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電池の新時代:アルゴンヌが5000万ドルのナトリウム・イオン・イノベーション推進を主導

6つの国立研究所と8つの大学が、電気自転車用電池の供給の多様性を高め、サプライチェーンの懸念を軽減することを目指す。

A New Era for Batteries: Argonne Leads $50M Sodium-Ion Innovation Push

By Joseph E. Harmon

https://www.anl.gov/    2024.11.21

 

 5,000万ドルのコンソーシアムは、リチウム・イオン技術に代わるより持続可能で低コストのナトリウム・イオン電池を開発し、アメリカでナトリウム・イオン電池の産業エコシステムを育成し始める。

 

 アメリカエネルギー省は、今後は5年間で5,000万ドルを交付し、低コストの地球豊富ナトリウム・イオン貯蔵(LENS)コンソーシアムを設立した。アメリカエネルギー省のアルゴンヌ国立研究所が主導するこのコンソーシアムには、アメリカエネルギー省のブルックヘブン国立研究所、ローレンス・バークレイ国立研究所、太平洋北西部国立研究所、サンディア国立研究所、SLAC国立加速器研究所が含まれる。

 LENSコンソーシアムは、安全で豊富で安価な材料を使用して、高エネルギーで長持ちするナトリウム・イオン電池の開発を目指している。この取り組みは、ナトリウム・イオン電池に使用される限られた戦略的に重要な元素へのアメリカの依存度を下げるという重要なニーズに対応し、電気自動車技術のより持続可能な未来への道を開く。

 「LENSコンソーシアムを主導することで、アルゴンヌはナトリウム・イオン電池技術を前進させ、すべての人にとって安全なエネルギーの未来に貢献する。」とアルゴンヌのディレクターPaul Kearnsは述べている。「今後の重要な分野における我々の科学的専門知識とダイナミックなコラボレーションは、アメリカの競争力を強化するであろう。」

 現在、リチウム・イオン電池は自動車用および据置型蓄電用の世界のエネルギー貯蔵市場を支配している。スマートフォンから電気自動車までさまざまな装置に電力を供給し、太陽光や風力などの再生可能エネルギー源からのエネルギーを貯蔵できる。

 しかし、単一の電池化学成分に頼ると脆弱性が生じ、現在主流の電池にはリチウム、コバルト、ニッケルという重要な要素が含まれている。豊富な元素であるナトリウムは、より費用対効果の高い選択肢を提供することでリスクを軽減し、サプライチェーンの回復力を高めることができる。

 アメリカは世界の塩化ナトリウムとナトリウムの相当量を生産しているため、ナトリウム・イオン技術の原材料とイノベーションの両方を供給するのに特に適している。ナトリウム・イオン電池は、一部の用途でリチウムだけでなくコバルトやニッケルも不要にできる可能性があり、より手頃で持続可能な解決策を提供する。

 しかし、ナトリウム・イオン電池は単位重量と体積あたりのエネルギー貯蔵量が少ないため、走行距離が短くなり、リチウム・イオン電池と競合する電池にとって障害となる。

 「今後の課題は、ナトリウム・イオン電池のエネルギー密度を改善して、まずリン酸ベースのリチウム・イオン電池に匹敵し、さらにそれを上回るようにしながら、すべての重要な要素の使用を最小限に抑え、なくすことである。」と、LENSコンソーシアムおよびアルゴンヌ・エネルギー貯蔵科学共同センターのディレクターであるVenkat Srinivasanは述べた。「重要なのは、如何なる改善も、サイクル寿命や安全性など、他の性能指標を損なってはならないということである。」

 「電気自動車の普及を持続させるには、手頃な価格で持続可能な電池化学が必要である。」と、SLAC-Stanford Battery CenterのディレクターであるWill Chuehは語る。「LENSの大胆な技術目標は、ナトリウム・イオン電池の有望な技術から、将来の電気自動車の実現可能なコンポーネントを変えることである。」

 この目標を達成するために、アルゴンヌは国立研究所や大学から世界クラスの研究者チームを招集した。各参加者はナトリウム・イオン電池の研究で豊富な経験を持っている。彼等は共同で、高エネルギー電極材料の発見と開発、電解質の改良、電池セルの設計、競合、ベンチマークに取り組む。

 「ナトリウム・イオン電池は、安価なエネルギー貯蔵に対する社会のニーズに応える上で重要な役割を果たすことができる。」と、バークレー研究所の材料科学部門の上級研究員であるGerd Cederは述べた。「新材料の発見、高度な製造、特性評価の分野における基礎研究は、競争力のあるナトリウム・イオン電池技術の開発と展開に不可欠である。バークレー研究所は、このコンソーシアムの一員であることを誇りに思う。」

 大手企業と新興企業で構成される諮問委員会は、ナトリウム・イオン電池のアメリカ・エコシステムを育成することを目標に、コンソーシアムに重要な業界視点を提供する。

 LENSは、アメリカエネルギー省内で拡大を続けるナトリウム・イオン電池ポートフォリオの一部となり、この新しい化学物質を電気自動車や送電網蓄電池用途で使用する研究も含まれている。

 コンソーシアムには、フロリダ州立大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校、ヒューストン大学、イリノイ大学シカゴ校、メリーランド大学、ロードアイランド大学、ウィスコンシン大学マディソン校、バージニア工科大学の8つの大学がパートナーとして参加している。14のパートナーすべてが参加することで、LENSは新世代の電池科学者や研究者の育成において重要な役割を果たすことになる。

 「我々の世界は、日常生活の電力供給方法に大きな変化の瀬戸際にある。」とバージニア工科大学の化学教授Feng Linは語った。「LENSコンソーシアムの専門知識を組み合わせることで、電気自動車の新しい電池技術を開発し、国内の電池の革新と製造に貢献する新世代の科学者とエンジニアを育成するユニークな機会が生まれた。」

 LENSは、アメリカエネルギー省のエネルギー効率および再生可能エネルギー局の車両技術局によってサポートされている。