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中国、ポスト・リチウム・イオン時代に向けて

世界の電池特許競争をリード

China Leads Global Battery Patent Race for Post-Lithium-Ion Era

By Nikkei Staff Writers

https://asia.nikkei.com/        2023.04.03

 

大阪発-日経新聞の分析によると、リチウム・イオン電池の代替品の開発競争において中国が存在感を高めている。過去10年間のポスト・リチウム・イオン電池関連特許の国別集計によると、中国がトップで全特許の半分以上を占めている。

 おそらくこのレースの最大の馬であるナトリウム・イオン電池の特許評価でも、中国が日本と米国を圧倒していることが示されており、中国企業は今年これらの電池の量産を開始すると予想されている。

 日本と米国も脱炭素化の取り組みに向けて、資源に制約のある電池に代わる安価な代替品の開発を急いでいるが、中国には遅れを取っている。

 日経新聞は三井物産戦略研究所に対し、米国の知的財産情報サービス「レクシスネクシス」の特許分析ツールの利用を要請した。12月時点で有効な特許は9,862件あり、過去10年間で12倍に増加した。有効な特許を有する企業や研究機関を国別に集計したところ、中国が5,486件の特許で第一位となり、全体の50%以上を占めた。

 2015年まで第一位だった日本は1,192件の特許で次ぎ、米国の719件、韓国の595件、フランスの128件が続いた。

 組織別の特許ランキングでも中国が突出している。中国科学院や現代アンペレックス・テクノロジー(CALT)など、トップ10に7機関が入っている。

 三井総合研究所は特許件数だけでなく「質」も加味した総合指標で評価した。他の特許への引用数などの要素に基づくレクシスネクシスの指数では、中国が4,930ポイントで第一位となった。二位はアメリカで2,630ポイントとなった。2017年まで首位だった日本は2,260点で三位となった。

 中国は特にナトリウム・イオン電池に強く、将来の機器では現在のリチウム・イオン電池の地位を奪われると予想されている。ナトリウムは豊富な資源であり、リチウムなどの希少な工業用材料の使用を削減できる。リチウム・イオン電池に比べて容量は小さくなるが、コストは60%~70%安くなる。

 車両用電池世界最大手のCALT2023年に電気自動車用ナトリウム・イオン電池を量産・供給する計画を発表しており、他社もこの技術の実用化を急いでいる。ナトリウム・イオン電池関連の特許に関して、中国の総合指数は過去10年間で109倍に増加し、米国や日本の23倍となっている。中国はまた、非常に安全性が期待される別の次世代パワーパックである亜鉛イオン電池でも第一位となった。

 日本は今日主流のリチウム・イオン電池の開発競争で世界をリードしてきた。欧州特許庁と国際エネルギー機関が2020年にまとめた報告書によると、2014年から2018年までのリチウム・イオン電池関連特許の40%が日本で生まれた。電気自動車に使用される全ての電池に関して、日本が特許の大部分を占めている。

 今日の電池で使われているリチウムとコバルトは、主に南アメリカとアフリカで生産されている。電気自動車の需要増加により、リチウムとコバルトの価格が高騰している。特に電気自動車や再生可能エネルギーの導入が急速に進む中国では、ナトリウムなどの豊富な資源を使った電池の開発が加速している。

 中国政府は再生可能エネルギーや電気自動車の利用拡大に向け、次世代電池の開発を推進している。2025年までのエネルギー分野の科学技術イノベーションに関する第145ヶ年計画では、電力網需要のピークカットを削減し、再生可能エネルギーの利用を促進するのに役立つと期待される技術開発であるナトリウム・イオン電池の研究に重点を置くことが求められている。

 日本と米国は全体の数字では遅れを取っているものの、依然として強みを持っている。フッ化物イオン電池関連特許の総合評価では日本が一位となった。マグネシウム・イオン電池では米国が一位となった。フッ化物イオン電池の容量はリチウム・イオン電池の10倍にもなる可能性がある。

 日本政府は、トヨタ自動車、日産自動車、京都大学が取り組んでいる研究プロジェクトを含め、産学による研究プロジェクトを支援している。この次世代電池の実用化は2030年代になるとの味方もある。