント規模の生産から完全な商業化への移行を容易にするためのより多くの投資と目標を絞った研究開発努力により、今後数年間で急速に成長すると予想されている。
リチウム・イオン電池と比較して、ナトリウム・イオン電池は経済的に実行可能で、エネルギー効率が高く、安全で持続可能である。ナトリウム・イオン電池で電源を入れるときが来た。ナトリウム・イオン電池はゲームチェンジャーか?答は「はい」である。