エネルギー貯蔵のための新しい形状:円錐形と円盤形の炭素構造がナトリウム・イオン電池に新たな経路を提供する
A New Shape for Energy Storage: Cone and Disc Carbon Structures Offer New Pathways for Sodium-Ion Batteries
https://www.sciencedaily.com/
Source: Rice University 2025.04.29
電動自転車と再生可能エネルギー貯蔵の世界的な需要が急増する中、手頃な価格で持続可能な電池技術へのニーズも高まっているライス大学材料科学・ナノ工学部の研究者達、ベイラー大学、インド科学教育研究機構ティルヴァナンタプラム校の共同研究者らが主導する新たな研究で、電気化学的エネルギー貯蔵技術に影響を与える可能性のある革新的な解決策が提案された。この研究は、Advanced Functional Materials誌に最近掲載された。
研究チームは石油・ガス産業の副産物を用いて、純粋なグラファイト構造を持つ、独特な形状の炭素材料(微小な円錐形や円盤形)を開発した。炭化水素のスケ-ラブルな熱分解によって生成されるこれらの特異な形状は、電池研究における長年の課題である、リチウムよりもはるかに安価で入手しやすいナトリウムやカリウムといった元素を用いてエネルギーを貯蔵する方法の解決に役立つ可能性がある。
「ナトリウムとカリウムがリチウムの魅力的な代替元素であることは長年にわたり知られていた。」とライス大学のBenjamin M. and greenwood Anderson工学教授で責任著者のPulickel Ajayanは述べている。「しかし、これらの大きなイオンを効率的に貯蔵できる炭素系負極材料を見付けることが、常に課題であった。」
グラファイトの壁を破る
従来のリチウム・イオン電池は、負極材料としてグラファイトを使用している。しかし、同じグラファイト構造は、ナトリウムやカリウムに対しては機能しない。これらの原子は大きすぎて相互作用が複雑すぎるため、グラファイトの密集した層の間を滑り込むことができない。
しかし、研究チームは炭素の形状を微視的レベルで再考することで、回避策を発見した。円錐形と円盤形の構造は、化学ドーピング(特定の原子や分子を意図的に少量添加して特性を変化させるプロセス)やその他の人工的な改変を必要とせずに、ナトリウム・イオンとカリウム・イオンを受容する曲率と間隔を提供する。
「これらの純粋な曲面グラファイト構造がいかに優れた性能を発揮するかを見て、我々は驚いた。」と、Ajayan研究室のポスドク研究員で筆頭著者のAtin Pramanikは述べている。「ヘテロ原子が存在しないにもかかわらず、ナトリウム・イオンの可逆的なインターカレーションが可能で、しかも構造ストレスは最小限であった。」
耐久性、拡張性、そして環境に優しい
実験室での試験では、カーボン・コーンとディスクはナトリウム・イオンを用いて1 g当たり約230 mAh/gの電荷を蓄え、2,000回の急速充電サイクル後でも151 mAh/gの容量を維持した。カリウム・イオン電池でも良好な動作を示したが、ナトリウムを用いた場合ほど優れた性能は得られなかった。
極低温透過型電子顕微鏡や固体核磁気共鳴といった高度な画像技術により、イオンが予想通りに炭素構造に出入りし、数千回の充放電サイクルを経ても形状を維持していることが確認された。
「これは、純粋なグラファイト材料にナトリウム・イオンがこれほど安定してインターカレーションしたことを初めて明確に実証した事例の1つである。」とPramanikは述べている。「純粋なグラファイトはナトリウムと共存できないという通説に疑問を投げかけている。」
その影響は多岐にわたる。これは、より手頃な価格のナトリウム・イオン電池への道を開くだけでなく、ますます高価になり、地政学的にも調達が複雑化しているリチウムへの依存を軽減することにもつながる。また、円錐/円盤状炭素は石油・ガス産業の副産物から合成できるため、電池負極のより持続可能な製造方法を提供する。
電池設計の転換点
この分野の研究はこれまでほとんどが硬質炭素やドーピングされた材料に焦点を当ててきたが、今回の新たな研究は戦略の転換点となり、化学修飾よりも形態を重視するようになった。
「この発見は、電池負極の新たな設計空間を切り開くものと考えている。」とAjayanは述べた。「化学組成を変えるのではなく、形状を変えている。これも同様に興味深いことが分かっている。」
「我々は単に優れた電池材料を開発しているだけではない。」とPramanikは述べた。「よりクリーンで、より安価で、より広く誰もが利用できるエネルギー貯蔵への真の道筋を提供している。」
この研究は、Omega Powerとインド科学技術省の資金提供によって支援された。