食物に塩を加えると平均余命が短くなる可能性があるか?
Can Adding Extra Salt to Food Cut Your Life Expectancy?
https://www.bhf.org.uk/より 2022.07.15
最近のいくつかのメディアの報道は、余分な塩を食べると平均余命が2年短くなる可能性があること示唆している。食卓の食物に塩を加えることは本当に早期死亡のリスクを高めることにつながる可能性があるか?見出しの後ろを見て、BHF(イギリス心臓財団)ビューを提供する。
European Heart Journalに掲載された新しい研究によると、調理後に常に食品に塩を加える人は、食事に余分な塩をまったく、またはめったに使用しない人と比較して、早期死亡のリスクが28%高くなる。この研究では、常に食品に塩分を追加する人々間で、50歳では女性では1.5年、男性では2年以上短い関係も見出した。研究者達はまた、果物や野菜などの高カリウム食品を沢山食べると、この早期死亡のリスクの増加を減らすのに役立つ可能性があることを発見した。
この研究では、研究者はUK Biobank(500万人以上のボランティアからの医療情報を含む研究データ・ベース)によるアンケートの結果を使用して、人々が調理後に食品に塩を加えているかどうか、およびその頻度を調べた。全体としてこの研究は、その調査結果は塩分の「適度な削減さえ」健康上の利点を提供する可能性が高いことを示していると主張している。
BHFの評決-食品に塩を加えることは健康的であるか?
それであなたは塩を食べ過ぎていますか?イギリス心臓財団のシニア心臓看護師であるChloe MacArthurは「食事には塩分が必要であるが、我々のほとんどがそうであるように、食べ過ぎると高血圧につながる可能性のあり、心臓発作や脳卒中のリスクが高まる。
「この研究では、食卓で加える塩が食品に既に含まれている塩よりも悪いからではなく、塩摂取量を測定する方法として食品に塩を加えること人々に注目している。通常、可能であれば食品に塩を加えることは避けた方が良いだろうが、塩の大部分は購入する前に既に食品に含まれているため、我々が思っているよりも多くを消費している。
「これがHenry Dimblebyの国家食糧戦略で推奨されている塩税など、食品業界が食品に入れる塩の量を減らすことを奨励する方法を検討することが重要である理由である。」
研究はどれほど良かったか?
この研究では、人々が食品に塩を加えるかどうかについての簡単な質問を使用して、塩の好みを示した。この研究では、「西洋型食生活では、食卓に塩を加えることは総塩分摂取量の6~20%を占める。」と述べている。これは我々の食事の主要な塩源ではないが、研究者達は食卓で塩を加えることによって示される塩辛い食べ物の味は、一般的により多くの塩辛い食べ物を食べることに変換され、長期的な塩摂取量を評価する良い方法になる可能性があると付け加えている。
彼等は食品に塩を加えた人々は、ランダムに行われたスポット・チェックに基づいて尿中のナトリウムも多いことを発見した(これはより多くの塩を摂取している可能性があることを示していると見なされた)。
このタイプの研究は、原因と結果ではなく、リンクを示すことしかできないため、食品に塩を加えることが早期死亡の原因であるとは言えない。また、塩と健康の関係を評価するための新しいアプローチであり、それがどれほど信頼できるかを知るために繰り返す必要がある。それにはいくつかの制限もある。例えば、食卓で追加された塩は、味の好みではなく習慣から追加することが分かっている。
チーズ、ソース、ピクルスなど、食卓塩を加える以外に、人々が食物に塩を加えることが出来る様々な方法もある。調理中に添加された塩も測定値に含まれていなかったが、総生産量に寄与している可能性がある。また、再処方プログラム(食品や飲料製品のレシピを変更して健康にするためのメーカーの取り組み)からも、味の変化に気付かずに時間の経過と共に食事中の塩分量を大幅に減らすのに効果的であることが分かっており、我々は習慣を変える必要はない。
参加者は2006年から2010年の間に募集され、彼等の健康状態は平均18年間監視された。この間、18,500人近くの早期死亡が記録された。この研究の強みは、信頼できる情報源から提供された情報に基づいており、イギリスの人口全体からの大きな試料サイズを使用していることである。
研究者は、塩による調味料に関するアンケート回答が不完全な参加者を除外した。彼等はまた、24時間の食事思出法と一部の参加者からのランダムな尿試料を使用して毎日の食事の違いを説明し、塩摂取量の測定に伴う課題に対処するのに役立った。研究者達は体重や身体活動など、結果に影響を与えた可能性のある要因を考慮して結果を調整した。
研究の著者らは食品中の塩分を食べ過ぎることも、一般的に不健康な生活様式の指標である可能性があると述べている。調査結果は生活様式の要因を考慮に入れているが、それでも結果に影響を与えた可能性がある。
著者らはまた、塩摂取量、死亡、平均余命の間に正と負の両方の関連を示す以前の研究にも言及しているため、この分野ではまだいくつかの議論がある。この研究の弱点には、すべての参加者がイギリスに拠点を置き、40歳から69歳であり、ボランティアであることが含まれる。これは、結果が必ずしも母集団全体を表すわけではないことを意味している。
メディアの報道はどれくらい良かったか?
メディアでのこの研究の報道には、ガーディアン、デイリーエクスプレス、スカイニュースの記事が含まれていた。どのレポートも元の研究へのリンクを提供していないが、デイリーエクスプレスとスカイニュースの両方が塩を食べ過ぎるリスクに関するBHFの見解を引用している。
ガーディアンはこの研究とその長所と短所を詳細に検討し、重要なことに以前の死との関連は、調理後に食事に「常に」塩を加える人々に特に関連していることを強調している。
新聞の報道には研究者の1人からの引用が含まれているだけでなく、研究に関与していない学者からのさらなる意見が追加されている。Annika Rosengren教授からのこの意見は、European Heart Journalの論説から持ち上げられたようである。その論説は、塩が少な過ぎることの健康リスクに関するものを含む塩に関する様々な証拠に言及している。
ガーディアン紙はこの文章を引用し、「これまでのところ塩に関する集合的な証拠が示しているのは、通常のレベルの通常の塩分を構成するものを摂取している健康な人は、塩摂取量についてあまり心配する必要がないと言うことである。」と言う文を引用した。これは「通常レベルの通常の塩分」の定義がなければ必ずしも役立つとは限らず、イギリスのほとんどの人が推奨される最大塩分レベルをはるかに超えて食べることが分かっていることを考えると、真実でない可能性がある。
この文章は、作家が同じ論説で結論を出すことなく引用された:「食品に余分な塩を加えないことは有害である可能性は低く、人口の血圧レベルを下げる戦略に貢献する可能性がある。」さらに役立つことに、ガーディアンは、心臓病のリスクが高い人は使用する塩の量を「おそらく減らす必要がある」と述べている。
デイリーエクスプレスからの報道は詳細を欠いており、3つの文章の情報しか掲載されていない。「食品に塩を加えると、早期に死亡するリスクが高まる」と言う見出しでリードされているが、この研究では調理後に塩を加えることだけを検討していることは明らかにされていない。
スカイニュースも同様の見出しでリードしているが、この研究が余分な塩の影響に焦点を当てていることを何度か明らかにしている。スカイはまた研究の研究者の1人を引用し、「推奨事項を作成する前に調査結果を検証するには、さらなる研究が必要である。」と述べている。
デイリーエクスプレスとスカイニュースはどちらも食品に塩を加える過ぎたために、100人に100人がより早く死亡する可能性があると述べている。しかし、文脈を提供するために、スカイニュースのレポートは通常、「40~69歳の100人のうち約3人が一般人口全体で早期に死亡する。」とも述べている。
訳者注:国際塩シンポジウムを行った際に、世界の塩産業界のメンバーが集まった中で、塩摂取量が多い日本人の平均余命が世界一長いのは何故かと言う素朴な疑問を呈した人がいた。訳者は日本の統計データである国民栄養調査と人口動態調査の結果を組み合わせて塩摂取量と平均余命の関係を整理し関係のないことを示した。また、人口動態調査の死因については死亡診断によるが必ずしも正確とは言えない。その点、患者調査の結果は具体的な疾患名で診療を受けている結果であるので正確である。そこで塩摂取量と疾患受診率との関係を整理した。塩摂取量と高血圧、脳卒中等との関係はなく、このことを国際塩シンポジウムで発表した。