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塩代替物に切り替えると脳卒中、心臓発作、死亡が減るか?

Would Switching to a Salt Substitute Reduce Stroke, Heart Attacks and Deaths?

https://www.bhf.org.uk/   2021.09.03

 

最近の研究報告では、塩代替物が脳卒中、心臓発作、死亡の可能性を退化させる可能性があることを示唆している。見出しの裏側を振り返り、BHF(イギリス心臓財団)の見解をお伝えする。

 

 この研究は、これまでに実施された食事の変化を調査した最大規模の研究の1つである。この研究はGeorge Institute for Global Healthの研究者達によって実施され、New England Journal of Medicine誌に掲載された。

 塩分の多い食事、血圧の上昇、心臓や循環器の病気との間に関連性があることは既に分かっている。研究者達は、塩代替物への切り替えが人々の健康に及ぼす影響を理解したいと考えていた。塩代替物は塩化ナトリウムの含有量を減らし、塩化カリウムを加えたもので、すでにスーパーマーケットで入手可能で、味は普通の塩に似ている。

 この研究は、脳卒中や血圧管理不良の病歴がある600ヶ所の村の中国人成人21,000人をほぼ5年間にわたって追跡調査した。一部の村の人々には、日々の必要量を賄うために塩代替物が与えられた。他の村の人々は通常の塩を使い続けた。

 研究期間中、3,000人が脳卒中を患った。研究者達は塩代替物を使用した人の脳卒中リスクが14%減少したことを発見した。脳卒中、心臓発作、またはその他の主要な心臓および循環器系イベントの広範なリスクは13%減少し、原因を問わず死亡は12%減少した。

 研究主任のBruce Neal教授は、低コストの塩代替物が広く使用されれば、世界中で数百万人の死亡を防ぐことができると述べた。同氏は、重度の腎臓病患者は通常の塩と塩代替物の両方を避けるべきであるが、「塩代替物に添加されたカリウムによる害は見られなかった。」と述べた。

 研究者達は、この結果は、国家的に塩代替物への切り替えが行なわれた場合、中国で年間40万人の早死が防止される可能性があることを示唆した以前の研究を裏付けるものであると述べた。

 研究者達は次のような勧告を行なった:

  世界中の塩製造業者と小売業者は、塩代替物の製造と販売に切り替える必要がある。

  世界中の政府は、塩代替物を促進し、定期的な塩の使用を沮止する政策を策定する必要がある。

  世界中の消費者は、通常の塩ではなく、塩代替物を使用して食品を調理し、味付けし、保存する必要がある。

 

研究はどの程度上手く行ったか?

 この研究の大きな強みは、長期間にわたって多数の人々が参加したことである。この研究は、重要な健康問題に焦点を当てているが、イギリスのような他の場所でも結果が同様であるかどうかを知るのは難しい。イギリスでは食生活が中国の田舎の人々と大きく異なるためである。

 中国の村人は加工食品の摂取量が少なく、一から料理することが多いため、彼等が食べる塩の多くは料理人によって加えられている。イギリスでは、すでに高レベルの塩分を含む加工食品を多く含む食生活が行なわれているため、摂取する塩分の量をコントロールすることが難しくなる。

 この研究では、同様の健康上の問題を抱える非常に特殊なグループの人々も追跡調査された。同様の結果が若い人や血圧が正常で健康な範囲にある人に見られうかどうかは不明である。

 

BHFの見解

 イギリス心臓財団の上級栄養士であるVictoria Taylorは次のように述べている:

「この研究は、我々の食事に含まれる塩分の量を晴らし、塩代替物を探すことを思い出させるのに役立つ。しかし、それは必ずしもイギリスの人口に当てはまるわけではない。研究対象となった人々のグループは中国の田舎出身であるため、食事、生活様式、塩摂取量はおそらく異なっている。また、脳卒中の既往歴がある人、または60歳以上で高血圧のコントロールが不十分な人だけを対象とした。

 塩代替物は通常の塩よりもナトリウムが少ないため、ナトリウム摂取量を減らす日常的には役立つが、塩辛い食物の習慣を止めるのには役立たない。やはり食べる量を減らした方が良い。塩代替物にはカリウムが含まれており、既存の健康状態にある人には適さないため、使用する前に医師に確認することを勧める。ハーブ、スパイス、黒胡椒、唐辛子、レモンなど、他の調味料を食物に使ってみてはどうか。」

 

メディア報道はどの程度正確であったか?

 この記事はタイムズ紙、デイリーメール紙、イブニングスタンダード紙、インディペンデント紙で吊り上げられた。

 報道内容は概ね正確でバランスが取れており、研究の重要な詳細とその結果が記載されていた。すべての新聞はGeorge Institute for Global Healthjのプレス・リリースからの同様の事実と引用を報道することを選択した。

 記事間の唯一の違いは、ほとんどの記事が塩代替物の使用により数千人の脳卒中や心臓発作を防ぐことができると報告しているのに対し、インディペンデント紙は見出しで「数百万人の死亡を防ぐことができる」と述べていたことである。これだけを考えると誤解を招く可能性がある。インディペンデント紙の記事はこの研究について正確に報じた。しかし、イギリス国民と比較した中国の農村部の人々の食事に違いや、それが心臓病や脳卒中のそれほど顕著な減少にどのようなつながりがあるかについては強調していなかった。

 新聞報道はすべて、食事中の減塩の重要性と、食品産業や個人が食品中の通常の塩または塩代替物の量を減らすだけでなく、代替品の使用を検討する必要があるという事実について言及していた。