より安く、より速く、よりクリーン:科学者達が世界初の
アノード・フリーナトリウム電池を開発
Cheaper, Faster, Cleaner: Scientists Have Developed the World’s First Anode-Free Sodium Battery
By Dailing, University of Chicago
https://scitechdaily.com/ 2024.08.06
シカゴ大学のY. Shirley Meng教授のエネルギー貯蔵・変換研究所の研究者達が初のアノード・フリーのナトリウム・イオン固体電池を開発した。
この電池を開発することで、シカゴ大学プリッカー分子工学部とカリフォルニア大学サンディエゴ校のAiiso Yufeng Li ファミリー化学ナノ工学部の共同イニシアチブであるLESCは、電気自動車や送電網蓄電池用の安価で急速充電可能な大容量電池の実現をこれまでになく近付けた。
「ナトリウム、固体、アノード・フリーの電池はこれまでにもあったが、これまでこの3つのアイデアをうまく組み合わせることができた人は誰もいなかった。」とこの研究の概要をまとめた新しい論文の筆頭著者であるカリフォルニア大学サンディエゴ校の博士課程の学生Grayson Deysherは述べている。
持続可能なエネルギーの進歩
最近、Nature Energyに掲載された論文では、数百サイクルにわたって安定したサイクルを実現する新しいナトリウム電池技術が明らかにされている。アノードを取り除き、リチウムの代わりに安価で豊富なナトリウムを使用することで、この新しい形態の電池はより手頃な価格で環境に優しい製造が可能になる。革新的なソリッドステート設計により、この電池は安全で強力になる。
この研究は科学の進歩であると同時に、世界経済を化石燃料から脱却させるために必要な電池規模のギャップを埋めるために必要なステップでもある。「アメリカを1時間動かし続けるには、1テラワット時のエネルギーを生産しなければならない。」とMengは言う。「経済を脱炭素化するという使命を達成するには、数百テラワット時の電池が必要である。より多くの電池が必要であり、それが早急に必要である。」
リチウムよりナトリウムの有望性
電池に一般的に使用されるリチウムは希少である。地殻の約20 ppmを占めるリチウムに対し、ナトリウムは20,000 ppmを占めている。この希少性と、ノートパソコン、携帯電話、EV用のリチウム・イオン電池の需要急増が相まって価格が高騰し、必要な電池がますます入手困難になっている。
リチウム鉱床も集中している。チリ、アルゼンチン、ボリビアの「リチウム・トライアングル」には世界のリチウム供給量の75%以上が集中しており、オーストラリア、ノースカロライナ、ネバダにも鉱床がある。気候変動と闘うために必要な脱炭素化において、一部の国は他の国よりも有利である。
「世界規模の取り組みには、極めて重要な材料にアクセスするための協力が必要である。」とMengは述べた。
リチウム抽出も、鉱石を分解するために使用される工業用酸からであれ、乾燥のために大量の水を地表に汲み上げるより一般的な塩水抽出からであれ、環境に悪影響を及ぼす海水やソーダ灰採掘でよく見られるナトリウムは、本質的に環境に優しい電池材料である。LESAの研究により、ナトリウムも強力な材料となった。
新しい技術のイノベーション
リチウム電池と同等のエネルギー密度を持つナトリウム電池を作るために、チームは新しいナトリウム電池技術を発明する必要があった。従来の電池には、電池の充電中にイオンを蓄えためのアノードがある。電池の使用中、イオンはアノードから電解質を通って集電装置(カソード)に流れ、途中でデバイスや自動車に電力を供給する。
アノード・フリー電池はアノードを取り除き、集電体に直接アルカリ金属を電気化学的に沈着させてイオンを蓄える。このアプローチにより、セル電圧の上昇、セルコストの削減、エネルギー密度の向上が可能になるが、独自の課題がある。
「アノード・フリー電池では、電解質と集電体の間に良好な接触が必要である。」とDeysherは言う。「液体電解質を使用すると、液体がどこでも流れてあらゆる表面を濡らすことができため、これは通常、非常に簡単である。固体電解質ではこれができない。」
しかし、これらの液体電解質は、活性物質を着実に消費しながら固体電解質界面と呼ばれる堆積物を形成し、時間の経過と共に電池の有用性が低下する。
斬新なアプローチと将来の展望
チームはこの問題に対して斬新で革新的なアプローチをとった。集電体を取り囲む電解質を使用する代わりに、彼等は電解質を取り囲む集電体を作成した。彼等は、液体のように流れる固定であるアルミニウム粉末から集電体を作成した。
電池の組み立て中に、粉末は高圧下で高密度化され、電解質との液体のような接触を維持しながら固体の集電体を形成し、この画期的な前進させる低コストで高効率のサイクリングを可能にした。
「ナトリウム固体電池は通常、遠い将来の技術とみなされているが、この論文によってナトリウム電池が実際にうまく機能し、場合によってはリチウム電池よりも優れていることを実証することで、ナトリウム分野へのさらなる推進力となることを期待している。」とDeysherは述べた。
究極の目標は?Mengは再生可能エネルギーを蓄え、社会のニーズに合わせて規模を調整できる、クリーンで安価なさまざまな電池オプションを備えたエネルギーの未来を思い描いている。
MengとDeysherはカリフォルニア大学サンディエゴ校のイノベーションおよび商業化オフィスを通じて、この研究の特許を申請した。