ナトリウム・ソリューション:電池のコストと複雑さを軽減
The Sodium Solution: Reducing Costs and Complexity in Batteries
By Karlsruhe Institute of Technology
https://scitechdaily.com/ 2024.05.24
微細構造のシミュレーションにより弾性変形がナトリウム・イオン電池のカソードとして使用される層状酸化物の充電特性に大きな影響を与えることが実証されている。
研究は、新しい電池材料の性能、寿命、手頃な価格の向上に重点が置かれている。また、リチウムやコバルトなどの希少で有毒な元素の使用を減らす取り組みも行なわれている。この文脈で、ナトリウム・イオン電池が有望な代替品として浮上している。この電池はリチウム・イオン電池に似た原理で動作するが、ヨーロッパで容易に入手できる原材料から作られている。
また、固定式とモバイル式の両方の用途に適している。「ナトリウム・ニッケル・マンガン・酸化物などの層状酸化物は、非常に有望なカソード材料である。」とKITの応用材料研究所-微細構造モデリングのグループ・リーダーであり、この研究の責任著者であるSimon Daubner博士は述べている。彼は、POLiS(Post Lithium Storageの略)Cluster of Excellence内で、ナトリウム・イオン技術を研究している。
急速充電は機械的ストレスを生じる
しかし、このタイプのカソード材料には問題がある。ナトリウム・ニッケル・マンガン・酸化物は、貯蔵されているナトリウムの量に応じて結晶構造が変化する。材料をゆっくり充電すると、すべてが整然と進行する。「ナトリウムは、駐車場から階ごとに車が出てくるのと同じように、層ごとに材料から抜けていく。」とDaubnerは説明する。「しかし、充電が速いとナトリウムはあらゆる面から抽出される。」その結果、機械的ストレスが発生し、材料に永久的な損傷を与える可能性がある。
KITのナノテクノロジー研究所(INT)とIAM-MMSの研究者達は、ウルム大学およびバーデン・ヴュルデンベルグ州太陽エネルギー・水素研究センター(ZSW)の科学者達と共同で、最近、状況を明らかにするためのシミュレーションを実施した。彼等は、Natureポートフォリオのジャーナルであるnpj Computational Materialsに報告している。
実験でシミュレーション結果を確認
「コンピューター・モデルは電極材料の原子配列からその微細構造、あらゆる電池の機能単位としてのセルまで、さまざまな長さのスケールを記述できる。」とTaubnerは言う。
NaXNi1/3Mn2/3O2層状酸化物を研究するために、微細構造モデルと低速充電および放電実験が組み合わされた。この材料は、容量の損失を引き起こすいくつかの劣化メカニズムを示すことが分った。このため、商業用途には適していない。
結晶構造の変化は弾性変形を引き起こす。結晶が収縮し、ひび割れや容量低下を引き起こす可能性がある。INTおよびIAM-MMSシミュレーションでは、この機械的影響が充電に必要な時間を決定的に決定することを示している。ZSWでの実験研究はこれらの結果を裏付けている。
この研究の知見は、他の層状酸化物にも部分的に応用できる。「これで基本的なプロセスが理解できたので、長持ちし、出来るだけ早く充電できる電池材料の開発に取り組むことができる。」とDaubnerはまとめる。これにより、5~10年後にはナトリウム・イオン電池が広く使用されるようになるかもしれない。