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自然からインスピレーションを得た画期的な技術:簡単な技術でフレキシブル・ナトリウム・イオン電池の容量を向上

Nature-Inspired Breakthrough: Simple Technique Improves Capacity of Flexible Sodium-Ion Batteries

By Wiley

https://scitechdaily.com/     2023.12.04

 

科学者達は電解質のメチル化を使用して、柔軟なナトリウム・イオン電池を改良している

 携帯用電子器機で一般的に使用されるフレキシブル水性電池には、通常、水と塩で構成されるヒドロゲル電解質が含まれている。中国の研究チームは、ナトリウム・イオン電池のヒドロゲルの塩安定性を高める点で大きな進歩を遂げた。彼等は、ハイドロゲルの構造ポリマーをメチル化することでこれを達成し、これにより塩析が防止され、その結果、電池の容量とサイクル性能が向上した。

 彼等の発見は最近、Angewande Chemie誌に掲載された。

 

ナトリウム・イオン電池:持続可能な代替品

 ナトリウム・イオン電池は、リチウム・イオン電池よりも安価で環境に優しい材料を使用しているため、リチウム・イオン電池の有望な代替品である。しかし、新しい電池には多くの新しいコンポーネントの開発が必要で、そのすべてがナトリウム・イオンに適合する必要がある。最も重要なコンポーネントの1つは電解質である。薄くて柔軟な電池の場合、電解質はヒドロゲルの形をしていることがよくある。これらの柔軟な含水材料は、溶解したナトリウム塩を吸収し、イオンを伝導することができる。

 ヒドロゲルの適合性にもかかわらず、広い電気化学的安定性範囲に必要な高塩濃度での相分離と塩析がまだ解決されていない問題である。中国、青島にある中国科学院のGuanglei Cuiらは、ナトリウム・イオン電池用のヒドロゲルを改良して、安定かつ安全な方法でより多くの塩を吸収できるようにすることに成功した。

 これを達成するために、彼等は自然界でも大きな生体分子の水と塩の結合を制御するために使用されている技術であるメチル化に注目した。タンパク質では、メチル化によりアミン基やアミド基が「キャッピング」され、タンパク質構造内の架橋や塩イオンの溶解に役割を果たす水分子がアクセスしにくくなる。

 

メチル化がヒドロゲルの性能に及ぼす影響

 ハイドロゲルに使用されるポリアミド・ポリマーにもアミド基が含まれているため、水分子うぃ介した広範な架橋が塩析を引き起こし、電解質の分解につながる可能性がある。これを念頭において、研究チームは一般的なポリアミドで作られたヒドロゲルと、メチル化されたアミド基を有するポリアミドで作られたヒドロゲルを比較した。後者は元の変異体よりも大幅に多くの塩を吸収することができた。記録的な高い塩濃度でも、ヒドロゲル電解質は透明で安定したままであった。

 塩含有量が高いと言うことは、セルの電気化学的に使用可能な電圧範囲を拡大できることを意味する。さらに、チームは電極で崩壊の兆候を観察せず、サイクル安定性が向上し、組み立てられた電池セルは非メチル化バリアントよりも大きな進歩容量を達成した。このシステムでは、安価なアルミニウム箔を集電体として使用することも可能であった。

 著者らは、単純なポリアミドのメチル化は、ヒドロゲルの塩に対する耐性を高め、より安定させるための医薬品開発など、他の技術にも適している可能性があると示唆している。